武若氏はかつて、約10年間、陸上自衛官として数々の「災害派遣」に携わり、その後も軍事フォトライターとして自衛隊の活動を取材している。
本連載では災害派遣現場の実情を、武若氏自身の経験や取材を通じて紹介。第7回(最終回)は2019年9月5日、10月16日に発生した台風15号、台風19号による災害について取り上げる。
陸上自衛官を退職後、2019年7月に任期付自衛官(※)として一時的に現役自衛官に復帰した武若氏。
※育児休業等で一時的に勤務できない自衛官の代替要員として、元自衛官を任期付きで再採用する制度
かつて希望していた航空科での勤務が叶った武若氏は、陸上自衛隊立川駐屯地(東京都立川市)の第1師団第1飛行隊で「写真陸曹」のポストにつき、部隊の活動を記録していた。
台風19号の上陸後、武若氏は陸自が所有する最大の輸送ヘリコプターCH-47「チヌーク」のパイロットとともに、土砂崩れ現場の上空視察に向かったが…。
※この記事は武若雅哉氏の書籍『元自衛官が語る 災害派遣のリアル』(イカロス出版)より一部抜粋・構成。
素人が見ても非常に勢力が強い台風
未だに台風15号の爪痕が残るなか、新たな大型台風が発生した。台風19号だ。気象庁は、この台風を「令和元年東日本台風」と命名。上陸した静岡県を筆頭に、関東甲信越、東北地方など広域にわたって被害を受けた。また、死者の数は100名を超えた。この数字は1979年に発生した台風20号以来の被害であった。さらには、台風としては初となる「激甚災害」「特定非常災害」に指定され、災害救助法が適用される地域は東日本大震災を上回る14都県390市区町村となった。
上陸直前の中心気圧は955ヘクトパスカル。素人が見ても非常に勢力が強い台風であるとわかるほどだ。
10月12日19時前、台風19号が伊豆半島に上陸。台風の規模からしてみれば、伊豆半島から立川までの距離はさほど遠い距離とはいえないだろう。
雨脚は時間を経過するごとに強くなり、駐屯地や隣接する昭和記念公園の木々は大きく揺れながら雨に打たれていた。
ニュース報道でも、各地で雨脚が強まっていることを強調しており、尋常ではないということが伝わってきた。とはいえ、時刻は20時を過ぎている。
部隊は非常勤務態勢に移行したが、今は動くときではない。というより動けない。動いたとしても、二次被害に遭うだけだ。日付が変わるか否かという時間帯になると、雨が収まった。ただし、風はいつもより強く吹いている。
そう思った私は、事務室の椅子に浅く腰をかけ、目深に帽子を被り目を閉じた。翌朝、5時過ぎくらいに目が覚めた。日の出前、空が明るくなってきた時間帯だ。
自衛隊はすでに各地の知事から災害派遣要請を受けていた。隊全体としては動いていたのだが、私がいた部隊がヘリコプターを飛ばすことはなかった。クロノロ(※)の交替要員を務め、出番がないときは事務室で待機する。
※ クロノロジー型災害情報共有システムの略。災害時に発生する膨大な情報を「時系列(クロノロジー)」で整理・共有する。防衛省・自衛隊だけでなく、災害対策本部が設置される関係省庁や、空港などの大きな事務所などにも設置されている。
輸送ヘリ着陸のため、土砂崩れ現場を視察も…
そんな時間を過ごしていると、ついに出動の指示が出た。CH-47チヌークのパイロットを連れての現場視察だ。同行を願い出て了承を得ると、撮影機材を持って格納庫まで急いだ。
※ UH-1J多用途ヘリコプター。陸自が運用しているヘリコプターの中で最も数が多く、全国に配備されている。原型となったのはベトナム戦争で米軍が使用したUH-1ヘリコプターで、日本独自の改良が加えられている。
CH-47のパイロットと合流したあとは、そのままUH-1で土砂崩れの現場まで向かい、CH-47が降りられるのかどうかを上空から視察する。
もし土砂崩れの現場近くにCH-47を着陸させることができれば、救助活動を一気に加速させることができるため、この視察は非常に重要だ。
結果から言ってしまえば、その場所にCH-47を降ろすことはできないと判断された。傾斜がありすぎて離着陸の際に危険な状態になる可能性が高いということだった。
いくら災害派遣とはいえ、救助に向かった隊員が遭難してしまったり事故を起こしてしまうのは本末転倒のまさに二次災害である。それこそ、阪神淡路大震災のときのように「自衛隊さん、なにしにきたんや?」という事態になってしまう。
自衛隊が救援活動の拠点として借りやすい場所とは
ただし、それ以外に候補となる場所も探していた。現場から近いというのはもちろんのこと、平坦である、電線がない、地上には飛散物となるような物が置いてない、自動車などが駐車されていない、といったことが条件として挙げられるだろう。
各自治体が発表している防災計画を見ると、CH-47を降ろすには100m四方のスペースが必要になると記載されている。
実際に100m四方となると、かなりの面積である。それも最低でもこのスペースが欲しいという意味で、広ければ広いほど安全に離着陸できる。そして、広さをクリアしている土地があったとしても、そもそも土地の所有者から承諾を得られなければ使用することはできない。
そのため、個人所有と思われる敷地は基本的に候補には入らない。つまり、自治体や法人が所有している土地を借りる必要があるのだ。
これでピンと来た読者は災害派遣に詳しいといえる。
自衛隊が日頃から地元や協力団体との信頼関係を構築している背景には、いざというときにすぐに土地の利用に関して許諾を得られるようにするという理由もあるのだ。
もちろんこれだけではないが、被災地に近い土地を借りることができるというのは、救援活動の拠点作りに必須条件となるため、疎かにすることはできない。
その一方で、やはり場所を借りやすいのは、学校や公民館、陸上競技場などである。これらの施設は上空からでも視認しやすく、ヘリコプターの離発着に影響を与える物も少ない。舗装された道路に面している施設ばかりなので、物資や人員を降ろしたあとの行動も容易だ。
あまり知られていないが、こうしたヘリコプターの運用に適している土地は場外離発着場として指定されていたりする。その場所への定期的な離発着訓練も行われており、いつでも使うことができる環境を整えている。

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