2025年11月、名古屋で未解決だった主婦殺害事件が26年ぶりに解決した。その裏には、被害者の夫が事件以来ずっと現場となった住まいの家賃を払い続けた執念があった。

未解決事件のうしろには、辛く悲しい思いをしている被害者の配偶者や親族がいる。その心のうちは本人以外知り得ないが、誰もがわずかでも可能性を信じ、解決を待ち望み続けていることは確かだろう。
今回紹介するのは、群馬県東吾妻町で、家族の農作業中に主婦がこつ然と姿を消した事件。この主婦は、家に生後2か月の娘を残していた。不可解で謎の多いこの事件は2018年11月に発生し、丸7年が経過している。
7歳となった娘が母親と再会できる日はやってくるのか…。
※この記事は、『謎と闇に覆われた恐怖の未解決ミステリー』文庫版より一部抜粋・構成しています。

生後2か月の娘を残し、主婦はどこへ消えたのか…

2018年11月3日、群馬県吾妻郡東吾妻町に住む主婦、山野こづえさん(当時27歳)が生後2か月の娘を自宅に置いて突然行方不明になった。
この日は年に一度の家族総出の稲刈りで、家族はこづえさんと娘を家に残し自宅から約2キロの場所に全員で出かけていた。
13時52分、夫の携帯にこづえさんから連絡が入る。
「ねえ、庭の水が出っぱなしなんだけど大丈夫?」
「それは山の水を引いてるから大丈夫」
「そっか、わかった。じゃあ頑張ってね」
この他愛もないやり取りが夫婦の最後の会話になった。
17時頃、稲刈りを終えた家族が家に戻ると、なぜかこづえさんの姿はなく、娘と、こづえさんが取り込んだと思われる畳まれた洗濯物、充電状態の携帯電話、本人の財布が残されていた。

夫はすぐに近所を探し歩いたが妻を見つけられず、警察に捜索願を提出する。

150人体制の捜索が始まったが…

その日の夜には警察犬が出動、翌日から事件や事故など様々な可能性を視野に入れ、150人体制の警察や消防隊による捜索が始まった。
すると、家族が稲刈りから戻る15分ほど前、自宅から数百メートルの地点で近隣住民が、家とは逆方向に歩くこづえさんとすれ違ったとの証言が得られる。
いったい彼女に何が起きたのか。愛娘を1人残し、家を出る理由などあるのだろうか。
その後、家族は警察の協力のもと懸命に捜索を続けたが消息は掴めなかった。
こづえさんは失踪当時、身長159センチ、体重55キロ。肩くらいまで伸びた黒髪、服装はパーカーと黒のジャージパンツ、紺色のスニーカーを履いており、結婚指輪はつけたまま。
また、顔の特徴としてほくろが顎の中央に2つあり、顔の左側にもほくろが複数あったという。果たして、彼女はどこに消えたのか。

仲睦まじい夫婦になにがあったのか

夫婦は周囲が羨むほど仲睦まじく、2018年9月には待望の娘が誕生している。しかし、几帳面で繊細な性格のこづえさんは出産直後に母乳がなかなか出ないことでプレッシャーを感じ、何度もナースコールを押すなどしており、退院してからも「私には無理。育児に自信がない」と落ち込むことが度々あったという。

産後の精神状態に詳しい医師によれば、このときのこづえさんは「解離性遁走」の状態にあった可能性があるという。これは強いストレスや困惑により脳が防衛反応を起こし本来の人格や記憶が喪失、無意識にその場から遠ざかろうとする精神疾患だ。
期間は数時間の場合もあれば1年以上に及ぶケースもあり、仮に正常な状態に戻っても、自分が逃げたという負い目から元いた場所に帰るに帰れないことも珍しくないそうだ。
こづえさんもまた、これと同じ状態に陥ってしまったのだろうか…。
夫によれば、こづえさんは調理師専門学校に通い調理師免許を取得。さらに、エステの講座に通うなど美容にも関心を持ちカラオケが好きだったという。
このことから、自分の資格や趣味を活かした職場で働いている可能性も否定できず、実際に埼玉県のカラオケ店で2、3人の女性と一緒にいるところを見たという情報や、埼玉県秩父郡のコンビニに彼女に似た女性がいた、さらには東京の焼肉店で複数回見たとの目撃証言も寄せられたが、いずれも消息を掴む手がかりにはならなかった。
現在もこづえさんは行方不明のまま。家族は再会できる日を心待ちにしている。


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