9月5日、愛媛弁護士会は「臨時国会での再審法改正の実現を求める会長声明」を発表。前日には、高知弁護士会が同じ題の声明を発表している。

6月18日に「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」が衆議院に提出され、その後、衆議院法務委員会に付託されて閉会中審査となったことから、札幌、仙台、千葉、三重、鳥取、福岡など全国の弁護士会が再審法改正を求める声明を相次いで発表してきた。
背景にあるのは、昨年10月9日にいわゆる「袴田事件」について袴田巌(いわお)氏の再審無罪判決が確定したのに続き、今年7月18日にいわゆる「福井女子中学生殺人事件」について前川彰司氏の再審無罪判決が言い渡され、8月1日に同判決が確定したという経緯だ。

えん罪被害者を救済するための法案だが…

「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」は、「再審制度によってえん罪の被害者を適正かつ迅速に救済し、その基本的人権の保障を全うする」という観点から、1:再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、2:再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、3:再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、4:再審請求審における手続規定の4項目を定めるもの。
愛媛弁護士会の声明では、同会が求めてきた再審法改正の内容と軌を一にするものであるとして、法案を高く評価。また、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(再審法改正議連)が昨年3月の発足以来、全国会議員の半数を超える参加を得て精力的に活動を展開したことが法案に結実したとして、「尽力に深い敬意を表する」と述べている。
一方で、再審法改正に関して法制審部会が行っている審議で前述の4項目が審議対象となっていることについて「検察官と密接な関係を有する法務省が事務局を務める法制審部会が主導的な役割を担うことに対しては強い懸念を表明せざるを得ない」と指摘。
そして「再審法改正は、何よりもえん罪被害者の速やかな救済に資するものでなければならない」として、4項目に関する早急な法改正がなされるべきであると意見表明した。

国会での速やかな法案成立を求める

法制審部会の審議に関し、声明は「再審手続における証拠開示の範囲を新証拠及びそれに基づく主張に関連する限度にとどめようとする意見や、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止することに消極的な意見も見受けられる」と指摘。
また、事務局を務める法務省が原案を取りまとめる形で全14項目にも及ぶ論点を提示したことについて「法案化までには相当な期間を要することは明らかであり、改正が速やかに進む目処は立っていないと言わざるを得ない」としつつ、「このような状況に照らせば、まずは『国の唯一の立法機関』である国会において、速やかにあるべき再審法改正の方向性を示すことが重要である」と強調。
声明の結論部分では、国会に対しては速やかに法案の審議を進め、今秋にも予定されている臨時国会において法案を可決・成立させることを求めている。また、法制審部会に対しても、4項目を前提としつつ、さらにそれを補完する方向での審議を進めることを求めた。


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