東京都心が大雪真っ白に染まった2002年12月、東京都江東区北砂7丁目で、老夫婦が殺害された。状況から金品目的の犯行の線が濃厚とみられたが、現場にはなぜか現金100万円が手つかずで残されており、捜査は混乱する。

それから23年。事件はいまだ、解決に至っていない。
どこで起こっていても不思議のない強盗殺人。だからこそ逆に、こうした未解決事件が全国のそこかしこにあり、埋もれてしまっているのではと考えさせられる…。
遺族は300万円の私的懸賞金を設け、現在も事件解決に繋がる有力な情報を求めている。
※この記事は、『謎と闇に覆われた恐怖の未解決ミステリー』文庫版より一部抜粋・構成しています。

大雪の翌日に寝室を真っ赤に染め、老夫婦を殺害

2002年12月8日深夜から首都圏で降り始めた雪は9日の夕方には小降りになったものの、電車が運休して一部の学校が休校するなど、交通機関は終日混乱し、12月としては都内では記録的な大雪となった。
その大雪が残る12月10日午前10時25分頃、東京都江東区北砂7丁目で質店「藤井商店」を営み、店舗兼住宅に住んでいた藤井義正さん(当時78歳)と妻のえつ子さん(同74歳)が珍しく起きてこない。不審に思った同じ敷地内の別宅に住む夫婦の長男の嫁が合鍵で屋内に入ったところ、寝室で2人が頭から血を流し死亡しているのを発見した。
現場は東京メトロ東西線南砂町駅から北に約1キロ離れた閑静な住宅街。藤井さん夫婦は事件の40年ほど前から質屋を経営するとともに駐車場やアパートも所有、資産家として知られていた。義正さんは以前は町内会の会長を務めるなど人望の厚い人物だったという。

盗みのプロの犯行が濃厚とみられたが

110番通報を受け駆けつけた警察は、1階の寝室のベッドの下に義正さん、ベッドの上ではえつ子さんが布団をかけた状態で死亡しており、その傍に床の間に飾ってあった象牙(重さ5キロ強、長さ70~80センチ、直径約8センチ)が血のついた状態で落ちているのを確認。2人ともパジャマ姿だったことから寝込みを襲われたものと推定された。

また、風呂場の窓ガラスが「突き破り」という手口で割られていたことが判明したが、もう一つ鍵がかかっていたため失敗したとみられ、最終的に「戸外し」という手口で窓枠を外し土足で侵入していた。こうしたことから、盗みのプロによる犯行の可能性が高いと推定された。
実際、室内は荒らされており、金庫を開けようとして失敗している形跡もあった(犯人が手袋をしていた可能性が高く指紋は検出されていない)。
不可解なのは寝室にあった現金100万円の札束が手つかずのまま残っていたことだ。これが室内のどこに置かれていたのかは明らかになっていないものの、金目当ての犯行なら現金が盗まれていないのはいかにも不自然である。
その後の調べで、被害者夫婦は事件前日の9日の21時前、藤井さん宅の近くで行われていた町の会合に参加し、2人揃って帰る姿が目撃されていたこと、事件当日の午前10時頃に信用金庫の職員が訪ねたものの応答がなかったことが判明。

事件数日前には裏門が開けられる被害

また事件の数日前、何者かによって藤井さん宅の裏門が開けられるという被害があったこともわかった。裏門は防犯のためしっかり施錠していたが、それが破られ敷地内に侵入された形跡があったものの盗難などの被害はなかった。そのため、警察への届出はなされなかった。
こうしたことから本事件は強盗殺人として捜査が進められたが、前記のように100万円が手つかずの状態で残っていたことにより、普段から藤井さん夫婦に恨みを持つ顔見知りによる怨恨が動機だった疑いも浮上。
その一方で、凶器が室内に置かれていた象牙だったため、犯人があらかじめ凶器を持たずに屋内に侵入した可能性もあり、それが事実なら怨恨ではなくやはり物盗りの線も否定できない。
果たして藤井さん夫婦を殺害したのは誰か。
何が犯行の動機だったのか。
遺族は300万円の私的懸賞金を設け、現在も事件解決に繋がる有力な情報を求めている。


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