2026年がスタートした。年が明けて、最初に食べる代表的なごちそういえば、なんといっても「餅」だろう。
雑煮や汁粉・ぜんざい、焼き餅など、さまざまな楽しみ方があり、自身にDNAレベルで深く刻まれていると感じる人も多いだろう。餅つきをし、つきたての餅を食べるのも乙なものである。
ただし、忘れてはならないのが、例年、主に高齢者を中心として「餅」を食べてのどに詰まらせる事故が多発していることだ。気道が塞がれ命にかかわるケースもある。
餅の事故を未然に防ぐため注意すべきポイントとは何か。また、事故が起きてしまった場合にとるべき応急処置はどのようなものか。東京消防庁の担当者に聞いた。

東京消防庁管内、“餅の事故”で少なくとも2人が死亡

東京消防庁によると、都内で2024年に餅(団子等を含む)が原因で63人が救急搬送されている。そのうち54人が65歳以上だった。救急搬送時の「初診時程度別」では以下の通り。
  • 軽症:22人
  • 中等症:14人
  • 重症:5人
  • 重篤:20人
  • 死亡:2人
このうち、1月の発生状況はどうなっているのか。
「月別でみると、1月が最も多く、29人となっています。1月3日までの『三が日』で18名、松の内が明ける1月7日までだと23名が救急搬送されています」(東京消防庁防災安全課・担当者)
データからも、餅の事故が1月上旬に多発していることが裏付けられている。

救急搬送に至る件数はごく一部であることを考えると、実際にはこれよりも多くの事故が発生していることになる。

餅の事故を防ぐため「5つの対策」

東京消防庁防災安全課の担当者は、餅をのどに詰まらせる事故を予防するには、調理する側、食べさせる側、食べる側が、以下の5つの対策を徹底することが必要だとする。
①餅は小さく切って、食べやすい大きさにする
②急いで飲み込まず、ゆっくりと噛んでから飲み込む
③乳幼児や高齢者と一緒に食事をする際は、食事の様子を見守るなど注意を払う
④餅を食べる前に、お茶や汁物を飲んでのどを潤しておく
⑤いざという時に備え、応急手当の方法をよく理解しておく
雑煮や汁粉(ぜんざい)の餅が大きいと得した気分になる。また、大きな餅をびろーんと伸ばしながら食べることに快感を覚えるという人も多いだろう。しかし、餅の事故の原因になるリスクがあることは否定できない。小さく切るに越したことはない。
また、餅は食感が柔らかいので、思わずよく噛まないまま飲み込んでしまう可能性もある。事前に、よく噛むように心がけ、または注意喚起すべきだろう。

餅をのどに詰まらせても「掃除機」はNG…正しい応急処置は?

では、もし餅をのどに詰まらせてしまったら、どのような応急処置をとることが正しいのか。
東京消防庁救急指導課の担当者は、まず、助けを呼び、119番通報し、他に同席者がいる場合等にはAED(自動体外式除細動器)を搬送してもらうべきだと説明する。
そのうえで、「『のどに詰まったのか?』と尋ね、気道異物による窒息であるかを確認してください。
声が出せずうなずく場合は、気道異物を除去する必要があります。異物除去には咳をすることが一番効果的なので、咳ができる場合は可能な限り咳をさせます。咳ができない場合は気道異物除去の処置を行います」と話す。

気道異物除去の具体的な方法・手順については、「文字で説明するより、イラストや動画などで説明した方が、誤解が生じにくく分かりやすい」(東京消防庁救急指導課・担当者)とのことなので、以下、東京消防庁のYouTube公式チャンネルのURLとともに説明する(同チャンネルでは、イラストや動画などで分かりやすく説明している)。
【成人・小児の場合】
まず、「背部叩打法」(※1)を行う。効果がなければ「腹部突き上げ法」(※2)を行い、異物が取れるか、反応がなくなるまで続ける。
※1:「窒息に対する応急手当(成人・小児:背部叩打法)」(東京消防庁公式チャンネル)
※2:「窒息に対する応急手当(成人:腹部突き上げ法)」(同上)
【乳児の場合】
「背部叩打法」(※3)と「胸部突き上げ法」(※4)を交互に、異物が取れるか反応がなくなるまで行う。
※3:「窒息に対する応急手当(乳児:背部叩打法)」(東京消防庁公式チャンネル)
※4:「窒息に対する応急手当(乳児:胸部突き上げ法)」(同上)

反応がなくなったら「心肺蘇生」を

以上の処置を行っても異物が取れず、反応がなくなった場合には、どうすればいいのか。
「心停止の時と同じやり方で、救急車が到着するまで、AED、胸骨圧迫、人口呼吸で心肺蘇生を行います。
床に仰向けに寝かし、胸骨圧迫を30回、人工呼吸(※5)を2回、繰り返し実施します。人工呼吸を行って空気が入らない場合も、2回まで実施し、胸骨圧迫に移ります。
そして、口に異物が見えたら取り除きます。見えない場合でも、決して、口に指を入れて探ってはいけません。心肺蘇生に努めてください」(東京消防庁救急指導課・担当者)
※5:「人工呼吸の実施方法」(東京消防庁公式チャンネル)
なお、伊丹十三監督の映画『タンポポ』(1985年)の有名なシーンで、主人公(宮本信子さん)が、餅をのどに詰まらせた高齢男性(大滝秀治さん)の口に掃除機の吸入口を突っ込んで餅を吸引するというものがある。
しかし、「口腔内を傷つけるリスクや、感染症のリスクがあることから、東京消防庁では推奨していません」(東京消防庁救急指導課・担当者)とのこと。

餅以外にも注意…「年末年始に発生しがちな事故」がこんなにも

東京消防庁防災安全課の担当者は、年末年始には餅の事故の他にも、警戒すべき事故があると指摘し、警戒を呼び掛ける。

「大掃除中の事故や掃除に使用する洗剤の事故、換気不足での一酸化炭素事故、鍋を囲む際に使用するカセットこんろの誤使用・誤廃棄の事故、路面凍結による転倒事故など、冬には多くの危険が身近に潜んでいます。
注意すべきポイントや事故事例の紹介など、東京消防庁ホームページから確認できます。ご覧いただき、安全で楽しい年末年始をお過ごしください。
また、冬は空気が乾燥し、火災が発生しやすい時期でもあります。もしもの場合に備えて、住宅用火災警報器の維持・管理、消火器の設置をお願いします」(東京消防庁防災安全課・担当者)


編集部おすすめ