先月19日、大阪・守口市の交差点で、軽自動車とオートバイが衝突する事故が発生。報道によれば、オートバイに乗っていたいずれも14歳の男子中学生2人が死亡し、車を運転していた会社員が過失運転傷害の疑いで逮捕された(その後、容疑は過失運転致死へ切り替え)。

事故当時の報道によれば、現場ではバイク用のヘルメットは確認されなかったという。
こうした報道に対し、SNSでは「中学生ってことは、無免許で2人乗り?」「ノーヘルはあまりに危険すぎる」「運転手もこれで逮捕は可哀想」と車の運転手に対する同情の声も多い。
今回の事故では、車の運転手も前方不注意があったことを認めているというが、被害者側に違反があった場合でも、運転手が起訴される可能性はあるのか。もし起訴された場合には、被害者側の違反行為は量刑にどの程度影響を与えるのか。
交通事故に注力する伊藤雄亮弁護士に聞いた。

“被害者側”による違反行為は起訴・不起訴に影響を与える?

報道の通りであれば、今回の事故では、バイク側に「無免許」「ノーヘルメット」「2人乗り」などの道路交通法違反があったことが考えられる。
伊藤弁護士は、事故の“被害者側”による違反行為は、起訴・不起訴の判断や有罪・無罪の認定に「間違いなく影響を与える」として、こう説明する。
「加害者側に何らかの不注意・過失があったとしても、たとえば被害者が信号無視をした場合、被害者の過失のほうが大きくなります。したがって、双方の不注意・過失の程度を対比して、明らかに被害者側の過失が大きい場合には、加害者側の運転手が起訴されることは、よほど特殊な事情がない限りあり得ないと思います。
たとえ無理やり起訴したとしても、無罪になる可能性があるため、検察官は起訴・不起訴の判断で慎重になるでしょう」
今回のケースでは、当時の信号の状況や、スピード超過の有無など、事故の具体的な事実関係はわかっていない。しかし、大型二輪免許を取得できるのは「満18歳以上」、普通二輪免許も「満16歳以上」であり(道路交通法88条)、被害者らが「無免許」だったことは確かだ。
「中学生がたとえ『大人と同じように安全運転していたんです』と言ったところで、そもそも免許を持っておらず、法律上はその能力がないはずと考えられていますから、信用されるはずもありません。起訴・不起訴の判断や有罪・無罪の認定にも大いに影響するでしょう」(伊藤弁護士)
一方、運転免許を所持している人が、たまたま家に免許を置き忘れて無免許状態だったというようなケースでは、「無免許であったことが事故の危険性に影響を与えていないと判断されるようなケースも想定され、その場合には加害者側の不注意・過失の危険性が主な問題になる可能性が高くなると思う」(伊藤弁護士)という。

民事上の「過失割合」にも被害者の違反行為が影響

また、被害者側の違反行為は、民事上の過失割合にも影響し得ると伊藤弁護士は続ける。
「過失割合は、事故の態様によって基本的な基準が定められています。それに加えて、その基本の割合を“修正”する要素がいくつか個別に存在します。
たとえば、無免許、飲酒運転、脇見運転、あるいは大幅なスピード超過などです。被害者側の運転が基本的な基準に照らしてそもそも過失が大きいものであったり、あるいは修正要素に該当する状況が多かったりすれば、その分、過失割合も当然に変わっていきます」
今回の事故は「中学生が無免許で運転した」ということで注目を集めたが、伊藤弁護士は「年齢や免許の有無にかかわらず『危険な運転』をする人は少なくない」として注意を促す。
「私が交通事故に注力しているからよりそう見えているのかもしれませんが、日本は交通事故に対する危機意識が低いと感じます。そのことは、今回の事故に限らず、危険な運転による悲惨な事故のニュースがいまだに度々流れてくる現状にあらわれていると思います。
ドライバーの方には、こうした事故の報道に触れた際、『自分も日ごろ危険なものを運転している』『道路には危険な運転をする人がいるんだ』と、改めて認識する機会にしてほしいと思います」


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