
報道によれば、清水被告は捜査に対し、アメリカ・ロサンゼルスに留学していた20歳の頃、現地で招待されたホームパーティーで初めて大麻を吸ったと供述。帰国後も高揚感が忘れられず時々吸うようになり、俳優の仕事が軌道に乗り始めた2年ほど前から使用量が増え、今年に入ってからは「月に数回ペースで」吸うようになっていたという。
ロサンゼルスを擁するカリフォルニア州など、アメリカの一部の州では大麻使用が合法となっていることなどから、「アメリカは薬物に甘い」とのイメージを抱いている人は少なくないかもしれない。
しかし、たとえ合法な州で使用した場合でも、外国人である日本人は「アメリカへの入国が永久に禁止される」リスクが高いことまでは、あまり知られていないのではないだろうか。
連邦法上、大麻は「違法薬物」
カリフォルニア州などの弁護士資格を持ち、アメリカの連邦法やカリフォルニア州法に詳しいタイタノ誠外国法事務弁護士は、アメリカにおける大麻の法的位置づけについて、次のように説明する。「まず前提として、アメリカには各州が定める『州法』のほか、その一段階上に『連邦法』という法律があります。
州法上は、大麻を合法としている州とそうでない州が存在しますが、連邦法上は依然として大麻は『違法薬物』の扱いです。その上で、国(連邦政府)は大麻使用の取り締まりを暫定的に保留しているという、非常に複雑な状態となっています」
連邦法で取り締まりが保留されているのであれば、合法とされている州で大麻を使用することは一見すると問題がないようにも思える。しかしここに、日本人が「外国人」であるがゆえの“落とし穴”がある。
「たしかに、合法な州で大麻を使用すれば現地の警察に逮捕されることはありません。しかし、アメリカの出入国に関する法律(移民法など)では、連邦法上の違法薬物を使用した外国人は、原則的にアメリカへの入国が一生涯にわたって禁止されることになっています。
この事実はあまり知られておらず、留学中の日本人学生が安易に大麻に手を出すケースがあります。
国によっては「死刑」「無期懲役」の可能性も
タイタノ誠外国法事務弁護士は、日本とは法律の仕組みが異なるアメリカにおいて日本人が陥りがちな「もうひとつの問題」として、「州法と連邦法で二重に裁かれる」リスクについても言及する。「大麻を所持したまま合法な州から違法な州へ移動してしまった場合、まずは違法な州の州法に違反したとして逮捕・勾留され、裁判にかけられます。
そして連邦法では、違法薬物を州から州へと移動させることが『違法薬物の運搬』として禁止されているため、その罪も問われることになります。
つまり、まずは州で逮捕され、その刑期を終えた後、今度は連邦側に移送され、追加で刑期をつとめなければならない可能性があるということです」(同前)
アメリカ以外にも、世界に目を向ければ、国によっては薬物犯罪の最高刑として死刑や無期懲役など重い刑罰を定めている国も存在する。
2010年には、中国で日本人4人が麻薬密輸の罪により死刑執行された。最新の死刑統計(アムネスティ・インターナショナル)によれば、2024年に世界で執行された死刑のうち、42%が薬物関連犯罪によるものだったという。
海外では開放的な気持ちになり、ましてや日本で違法とされている大麻が「合法」の場所とあれば、「せっかくなら…」と使用してみたいと考える人もいるかもしれない。しかし、それが取り返しのつかない結果を招く可能性があるリスクについても、重々承知しておかなければならないだろう。