14日に那覇市の沖縄県庁で開かれた表彰式で、夏の全国高校野球選手権で初優勝を果たした沖縄尚学高校に県民栄誉賞が授与された。沖縄尚学が県民栄誉賞を受賞するのは1999年春の選抜大会優勝に続き2度目だ。

夏の甲子園で沖縄勢が優勝したのは、2010年に春夏連覇を達成した興南高校以来、15年ぶり2回目。沖縄県内のみならず本土も大いに盛り上がった。
一方、8月21日の準決勝(沖縄尚学対山梨学院)では、日本高野連が沖縄尚学側のアルプススタンドの応援を注意する事態も起こっていた。

高野連は「走り回って応援していたことが注意の対象」と回答

当日、沖縄尚学の応援団の一部は、顔を白く塗り、クバ笠(クバという植物の葉や竹ひごで作られた帽子)をかぶり、手にクバ扇を持つなど、沖縄の伝統芸能「エイサー」の役の一部である「チョンダラー」の姿で応援していた。
8月27日の沖縄タイムスの報道では、チョンダラーの格好そのものが注意の対象だったかのように説明されていたが、弁護士JPニュース編集部が高野連に確認したところ、次のような回答が得られた。
「報道では民族衣装を注意の対象にしたとされていましたが、実際には、スタンドを走り回って応援していたことが注意の対象です。スタンドには階段もあり、走り回ると危険です。そのため、自分の席で応援いただくようお願いしました」(高野連・担当者)

「エイサー」規制は過去にもあったが…

高野連による「注意」は、スタンドを走り回って応援する行為を対象としたものであったにもにかかわらず、なぜ一部の報道や世論は民族衣装そのものに注目したのだろうか。実は甲子園における沖縄の伝統的な応援を巡っては、実際に規制の対象となった例がある。
1994年夏、那覇商業高校の応援団がエイサー姿で応援した際、高野連は「奇異」「華美」との理由でこれを制限していた。
また、高野連が出場校に配布する「代表校・応援団の手引」では応援についても細かく規定されており、「顔のペイント」「郷土民俗変装着等」「法被、祭り装束」などを不可と記しているという。
これを踏まえれば、沖縄に限らず、その他の地域の伝統文化を反映させた応援も一律で禁止ということになるはずだが、今年の大会では健大高崎(群馬)や山梨学院などの応援団に袴(はかま)姿が見られた。SNS上では「本土の伝統文化である袴は許されるのに、沖縄の伝統文化は規制されるのか」といった疑問の声も上がっている。

袴も民族衣装なわけで、高野連は最低限、去年の「はかま応援」への対応との整合性は取らなきゃいけないだろう。 pic.twitter.com/KaSYtYPC6Z
George (@Yagi_George) August 27, 2025
このような応援規制の運用における一貫性の欠如、あるいは郷土文化間での区別は、「奇異」「華美」といった抽象的な理由で規制を正当化できるのかという、法的・倫理的な問題につながる。
法律における自由とその制約について詳しい杉山大介弁護士も、「奇異」「華美」という理由で規制することには疑問を呈する。
「動きが激しい」「音量が大きすぎる」などの場合には、試合中の選手のプレーや他の観客が観戦する環境に影響が生じる可能性があるため規制する理由がある。
一方で、走り回るなどの行為もなく、応援姿が華美であるというだけでは、プレーや観戦に影響は生じない。そして、袴はOKだが他の民族衣装はNGという区別を正当化する、他の合理的な理由も考えづらい。
「一方では伝統的な応援が許され、他方ではそれができない。そこに合理的な理由がない場合、その制約は不平等であり、違法と評価され得る。要するに、特定の誰かだけを制限するならそれなりの理由が必要とされる、ルールはみなに同じように当てはまるものでないといけない、という話です。
走り回って応援することの危険性というお話であれば、ルールとしてはおかしくないと思われます。それこそ、スタンドを走り回る行為が他の団体でも行われていたといった事情が加わらない限り、高野連の対応は問題ないということになるでしょうね」(杉山弁護士)


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