同種の裁判が全国で6件起こされており、うち5件について高裁でいずれも「違憲」とする判決が下されていたが(国の賠償責任は否定)、最後に「合憲」判断が出た。
「重要な法的利益」「社会的承認を受けている」と判示したが…
本判決は、「性自認」及び「性的指向」について、「人の重要な個性であり、性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、人の人格的存在と結びついた重要な法的利益である」とした。また、「同性の者同士が、永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む人的結合関係は、一つの家族の姿として社会的承認を受けていると認められる」とした。
その上で「性自認等の多様性に対する国民の理解不足」を指摘し、このまま国側が「漫然と当該施策の実施を怠り、性的指向及びジェンダーアイデンテイティを理由とする不当な差別が生ずる状況を放置しているものとして、控訴人らとの関係で、国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合もあり得る」と判示した。
「終戦直後の家族観」を重視した判決
しかし他方で、「憲法24条は、憲法改正当時、社会的承認を受けていた歴史的、伝統的な婚姻形態である両性、すなわち異性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む人的結合関係を『婚姻』とし」たと説明した。そして、同性どうしの事実婚は憲法24条1項の「婚姻」には含まれず、婚姻の自由は保障されていないとし、具体的な制度の構築は国会の立法裁量に属するとした。
その上で、現行の婚姻制度が同性カップルを対象としていないことについては、「夫婦とその間の子」を一つの家族の姿として想定する制度設計に立ち、「夫婦としてどうあるべきか」「子の父母としてどうあるべきか」という観点から婚姻の要件及び効果を定めることには、現在でもなお合理性が認められると指摘。
また、「(民法・戸籍法の)諸規定が存在しなければ誰も婚姻ができなくなり、憲法13条(幸福追求権)、憲法24条(婚姻の自由、家庭生活における個人の尊厳、両性の本質的平等)に反する結果となるから、その存在が憲法に違反することもあり得ない」とし、同性カップルが婚姻制度の対象とならないことは、「事柄の性質上、合理的な根拠に基づく」と判示した。
さらに、「このままの状況が続けば(中略)憲法違反の問題を生じることが避けられないが、現時点では、まずは国会内で審議が尽くされるべき」とした。
判決が「憲法前文」の引用で「中略」した“重要部分”とは
判決は、上述の「夫婦とその間の子」という家族の形を強調する根拠として、憲法前文の「われらとわれらの子孫のために(中略)この憲法を確定する」との文言を引いて「国家は、国民社会が世代を超えて維持されることを前提とするもの」としている。そして、以下のように、「異性婚の合理性」を説明している。
「男女の性的結合関係による子の生殖が、今なお世代を超えて国民社会を維持する上で社会的承認を受けた通常の方法」
「この方法をおいて、国民社会が世代を超えて安定的に維持されることを期することは困難」
「婚姻数が減少し、未婚率が男女共に上昇しても、上記のとおり生まれてくる子のほぼ全てが嫡出子であるという事実は、『一の夫婦とその間の子』という結合体を形成しようとする異性の者同士にとって、現行の法律婚制度が、生まれてくる子の出生環境を整えるという観点から実際に有用な制度であることを、優に推認させるものというべき」
しかし、判決が憲法前文を引用する際に「(中略)」として省略した部分を補うと、以下の通りである(中略部分を【】でくくった)。
「われらとわれらの子孫のために、【諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、】この憲法を確定する。」
これは、「(中略)」とされた部分を合わせて読めば、憲法が専断的な国家権力を排し、国民の権利・自由を守ることにより、「個人の尊厳」を守るために存在するという近代国家の原則(立憲主義)、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権を宣明したものと読解せざるを得ない。
したがって、「われらとわれらの子孫」という言葉は、文法的に、その後の本題を導く「枕詞」であるか、そうでなければ性的マイノリティーも含めた「すべての国民」をさすものと解するほかはない。「憲法が、いわゆる同性婚の権利を保障しているか否か」というテーマとの関連性は一切論証されていない。
以上から、本判決が憲法前文の一節を、上記のような形で端折って引用し、「国民社会の維持」を強調したことの適否が論評の対象となることは不可避である。
「結婚の自由がすべての人に保障される日まで戦い抜く」
原告代理人の藤井啓輔弁護士は、判決後の記者会見の冒頭、弁護団の声明を読み上げた。原告代理人・藤井啓輔弁護士(11月28日 東京都内/弁護士JPニュース編集部)
藤井弁護士:「本判決は、性自認等は、人の重要な個性であり、性自認等に従った法令上の取り扱いを受けることは人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であると認めながらも、法律上同性のカップルを婚姻という制度から排除することで、重要な法的利益と尊厳が日々侵害されている現状を是認し、本件諸規定を合憲と断じた。
少数者の人権を保護し救済するという司法としての役割を放棄するものであり、強い非難に値する」
また、会見では当事者である原告ら複数名による意見表明も行われた。その一人、会場から発言したKさんは、涙に声を詰まらせながらも、以下のように述べた。
Kさん:「今日の判決を受けてどんな言葉を選べばいいのか整理がついていません。たぶんつきません。
これまで傷つくことが多い人生でしたが、今日は、その傷が『ないもの』だとみなされた上に、『大した傷じゃないから治療する必要がない』と突き放されたような気持ちになりました。
長い間、私は『クローゼット』として誰も知られないように、パートナーとの小さい世界を守り続けてきました。時には、自分たちの関係を隠すために、ゲイ男性と婚姻関係を結ぶという、本来なら必要のない選択をしたこともあります。
そんな私が、リスクを背負ってまで法廷に立ち続けたのは、制度の不便さだけが理由ではありませんでした。制度から排除され、社会から存在しないものと扱われ続けることが、どれほど自分の人生をじわじわ蝕んでいくのか、どれほど人の尊厳を削り取っていくのか、私はそれを身をもって知っているからです。
この裁判は、私自身の尊厳を取り戻すための戦いであり、今を生きる人、そしてこれから生まれる誰かが、自分の人生を語れるようになってほしいとの思いを込めた戦いでした。
今日の判決は、透明人間のように生きてきた私のような『クローゼット』の声を届けたいと思って法廷で陳述してきたことも、みんなが振り絞った声も、(裁判官は)何も聞いていなかったんだなと感じました。弁護団が用意した資料も読んでいないでしょう。私は存在しないものとして無視されたように思います。
でも、私はこれまで散々踏まれてきて、ある意味慣れているので、こんなことではへこたれません。諦めが多い人生でしたが、もう諦めません。
今日の判決は受け入れがたいものですが、結婚の自由が全ての人に保障されるその日まで戦い抜きます。
ここまで支え、励まし、背中を押し続け、一緒に戦ってくださった全ての方々に心から感謝申し上げます。
どうかこれからもより一層の応援をよろしくお願いします。ありがとうございました」
今後、訴訟は上告審に移り、最高裁による統一判断が示されることになる。多数決原理が支配する国会によっては少数者の人権救済を期待することが困難な場合もあることから、最高裁は「少数者の人権を守る最後の砦」と表現されることもある。その最高裁が、原告らの訴えを受け、どのような判断を行うことになるのか、注目される。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)
![[コロンブス] キレイな状態をキープ 長時間撥水 アメダス 防水・防汚スプレー420mL](https://m.media-amazon.com/images/I/31RInZEF7ZL._SL500_.jpg)







![名探偵コナン 106 絵コンテカードセット付き特装版 ([特装版コミック])](https://m.media-amazon.com/images/I/01MKUOLsA5L._SL500_.gif)