赤穂四十七士のリーダーである大石内蔵助(くらのすけ)は古くから、阪東妻三郎、長谷川一夫、片岡千恵蔵、市川右太衛門、松本幸四郎(八代目、九代目)、萬屋錦之介、緒形拳、仲代達也、里見浩太朗、ビートたけし、松方弘樹、高倉健、中村吉右衛門、松平健、田村正和、北大路欣也など、錚々たる大スターが演じており、「忠臣蔵」「赤穂浪士」モノは時代劇の定番中の定番であり、国民的ドラマだったといっても過言ではない。
しかし、元禄赤穂事件には根本的な「誤解」が根強くある。
それは「吉良上野介(こうずけのすけ)は浅野内匠頭(たくみのかみ)に意地悪をしていない」「浅野は前後の脈絡なく吉良の背後から斬りつけた」「四十七士の服装はバラバラだった」「当日は雪は降っておらず晴天だった」「『山鹿流の陣太鼓』は存在しない」といった「史実と虚構の区別」の話ではない。
それ以前に、討ち入りが決行された「日付」「時間」のとらえ方を誤っているケースが、社会的信用のある大手メディアでさえ散見されるのだ。
旧暦と新暦は「完全に別モノ」ととらえるのが正解
大石内蔵助以下の赤穂浪士47名が本所松坂町(現・東京都墨田区両国3丁目)の吉良上野介邸に討ち入ったのは旧暦「元禄15年12月14日寅の上刻」とされている。これを新暦(太陽暦・西暦)に直すと「1703年1月31日午前4時頃」となる。
しかし、新暦と旧暦の違いに対する無理解ないしは誤解から、誤りが生じることがある。
たとえば、以下の表記はいずれも典型的な誤りである。
- 元禄15年(1702年)12月14日午前4時頃
- 元禄15年(1703年)12月14日午前4時頃
- 元禄15年12月14日寅の上刻(1703年1月30日午前4時頃)
- 元禄15年12月14日(旧暦)(1703年1月30日)
旧暦と新暦とでは、年月日の数え方だけでなく、1日の起点と終点の数え方も異なる。したがって、そもそも、まったくの別モノとして完全に切り離して考えるのが正しい。以下、ややこしい枝葉末節に立ち入らず、できるだけ簡潔に説明を加えることとする。
旧暦の日付の数え方
旧暦(太陰太陽暦)は、原則として「月の満ち欠けの周期」を基準とする暦である。地球から見て太陽が月と重なり月が見えなくなる「新月」が「1日」、「三日月」が「3日」、「満月」が「15日」となる。
しかし、月の満ち欠けだけを基準とすると、季節との間にズレが生じる。
なぜなら、季節が生じる理由は、地球の地軸が約23.4°傾いた状態で太陽の周りを公転し、太陽光を浴びる角度・時間がたえず変化することにあるからである。
月の満ち欠けの周期(公転周期とは異なることに注意)は約29.5日なので、これを基準とすると1年は約354日となり、太陽暦の1年(地球の公転周期である約365日)より約11日短い。したがって、そのままでは季節の移り変わりのサイクルと整合性がとれなくなる。
そこで、3年に1回「閏月(うるうづき)」を設け、調整する。
このような規則に基づく結果、「元禄15年」と「1702年」は大部分重なるが、イコールではないことが指摘される。
すなわち、旧暦の「元禄15年」(壬午(みずのえうま))は閏月(閏8月)があり、同年の12月は13か月め、つまり、閏月がなければ年が改まっていたことになる。
したがって、討ち入りの日付について「元禄15年12月14日(1702年1月31日)」という表現も誤りである。
旧暦の時刻の数え方は「2つあった」?
では、「元禄15年12月14日(1703年1月31日)」と表記すれば正解なのか、というと、実はこれも微妙といわざるを得ない。なぜか。ややこしいことに、そこには旧暦の時刻の数え方がからんでくる。
旧暦は1日を12に分け十二支(子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥)で表していた。1日の起点の「正子(しょうし)」は新暦でいう午前0時頃であり、この点では旧暦と新暦との間に齟齬はない。
しかし、当時の人々の慣習では1日の起点を「夜明け」(明け六ツ ※)と考えていた。
※日の出の時間に応じて変動し、一概に「●時頃」と表現することはできない
ここに混乱が生じる。討ち入りの時刻である「寅の上刻」も、厳密には「正子」を過ぎている以上、日付が変わって「12月15日」ということになる。ただし、慣習上「寅の上刻」は夜明け前であるため、「12月14日」ととらえる見方も、誤りとまではいえない。
つまり、1日の起点と終点のとらえ方次第で、「12月15日寅の上刻」「12月14日寅の上刻」もどちらも正しいということになる。しかし、現代の新暦の感覚でいえば、紛らわしいことこの上ないだろう。
結局、討ち入りの日時の正しい表記は、旧暦と新暦とで別に表記し、以下のいずれかということになる。
- 元禄15年12月14日寅の上刻(1703年1月31日午前4時頃)
- 元禄15年12月15日寅の上刻(1703年1月31日午前4時頃)
時代が変われば制度も感覚も変わる。
かつては日本人なら誰でも知っていて冬の風物詩だった「忠臣蔵」も、今や、近年はドラマや映画で取り上げられることもめっきり減った。弁護士JPニュース編集部でも、20代~30代の記者の中には、その名称やあらすじどころか、モデルとなった史実である「元禄赤穂事件」さえ知らないという者もいる。
その背景には、「忠臣蔵」の根底にある価値観が現代人の感覚、社会正義の観念に合わなくなっていることがあるだろう。そもそも現代の法秩序では、浅野内匠頭の刃傷も赤穂浪士の討ち入りも許容される余地がまったくない。
また、詳細には立ち入らないが、たしかに「忠臣蔵」には理不尽な点やツッコミどころが多数存在することは否定できず、いずれ忘れ去られる運命にあるのは避けられないのかもしれない。
それはやむを得ないことであり、決して悪いことではない。とはいえ、一部の時代劇ファンや年配の皆さんにとっては、一抹の寂しさも感じられるに違いない。

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