同決議では、現行の夫婦同姓制度は憲法違反・人権問題であるとしたうえで、先の国会で提出された旧姓通称使用の法制化案の限界も指摘し、選択的夫婦別姓制度の導入を求めている。
旧姓通称使用法案には「看過し難い問題がある」
1月24日から6月22日まで開かれた第217回通常国会では、28年ぶりに選択的夫婦別姓制度の導入に向けた法案が衆議院法務委員会で審議入りした。決議は「そのこと自体は、同制度の導入に向け一歩前進したものと評価できる」(カッコ内原文ママ、以下同)とする。しかし国会では、現行の夫婦同氏制を維持した上で改姓した者が婚姻前の氏(旧姓)を通称として使用できるようにする法案(旧姓通称使用の法制化案)が提出され、継続審議となった。
日弁連は決議文で「現行の夫婦同氏制(婚姻に伴う改姓の強制)は、憲法に違反する人権問題であり、旧姓の通称使用の法制化では決して解決し得ない問題である。通称はいかなる制度的工夫を施しても、正式な氏名に代わるものではなく、自己の氏名を正々堂々と名乗れない苦痛は解消できない」と主張。
また、民間事業者には努力義務が課されるに過ぎないこと、パスポートやマネーロンダリング対策など日本以外の国が関わる場面で通称を通用させるためには国際民間航空機関(ICAO)や金融活動作業部会(FATF)の加盟国との合意を改訂する必要があることなど、旧姓通称使用の法制化案には「看過し難い問題がある」と指摘。
経済団体や労働団体、全国の多くの地方議会も選択的夫婦別姓制度の導入を求めているとしたうえで「国は、現行の夫婦同氏強制制(原文ママ)が憲法に違反する人権問題であり、旧姓通称使用の拡大や法制化では決して解決できない問題であることを直視し、誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度を導入すべきである」と結論している。