“小学生”が同級生の水筒に「睡眠導入剤」混入 14歳未満は“刑事責任能力なし”で罪を問われないが…事件を起こした場合どうなる?
東京・足立区の小学校で児童2人が同級生の水筒に睡眠導入剤を混入していたことが発覚し、驚きが広がっている。
区教育委員会によると、事件が起きたのは9月26日。
児童2人は運動会の練習時間中、同級生の水筒を教室からトイレへ持ち出し、一方の児童が自宅から持ってきた睡眠導入剤「メラトベル」3袋ほどを混入したという。
これを目撃した別の児童がすぐに学習支援員へ報告したため、水筒の中身は持ち主の同級生が飲む前に処分された。しかし、一歩間違えれば健康被害を生じていた可能性もあり、同じことを大人がすれば「犯罪行為」とされ得る悪質性を帯びている。
日本の法律上、14歳未満の子どもは刑事責任能力がないと判断され、刑罰を科されることはない。一般的に、小学生が犯罪にあたる行為をした場合、どのように扱われるのか。

他人の水筒に睡眠導入剤混入…「大人」ならどんな罪に問われる?

今回の事件で、児童2人は睡眠導入剤を混入した動機として、学校側の聞き取りに対し「(被害児童に)あまりいい感情を持ってなかった。嫌がらせをしてやろうと思った」と話しているという。
仮に大人(20歳以上の者)が他人の飲み物に嫌がらせ目的で睡眠導入剤を混入した場合、「傷害罪」に該当する可能性がある。
一般に「傷害」というと、思い浮かべるのは暴行(人の身体に向けられた不法な有形力の行使)を加え、ケガを負わせることかもしれない。しかし、刑法上の傷害罪は、「生理的機能を害する行為」を広く処罰対象とする。
たとえば、睡眠導入剤が混入した飲み物を摂取させ、その結果、被害者に意識混濁や倦怠(けんたい)感、眠気など身体の生理的機能の障害を(一時的であっても)生じさせた場合、「傷害罪」(刑法204条、罰則:15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が成立し得る。
なお、被害者が飲む前に気付いて廃棄した場合や、睡眠導入剤が少なく生理的機能の障害が生じなかった場合には、犯罪は成立しない。刑法に傷害罪の「未遂」を罰する規定がないからである(ただし、暴行を加えて傷害の結果が生じなかった場合は「傷害未遂罪」ではなく「暴行罪」(刑法208条、罰則:2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)が成立する)。

「小学生」が事件を起こした場合は…

先述のように、日本の法律では14歳未満の子どもは刑事責任能力がないと判断されるため、刑罰を科されることはなく、また当然に家庭裁判所に行くわけでもない。
事件を起こした子どもは、通常「触法少年」と呼ばれ、警察から児童相談所へと通告される。
そして児童相談所は、その子どもの保護や健全な育成のために必要なことを調査し、指導や一時保護、または児童福祉施設に入所させるなどの措置を検討することになる。事件が重大だったり、より専門的な判断が必要と判断されたりした場合には、児童相談所から家庭裁判所へ送致するとの判断が下されることもある。
家庭裁判所に送致された後は、審判によって保護観察や少年院送致といった保護処分が決定されることもあるが、その場合にも刑罰が科されることはない。その根底には、子どもが未熟であるという前提に基づき、刑罰よりも支援・育成を重視するとの考え方がある。
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少年事件の一般的な流れ(法務省サイトより)

足立区の事件では被害児童に健康被害が生じなかったものの、危険な行為であることに変わりはなく、「子どものいたずら」では済まされない悪質性を帯びている。
被害児童の精神的ケアはもちろん、加害児童の将来を見据えてどのように適切な支援・育成を行っていくかも、重要な課題と言えるだろう。


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