
どちらも、労働者が仕事と育児を両立できるように、育児期(小学校就学前まで)の柔軟な働き方を実現するための措置だ。そして、従業員数に関わらず全企業が対象となる。
以下では、子育て中の人や子どもを作る予定のある人なら知っておくべき新制度の概要を紹介しよう。
3歳から就学前までは就業時刻・時間の変更やテレワークを導入
「柔軟な働き方を実現するための措置等」では、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、以下の5つのうちから2つ以上の措置(制度)を選択して講ずることが事業者に義務付けられる。(1)始業時刻等の変更:1日の所定労働時間を変更せず、フレックスタイム制、もしくは始業または終業の時刻を繰り上げまたは繰り下げる制度(時差出勤制度)の導入。
(2)テレワークなど:1日の所定労働時間を変更せず、月に10日以上利用できる制度の導入。
(3)保育施設の設置運営など:保育施設の設置運営、またはベビーシッターの手配および費用負担など、保育施設の設置に準ずる便宜の供与をする制度の導入。
(4)養育両立支援休暇の付与:1日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できる制度の導入。
(5)短時間勤務制度:1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含むもの。
また、上記のうちどの措置を講じるか事業者が選択する際には、過半数組合などからの意見聴取の機会を設ける必要がある。
そして、労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができる。
3歳未満の子を持つ労働者への意向確認も義務化
上記制度の導入に加えて、事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対して、その子が3歳になるまでの適切な時期に、導入した制度に関してその内容や申出先(人事部など)を個別に周知し、利用の意向について確認する必要がある。さらに、所定外労働や時間外労働、深夜業の制限に関しても、3歳未満の子を養育する労働者に対し個別に周知しなければならない。
そして、当然のことながら、制度の利用を控えさせるような個別周知や意向確認は認められない。
また、厚労省は、労働者が選択した制度が適切であるか確認するために、育児休業後の復帰時や短時間勤務時、対象制度の利用期間中などにも定期的に面談を行うことを「望ましい」としている。
なお、個別周知・意向確認は、面談(オンラインを含む)または書面交付による方法のほか、労働者が希望した場合にはFAXや電子メールでも可能だ。
家庭の事情に応じた「配慮」も義務付けられる
育児休業法改正後の、仕事と育児の両立イメージ(厚労省の資料から転載)
「仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮」では、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関して、労働者の意向を個別に聴取することが事業主に義務付けられる。
意向聴取の時期は、労働者本人または配偶者が妊娠・出産などを申し出た時および、その労働者の子が3歳になる誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)のうち1回の、計2回。
上述した制度利用の意向確認と同じく、面談(オンラインを含む)または書面交付による方法のほか、労働者が希望した場合にはFAXや電子メールでも可能。
また、労働者の意向は以下の項目ごとに聴取する必要がある。
(1)勤務時間帯(始業および終業の時刻)
(2)勤務地(就業の場所)
(3)両立支援制度などの利用期間
(4)仕事と育児の両立に資する就業の条件(業務量、労働条件の見直しなど)
そして事業主は、労働者から聴取した仕事と育児の両立に関する意向について、自社の状況に応じて配慮しなければならない。具体的には、勤務時間帯や勤務地の配置、両立支援制度などの利用期間の見直し、業務量の調整、労働条件の見直しなどを行うことが求められる。
さらに厚労省は、育児休業後の復帰時や労働者から申し出があった時などにも意向聴取を実施することや、子に障害がある場合やひとり親家庭の場合には労働者が希望するなら「子の看護等休暇」などの利用可能期間を延長することを「望ましい」としている。
就学前の子どもを育てている労働者や、これから子どもを持つ予定の労働者にとって、育児・介護休業法は心強い支えとなる。自らのキャリアと子育ての両立を実現するためにも、新しい措置について詳しく知り、会社には遠慮せず自分の権利を主張して制度を利用する姿勢が大切だ。