最高気温28度とまだまだ暑い中、会場には労働組合関係者ら約2200人が集結し、オンラインでも200人以上が参加(主催者発表)。
「いのちまもる総行動」と題されたこの集会は、全国保険医団体連合会(保団連)、全日本民主医療機関連合会(民医連)、日本医療労働組合連合会(医労連)ら複数の団体が共同で開催したものだ。
「国民の命が軽視されている」
日本医労連の佐々木悦子中央執行委員長は集会の冒頭、現状の医療・社会保障政策のあり方について「コロナ禍で患者が入院できずに亡くなった事例が多数あったが、その反省が生かされておらず、国民の命が軽視されている」と訴えた。「猛暑でも電気代節約のためにエアコンを使用せず我慢している人々や、人手不足で長時間労働を余儀なくされている労働者は少なくありません。
そうしたなか、医療、社会保障費は抑制され続け、医療機関も介護事業所も経営が立ち行かなくなり、倒産も過去最多となっています。
国民の命と暮らしを守る政治への転換を図るため、私たち国民ひとりひとりが声を上げ、大きな輪を広げていきましょう」(佐々木氏)
野党議員が参加、共闘進める考え示す
集会には複数の野党議員も駆けつけ、登壇した各議員から与党に対し、厳しい声が上がった。立憲民主党の石垣のりこ参議院議員は「今年に入って『上半期だけで35の医療機関が倒産』『医療機関の約6割が赤字』といったニュースが飛び交っている。こうした状況を変えるためにも、国会の早期開会をはじめ、医療福祉現場の賃上げなどのために、野党共闘を進めていきたい」と主張。
日本共産党の小池晃参議院議員も次のように政府の姿勢を問題視。石垣議員と同様に、野党連携を進める考えを示した。
「人件費が高騰している中で、診療報酬や介護報酬について政府は、一度決めたら、2年、3年と指ひとつ動かしません。
これでは賃上げは実現せず、医療機関がどんどん倒産してしまいます。 診療報酬や介護報酬の期中改定を含めた引き上げはどうしても必要です。
医療や介護、福祉、保健の現場を変えるためにも、国会の中で野党と力を合わせて頑張っていきたい」(小池書記局長)
現場からも処遇改善など求める声
医療や介護現場の当事者らによるリレートークでも、医療・社会保障費の増額、労働者の処遇改善を求める声が相次いだ。まず、保団連の宇佐美宏氏は自身の戦争体験から以下のように訴えた。
「世界ではウクライナなどで戦争が起きており、多くの一般国民が亡くなっています。そして、今から80年前に起きた東京大空襲では、一夜にして約10万人が亡くなりました。
戦争では、(戦地に赴いていない)一般国民や女性、子どもも大きな犠牲を払い、国民の生活は戦後も困窮が続きました。
平和なくして医療はありません。防衛費に歯止めをかけ、社会保障費をどんどん増やしていくことが、日本の未来のために必要なのではないでしょうか」(宇佐美氏)
続いて登壇した看護師の女性は、看護現場の厳しい労働環境についてこう報告した。
「就職して数年間は、夢中で仕事を覚えて働いていましたので、給料や人員についてあれこれ考える時間もありませんでした。
しかし、結婚や出産、育児を経験する年齢になり、ようやく自分たちが過重労働を強いられていること、さらに、それに見合った賃金がもらえていない実態に気が付きました。
いつも人員はギリギリで、誰かが休めば、患者さんの話をゆっくり聞く時間などありません。
特に、若い看護師のメンタル不調が大変問題になっています。 看護師が足りず、指導者や先輩、看護師が若手の話を十分に聞いてあげられない状況を考えれば、不安が募り、孤独感、疲労感を抱えたまま、メンタルが崩壊してしまうのは当然です。
人員が増え、処遇が改善されれば、誰かが休んでもフォローできますし、モチベーションも上がります。
私たちは忙しい仕事が嫌なのではなく、むしろこの仕事が大好きです。
集会後に銀座までパレード「もう限界」
集会では最後に、アピールとして下記の4点が上げられた①ケア労働者の大幅増員・大幅賃上げ、報酬大幅引き上げ改定を!
②従来の保険証残せ!高額療養費制度改悪を白紙撤回せよ!
③医療・介護・福祉・保健の現場を守れ!
④軍事ではなく社会保障の拡充で国民負担を減らせ!
また、集会後には参加者らによるパレードと、集会実行委員会による厚生労働省への要請も行われた。
実行委は厚労省に対し、以下を要請。
「コロナ禍の教訓もふまえ、今後も発生が予想される新たな感染症拡大などの事態に対応できるよう、医療、介護、福祉、保健に十分な財源を確保すること」
「医療・介護・福祉・保健従事者の大幅賃上げ、処遇改善、人員増にむけて、診療報酬・介護報酬を大幅に引き上げること。次回改定を待たず、医療機関、介護施設等への緊急財政措置を行うこと」
「医療、介護の患者・利用者負担増はやめること。特に、OTC類似薬の保険外し、高額療養費制度の負担上限額引き上げ、介護保険の利用料2割負担の対象拡大等、あらたな負担増をやめること」
「従来の健康保険証を復活・併用させること」
「医療・介護・福祉・保健を充実し、地域で安心して住み続けられるようにすること」
- 国保、介護の国庫負担増加による保険料(税)の引き下げ
- 地域医療構想による病床の削減、病院の統廃合計画の抜本的見直し
- 保健所の増設・保健師等の増員など公衆衛生体制の拡充
パレードは「現場はもう限界」「いのちをまもれ」といった掛け声とともに、厚労省前を通過し、銀座まで続いた。