12月18日に施行される「スマホ新法」は、iPhoneやAndroidで行われている「囲い込み」と呼ばれる行為を禁止し、Apple・Googleに「スマホの門戸を開けること」を求める法律だ。
アプリの入手先や決済方法、標準ブラウザなど、これまで事実上ロックされていた部分が、段階的に利用者の選択に委ねられることになる。
一般のスマホ利用者としては自由度が広がる一方で、選択に伴うリスクも増える点には​注意が必要だ。

Apple・Googleを「狙い撃ち」した法律

スマホ新法(「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」)は昨年6月に国会で可決・公布され、今月18日に全面施行される。
制度設計には「EUデジタル市場法」が参照されており、監督機関は公正取引委員会となる。「公正で自由な競争」と「利用者の利便性・安全・安心」の両立を掲げる。​
スマホ新法の対象は、スマホのOSやアプリストアを提供している企業のうち、月間平均利用者数が4000万人以上という基準を満たす「特定ソフトウェア事業者」。具体的にはApple社とGoogle社が該当する(Appleの子会社であるiTunes株式会社も対象)。
同法5条では、AppleやGoogleが自社の立場を利用して、他社から得た非公開のデータを自社の利益のために使用することを禁止。
また6条では、AppleやGoogleが一般のアプリ開発者や企業に対し、不当に差別的な取扱いや、その他の不公正な扱いをすることを禁止する。

選択肢が広がる一方、手間やリスクも増える?

現在、スマホにアプリをインストールしたい場合、原則としてiPhoneでは「App Store」のみ、Androidでは「Google Play」のみと、入手先が限られている。
AppleやGoogleの審査を受けたアプリだけが販売されることにより、OSとアプリの機能を連携させやすくなるほか、悪意のあるアプリ(マルウェアなど)が紛れ込むリスクを抑えられるという、セキュリティ面でのメリットもある。
一方で、AppleやGoogleといった巨大IT企業による寡占状態が続き、ユーザーの「囲い込み」が行われることで、自由な競争が妨げられているという指摘もなされてきた。
スマホ新法では、アプリストアを自社のものに限定することを禁止する(同法7条1項)。これにより、App StoreやGoogle Play以外のストアからもアプリを入手することが可能になる。

ただし、セキュリティや青少年保護などを理由にした制限は一定程度認められており、「完全な無制限開放」ではない。
あわせて、アプリ開発者に対し、Apple PayやGoogle Payなどプラットフォーム側の課金システムのみの利用を強制することも原則禁止される(8条1項)。​
Apple PayやGoogle Payの事業者側の手数料負担は大きい。開発者側としては、「外部決済サービスの利用」や「開発者自前の決済システム」といった選択肢が広がる点がメリットだ。
また利用者側としても、「手数料の引き下げ」や「アプリ価格・サブスク料金の柔軟化」につながる可能性があるというメリットが存在する。
一方で、返金時の対応がシステム運営会社によって異なってくる可能性もあるなど、選択肢の広がりと共に利用者自身が判断しなければならないポイントも増す点には注意が必要だ。
また、現在、WebブラウザはiPhoneでは「Safari」が、Androidでは「Google Chrome」がデフォルトとして設定されている。検索エンジンについても同様に、特定のサービスが標準として設定されている状況にある。
スマホ新法は、標準とするWebブラウザや検索エンジンなどの選択画面の表示を遵守義務として課している(12条)。これにより、利用者はこれまでのようにデフォルト設定を受け入れるのではなく、ブラウザや検索エンジンを自身で選択することが容易になる。
総じて、一般のスマホ利用者からすれば「囲い込み」が破られ多様な選択肢が広がる点がメリットである一方、選択の手間やリスクが増える点がデメリットとなる。アプリの提供元やシステム運営会社の情報確認、セキュリティ設定の見直しなど、意識的な対応がこれまで以上に重要となるだろう。



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