“海外事業者”も規制対象に…乳幼児用おもちゃ・ベッドにも新ルールが導入 「製品安全4法」12月25日に改正法施行
12月25日、身近な製品の安全確保のための規制を定める「製品安全4法」の改正法が施行される。
インターネット取引の拡大に伴い、海外事業者が通販サイトを通じて日本国内の消費者に製品を直接販売できるようになったことを受け、今回の改正では海外事業者に対する新たな規制が設けられる。

あわせて、乳幼児向けおもちゃの安全確保に関する規制枠組みも導入。国内消費者や子どもの生命・身体を守るための改正だ。

背景には海外製モバイルバッテリーの発火事故

製品安全4法とは、消費生活製品安全法、ガス事業法、電気用品安全法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律の総称。
近年、中国などの海外事業者が、Amazonや楽天市場といったオンラインモールや独立した通販サイトを通じて、国内の輸入事業者を介さず、日本の消費者に製品を直接販売する機会が急増している。
現行法では、製造や輸入を行う国内の事業者に対しては、製品の安全確保義務や事故報告義務などの規制を課し、行政による回収命令の対象にもしている。
しかし、日本国内に製造・輸入拠点を有さず、さらに輸入事業者も介さない海外の事業者が国内の消費者に製品を直接販売する場合には、実効的な規制を行うことが困難であった。
現状、消費者が購入した製品に関してトラブルになっても、海外事業者と連絡がつかないといった問題も生じている。さらに海外製モバイルバッテリーの発火事故など、重大な製品事故も起こっている。
改正法では、このような課題に対処すべく、以下の内容が盛り込まれた。
  • 海外事業者を規制対象化(「特定輸入事業者」制度)
  • 取引デジタルプラットフォーム提供者に対する危害防止要請(努力義務)
  • 法令違反行為者の公表制度
  • 乳幼児用玩具に対する新たな規制

「特定輸入事業者」として海外事業者が規制対象に

製品安全4法は、消費者に危害が及ぶ可能性のある製品(約500品目)について、メーカーや輸入事業者は国が定める技術基準を満たした上で「PSマーク」を表示するよう義務付けている。そして、小売りなど販売業者は、PSマークがない対象製品を販売できない。
しかし、これまで海外事業者は法律上の規制対象ではなく、その製品の安全性については国内の販売・輸入事業者に依存していた。
改正法により、PSマーク対象製品を国内消費者に直接販売する海外事業者も「特定輸入事業者」として新たな規制対象となり、経済産業省への事業届出、技術基準への適合確認、国内管理人の選任が義務付けられる。
上記のうち「国内管理人」は、日本国内で製品の安全性確保のために必要な措置をとる責任者のことであり、個人・法人を問わないが、日本国内に住所を有していることや、日本語による会話能力といった一定の要件を満たす必要がある。

なお、特定輸入事業者が届出を行う際の届出事項(事業者の名称・住所、国内管理人の情報など)は公表される。これにより、消費者は、自分が購入しようとしている製品の販売事業者や国内管理人を確認することが可能になった。

Amazonや楽天市場にも「努力義務」が課される

改正法では、Amazonや楽天市場など取引デジタルプラットフォーム(オンラインモール)提供者に対しても新たな規制を課す。
国内消費者に危害が及ぶおそれがある製品がオンラインモールで販売されていると認められ、かつ、出品者によるリコール等の必要な措置が講じられることが期待できない場合、経産省は、プラットフォーム提供者に対して出品削除などの危害防止措置を要請することが可能になった。
つまり、未然に危害を防止するための平時からの取り組みが、プラットフォーム提供者に対して法律的に求められるようになる。ただし、この要請は努力義務であり、違反しても直ちに罰則の対象とはならない。
また、改正法により、製品安全4法に違反する行為を行った者の氏名などを、経産省が公表できるようになった。これにより消費者は、どの事業者が法令違反を行ったのか知ることが可能になり、製品を買う際の判断の参考にすることができる。

3歳未満向けの「おもちゃ」「ベッド」にも新たな規制が

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乳幼児用おもちゃ・ベッドに表示が求められる「子供PSCマーク」(経産省公式サイトから)

製品安全4法のうち消費生活用製品安全法においては、乳幼児用玩具(3歳未満向け玩具)と乳幼児用ベッドを「子供用特定製品」に指定して、新たな規制を導入する。
乳幼児用玩具の製造または輸入を行う事業者は経産省に対して事業開始の届出を行う必要がある。また、玩具が国の定める技術基準に適合することを確認するため、検査を行い、その検査記録を作成・保存することも求められる。
また、玩具に表示する対象年齢は「使用年齢基準」(技術基準省令)に沿って定める必要があり、以下のようなケースでは、使用年齢基準に沿わないと判断されることもある。
  • 広告や説明書から3歳未満向け製品であることが推測されるにもかかわらず、高い対象年齢を表示すること
  • 市場に流通している機能・寸法等の特徴が類似する他の製品と比較して、著しく高い対象年齢を表示すること
  • 一般消費者等がその製品の機能、寸法などの特徴から想定する対象年齢から大きく矛盾する対象年齢を表示すること
さらに乳幼児用玩具には、届出事業者の氏名または名称に加え、「使用年齢基準に沿って定めた対象年齢」および「保護者が見守る旨(保護者の下で遊ばせてください 、など)」の「警告」を表示しなければならない。

そして、販売事業者は、技術基準適合義務・警告表示義務の履行を示す「子供PSCマーク」が表示されていない乳幼児用玩具や乳幼児用ベッドを販売することができない。なお、玩具のマークは丸型、ベッドのマークはひし形だ。


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