21日に行われた世界陸上競技選手権大会(世界陸上)の男子1600メートルリレー(4×400メートルリレー)で、ボツワナ代表が史上初の金メダルを獲得する快挙を達成した。土砂降りのなか行われたレースで、アメリカとのアンカー勝負を制す、劇的な勝利だった。

世界陸上における同国初の金メダル。この歴史的なメダル獲得に対し、ボツワナのドゥマ・ボコ大統領はX(旧ツイッター)を更新し、9月29日を祝日とすることを発表した。
同国は9月30日が独立記念日のため、その前日を祝日として定めた。ボコ大統領は、ニューヨークでの国連総会に出席中、「ボツワナの天然ダイヤモンドは地下にあるだけでなく、我々の世界チャンピオンアスリートたちもダイヤモンドだ」と、母国の英雄たちをたたえた。

初めてではなかったボツワナの急遽祝日、他国でも

実はボツワナでは、スポーツの偉業を祝い、急遽祝日が制定されたことが過去にもある。今回のリレーメンバーのひとり、レツィレ・テボゴ選手がパリオリンピックの陸上男子200メートルで金メダルを獲得した際にも、8月9日の午後が祝日とされている。
海外では、2022年W杯カタール大会でサウジアラビアがアルゼンチンに勝利した翌日を国民の祝日にした例などもある。
スポーツにおける国の代表の活躍は国民を元気にし、国に活気を与える。偉業となれば、祝日となることがあっても異議はないだろう。

日本ではどのように祝日が決まるのか

では、日本では祝日はどのように決まるのか。ボツワナは、政府や大統領の声明で急遽祝日が決定されたが、日本の国民の祝日は、厳格に法律に基づいて定められる。
日本の祝日の根拠となるのは、昭和23年(1948年)制定の「国民の祝日に関する法律」(通称:祝日法)だ。
祝日法1条には、「国民の祝日」の定義が定められている。
「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを『国民の祝日』と名づける」
法律ながら「自由と平和を求めてやまない日本国民」から始まる条文は、独特の堅さが微塵もなく、ワクワクするような表現だ。

祝日法2条は、年間合計16日の「国民の祝日」をそれぞれの趣旨とともに定めている。そして、「国民の祝日」を休日とすることが定められている(祝日法3条1項)。

祝日決定までのプロセス

この「国民の祝日」はどのように決められるのか。日本の場合は、国会で国民の代表者が話し合って決めるというプロセスを踏んでいる。これは、第二次世界大戦後に天皇主権から国民主権の考え方を採用した新しい憲法の下、祝祭日のあり方が再検討された結果だ。
祝日法制定前は、皇室の祭典が行われる「祭日」と国民の祝い日である「祝日」が勅令により休日とされていた。
1948年(昭和23年)、新しい憲法の精神に基づき祝祭日が再検討され、当初内閣は政令で定める方針を示したが、国会側から「国民の生活・感情と密接なつながりがあるため、国会で決めるべき」との意見が出たため、政府は方針を撤回。国会が立法に当たることになった。
衆参両院の文化委員会で、半年以上に及ぶ審議が重ねられ、最終的に1948年7月5日に祝日法が成立した。
制定時の祝日は9日だったが、その後、主に議員立法による改正が重ねられ、7つの祝日が順次追加。現在は計16日となっている。

祝日に関する法律のその他の規定

祝日法には、国民の祝日以外の日が休日となる規定も設けられている。
まずは振替休日(3条2項)。
「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とすると定められている。
国民の休日(3条3項)という規定もある。その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る)は、休日とすると定められている。これは数年に一度、不定期に現れる休日で、例えば9月の敬老の日と秋分の日の間に発生する可能性がある。
来年、2026年の祝日には、敬老の日(9月21日月曜日)と秋分の日(9月23日水曜日)の間に挟まれた9月22日火曜日が、祝日法3条3項に基づき「休日」となることが決まっている。
また「成人の日」や「海の日」のように「第●月曜日」と定められている祝日や、天文学的な観測で決まる「春分の日」「秋分の日」があるため、翌年の祝日は毎年確定する必要がある。
「春分の日」および「秋分の日」については、国立天文台が毎年2月に翌年の日付を官報で公表。これを受けて、内閣府などの国が翌年の祝日を公表する流れとなっている。
このように日本の場合は厳格に法律に基づいて定められるため、世界的イベントで代表選手が金メダル獲得等の偉業を成し遂げても、数日後に急きょ「国民の祝日」となることはないと考えておいた方がよさそうだ。


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