忙しそうに働く上司や激務に苦しむ管理職の給与が自分と大差ないと知れば、「仕事量だけ増えて手取りがほとんど変わらないなら、平社員のままでいい」と出世への意欲を失うのも無理はない。
多くの会社員の間では「自分の給与明細を同僚に公表してはいけない」「同僚に給与明細を見せてもらおうとしてはいけない」という暗黙のルールがある。収入というセンシティブな個人情報を守り、同僚との人間関係に余計な軋轢(あつれき)を生じさせないためのルールであるが、企業にとってもリスク管理になっている側面がある。
では、そもそも「給与明細を非公開にする」という慣行には法的な根拠があるのだろうか。そして、リベンジ退職を目的に給与明細を公開した元社員は、会社側から損害賠償を請求されるおそれはないのだろうか。
給与明細は守秘・秘密保持義務の対象か?
そもそも、「給与明細」について、法律ではどのように定められているのだろうか。労働問題や企業法務に詳しい宮寺翔人弁護士によると、給与明細の発行義務は労働基準法などではなく所得税法によって定められている(所得税法231条)。
具体的には「給与を支払う者は、給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなければならない」と定められていることから、会社は従業員に対し、給与明細を発行する税法上の義務がある。
では、会社が従業員に対し「給与明細や給料の詳細な金額を同僚に公開してはならない」または「社外に公開してはならない」などのルールを就業規則で定めることはできるか?
「就業規則に定められた労働条件は、強行法規に反しない限り、合理的かつ会社がその規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容となります。
『給与明細や給料の詳細な金額を同僚(または社外)に公開してはならない』といったルール自体が、法令の定めに反するわけではありません。
しかし給与に関する情報は従業員にとって重要であり、また求人情報でも一般的に公開されている情報であることをふまえると、守秘義務・秘密保持義務を課すべき内容であるかは疑問が生じます。
そのため、同僚に公開することを禁止するルールは、合理性が認められず無効となる可能性もあるかと考えます。
一方で、社外に公開することについてはその方法次第で会社の信頼を毀損(きそん)する可能性もありますので、同僚に公開することを禁止するルールと比較して合理性が認められる余地があると考えます」(宮寺弁護士)
会社に対する「名誉毀損」のおそれ
冒頭で紹介した投稿では、管理職の社員が退職時に自らの給与明細を公開した結果、会社全体の士気が低下したとされている。士気やモチベーションは目に見えない抽象的な概念だが、こうした行為が企業に対する具体的な損害と評価される場合はあるのだろうか。
宮寺弁護士が指摘するのは、給与明細が社外に公開されることによって「会社の社会的な評価」が低下した場合には、名誉毀損にあたり、社員に対する損害賠償請求が認められる可能性もあるということだ。
「もっとも、実際には、給与明細が社外に公開されたら会社の評価が下がるような会社は、そもそも『求人情報に記載された給与と実際の給与が異なる』『残業代が支払われていない』などの法令違反があることが想定されます。
このような場合、給与明細の公開行為は公共の利害に関するものと評価される可能性があり、名誉毀損の成立が否定される可能性も高いでしょう」(宮寺弁護士)
なお、刑法上の名誉毀損罪の成否についても、ほぼ同様のことがあてはまるという(刑法230条1項、230条の2参照)。
「わざと引き継ぎしない」も損害賠償のリスク
給与明細を公開する行為に限らず、わざと繁忙期を狙って辞める、引き継ぎをせずに辞める、などの「リベンジ退職」が話題になってから久しい。リベンジ退職の特徴は、「機密情報の持ち出し」など明らかな違法行為を行うわけではないものの、退職に際して会社に間接的な損害や混乱を与えることを意図した行動をとる点にある。
では、リベンジ退職で生じた損害を、会社から請求されるおそれはないのだろうか?
まず、労働者による辞職は原則として自由であり、会社の承諾は必要とされない。
期間の定めのない労働契約の場合は、解約の申し入れが使用者(企業)に到達してから2週間経過後に終了する。期間の定めがある場合には、期間終了まで解約できないが、満了すれば会社が退職を止めることはできない。
もし上記の各期間を守らずに退職して損害を与えた場合には、会社は元社員に損害賠償を請求できる。しかし、期間を遵守しているなら、たとえ意図的に繁忙期を狙って辞めたからといって、損害賠償を請求することはできない。
「一方で、退職時に引き継ぎをすることは、従業員に『信義則上の義務』として課せられていると解釈されています(民法1条2項参照)。
そのため、引き継ぎを一切せずに退職することで損害が発生した場合には、理論上は、会社は元社員に損害賠償を請求することが可能です。
しかし、完璧な引き継ぎをすることまでは義務ではないので、会社になんらかの損害が生じたことやその因果関係を立証することは著しく困難であり、訴えを提起することは現実的ではないと考えます」(宮寺弁護士)
もっとも、可能性が低いとはいえ、会社に損害を与えることを狙う行為をすると賠償を請求されるおそれがあることは確かだ。
もし訴訟などに巻き込まれたら、対応するための時間的・金銭的なコストは多大なものとなる。
そのリスクをふまえると、不必要なトラブルを生じさせないためにも、やはり安易な「リベンジ退職」は避けるべきだろう。

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