社長の発言の真偽にかかわりなく、受験生たちは受講料を支払ったにもかかわらず、それに見合ったサービスを受けられない状態に陥っている。受験生やその保護者らは、誰に対し、どのような「法的責任」を追及することができるのか。損害賠償請求事件の経験が豊富な荒川香遥(こうよう)弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。
受験生には3つの損害が発生
荒川弁護士は、受験生ないしは保護者は以下の3つの損害について法的責任を追及し得ると説明する。①受けられなくなったサービスの対価(授業料、講習会受講料等)
②代わりに他の塾等を利用することになった場合の費用
③精神的苦痛(慰謝料)
荒川弁護士:「これらのうち、『①受けられなくなったサービスの対価』『②代わりに他の塾等を利用することになった場合の費用』は、塾側の『債務不履行による損害』です。
受験生と塾との間には、受験生が『授業料を支払う債務』を負担し、塾がその対価として『授業等のサービスを提供する債務』を負担するという契約が成立しています。
したがって、塾が授業料に対応するサービスを提供できなくなった場合には、それにより受験生に生じた損害を賠償する義務を負うということです。
これに対し、『③精神的苦痛に関する慰謝料』は『不法行為による損害』です」
塾運営会社が負う「債務不履行責任」とは
まず、塾運営会社の債務不履行責任のうち「①受けられなくなったサービスの対価」は、サービスの性質に応じて異なる。荒川弁護士:「塾側が提供するサービスは様々な内容を含んでいます。
授業料や講習会受講料といった『コマ』ごとにかかる費用は個別に対価を計算します。
これに対し、契約期間を通じて利用するサービスは、残りの日数に応じて日割りで計算します」
次に、「②代わりに他の塾等を利用する場合にかかる費用」についてはどうか。
荒川弁護士:「SS義塾と類似のサービスを提供する塾等を契約し、そのサービスを受けたことにより、SS義塾よりも費用が余分にかかった場合には、その差額を請求することが考えられます」
HPで運営会社の所在地と記載されているビル。それらしい社名は見当たらない(12月17日 東京都港区/弁護JPニュース編集部)
「委託先が…」との責任転嫁は認められない
前述したように、塾運営会社の社長は「委託先に会社を乗っ取られた」「塾の口座から4000万円近くが不正に出金された」などと主張していることが報じられている。しかし、これらの主張が仮に真実であったとしても、塾運営会社は基本的に債務不履行責任を免れることはできないという。
荒川弁護士:「塾運営会社が業務を外部に委託していた場合、委託先の選任・監督についても責任を負います。
『そういう悪事をはたらくような者を選任した者、監督が不十分だった者が悪い』ということであり、この責任はめったなことでは免責されません」
「慰謝料」の請求が認められる余地も
「③精神的苦痛(慰謝料)」についてはどうか。荒川弁護士は「一般的に、債務不履行があったからといって、精神的苦痛が生じるケースは少ない」と指摘しつつ、本件の場合は慰謝料を請求する余地があると説明する。荒川弁護士:「債務不履行の態様が悪質であり、かつ、受験生に精神的なショックを与えることを認識していながら敢えて債務不履行に及んだことが立証できれば、慰謝料を請求できる余地があると考えられます。
今回はいきなり音信不通になり、何の説明もなく、他の塾への引き継ぎ等の配慮もせず、一方的にサービスの提供を停止しており、悪質性が高いといわざるを得ません。
また、そのようなことをすれば、受験生に精神的なショックを与えることは容易に認識できます。特に受験シーズン真っ只中にいる受験生は甚大なショックを受け、場合によっては受験で本来の実力を発揮できないおそれもあります。
したがって、本件の場合、数万円~10万円程度の慰謝料請求が認められる可能性があると考えられます」
「経営者」の責任を直接問えるか?
とはいえ、運営会社がサービスを停止した理由として、塾運営会社が経営に行き詰まり、資力がない可能性も考えられる。その場合、受験生側が塾運営会社に責任追及を行っても、損害を回収することは困難である。そこで、塾運営会社の経営者である社長や役員等の個人責任を追及できないか。
荒川弁護士は、「会社役員等の第三者に対する損害賠償責任を定めた会社法429条(※)に基づいて、直接、運営会社の社長らの個人責任を追及する手段が考えられる」と説明する。
※【会社法429条1項】「役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人)がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」
荒川弁護士:「受験生と契約関係にあるのは塾運営会社という『法人』であり、その役員は契約当事者ではないので、契約上の債務不履行による責任追及はできません。
そこで、本来、契約関係にない者に対しては『不法行為責任』(民法709条)の追及が考えられます。しかし、その場合、加害者の『故意または過失』と『損害』との間の『因果関係』について、厳密な立証をしなければなりません。
これに対し、会社法429条では、債権者は、会社役員が『故意または重過失』によって『会社に対する職務上の義務に違反したこと』まで立証すれば、その義務違反から生じることが社会通念に照らし相当と評価できる損害について、賠償責任を問うことができます(【図表】参照)。
会社法429条は、会社と取引関係にある債権者等を厚く保護するため、役員等に対し責任追及を行う場合の『立証の負担』を軽くする趣旨の規定だと考えられています(最高裁昭和44年(1969年)11月26日判決参照)。
社長(代表取締役)等の経営者は会社の意思決定を行い、そのあり方を大きく左右する立場にあるので、対外的にも重い責任を負わせたということです」
【図表】「不法行為責任」を追及する場合と「会社法429条責任」を追及する場合との「立証の負担」の比較
経営者の「義務違反」と「悪意または重過失」はどう判断する?
本件のケースで、まず「会社に対する職務上の義務の違反」は認められ得るか。荒川弁護士:「『会社に対する職務上の義務の違反』については、業務遂行に際し相当な注意を尽くさなければならないという『善管注意義務・忠実義務』(会社法330条・355条)の違反が考えられます。
会社の経営状態を良好に保つべく努力する義務や、そのために受験生に対する教育サービスの水準を保ち質を高めるよう努力する義務などです。これらの義務違反は本件では認められやすいでしょう。
また、粉飾決算や景表法違反など『法令遵守義務』の違反があれば、それも『善管注意義務・忠実義務』の違反となります」
次に「悪意または重過失」の要件についてはどうか。
荒川弁護士:「『経営状態が著しく悪化していることを知りながら何の対策も講じなかった』『スタッフへの給料の遅配等が常態化していた』『事業継続が困難な状態に陥ったのに新規の受講生を受け入れ続けた』などの事情があれば、故意はともかく、少なくとも重過失は認定され得るでしょう」
とはいえ、「経営者等の個人にも資力がなければ、結局、強制執行をしても空振りに終わり、事実上、泣き寝入りしなければならないリスクがある」という。
わが国では少子化が急激に進行しており、大学受験業界では予備校や塾の生存競争が厳しさを増していくと考えられる。そんな中で、受験生およびその保護者には、いざという時の責任追及を視野に入れつつ、サービスを運営する事業者の体質や経営状況、経営陣の人となりといったことまで慎重に見極めなければならなくなってきているといえそうである。

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