今年も、早くも「福袋商戦」が始まっている。
近年は、百貨店やショッピングモールだけでなく、アパレルECサイトや家電量販店、飲食チェーンまで、さまざまな業種がオリジナル福袋を企画。

中身が事前に公開された「ネタバレ福袋」や、予約抽選制の「プレミアム福袋」、サブスク形式で数か月分のサービスがセットになったタイプなど、その形も多様だ。
一方で、ネット販売が広がったことで、届くまで現物を確認できないケースも増え、「写真や説明文のイメージと違った」「サイズが合わない」「期待していたものが手に入らなかった」といった不満の声も近年、SNS上で見受けられる。
福袋は数千円から数万円という決して安くない買い物だ。中身にがっかりしたときに、「まあ福袋だし仕方ないか」と自分を納得させて終わらせてしまう人もいれば、「これはさすがにおかしい」とモヤモヤを抱え続ける人もいるはずだ。
購入者としては、「ハズレを引いた」と割り切って良いラインと、「これは法律的にも問題がある」と言えるラインの違いを知っておきたいところ。
では、その境界線はどこにあるのか。消費者被害に詳しい海嶋文章弁護士に、具体的なケースをもとに解説してもらった。

【ケース①】不良品が入っていた場合

最も明確に返品・返金を求められるのが、汚れや破損がある不良品が入っていたケースだ。海嶋弁護士は次のように解説する。
「福袋であっても『通常の使用に耐え得る品質』の物が入っていることが前提になっています。
福袋は、その性質上、必ずしも購入者が欲しいと考える特定の物が入っているとは限りません。ですが、汚れた商品や破損した商品が入っていた場合、返品や返金を求めることが可能です。
法律上の根拠としては、契約不適合責任(民法565条)による契約の解除や、詐欺による取消し(民法96条1項)が挙げられます」
つまり、福袋であっても、袖が破れているコートや、ファスナーが壊れているバッグなど、「そもそも使えないレベル」の商品が紛れ込んでいれば、前提条件を満たしておらず、法的にも問題となり得る。

【ケース②】広告と明らかに違う場合

「アウター入りと書いてあったのに夏物のTシャツばかり」
「『13~17点入り』と謳っていたのに実際は5~8点しか入っていない」
こうした広告表示と実際の中身が食い違うケースも、返品・返金を求めることができる。
「『アウターが入っている』『13~17点入っている』という記載は、特定の商品を保証するものではありませんが、売買の前提条件になります。
そのため、もし福袋の中身が前提条件を充たしていない場合は、上述した福袋と同様、返品や返金を求めることが可能です」(海嶋弁護士)

【ケース③】「中身が昨年と同じ」「気に入らない商品が入っていた」場合

一方、返品・返金が法的に認められにくいのが「昨年買った福袋と今年の中身が全く同じだった」「デザインが気に入らない」といった主観的な不満だ。
とくにアパレル系の福袋では、サイズや色、デザインの好みが分かれやすく、「自分には似合わなかった」「手持ちの服と合わせづらい」といった不満が生じやすい。
だが、福袋には本来、「開けてみるまで分からない」というある種の“ギャンブル性”がある。
「『昨年と中身が同じだった』『内容が気に入らない』というだけでは、購入者が欲しいと考える特定の物が入っていなかったにすぎません。
ですから、返品や返金を求めることは困難と言えるでしょう」(海嶋弁護士)

思わぬ落とし穴に注意

なお、上述した返品や返金の対象となりうるケース(不良品が入っていた、広告と明らかに違う中身だった)でも注意が必要だ。
「福袋が『返品・返金不可』と明記したうえで販売されていた場合、たとえ問題のある中身だったとしても、消費者が販売者に対し、法律的に対応していくことは困難と考えざるを得ません」(同前)
福袋は新年の楽しみのひとつだが、思わぬ落とし穴がある。購入前には「中身の公開の有無」「点数や内容の条件」「返品・交換のルール」をよく確認し、それでも購入するかどうかを冷静に判断したい。
法律上、泣き寝入りしなくてよいケースもあれば、「ハズレを引いた」と割り切るしかないケースもある――。その線引きを知っておくことが、福袋を賢く楽しむ第一歩と言えるだろう。


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