「手形払い」が禁止、“価格協議の拒否”もNGに… 元旦から施行「改正下請法(取適法)」のポイントを解説
1月1日、「下請法」が改正され、名称も「取適法」に変わって新たに施行された。
これまで下請法の適用外だった企業にも適用範囲が拡大され、発注側の企業には一方的な代金決定や手形払いが禁止されるなど、取引慣行の見直しを迫る改正だ。

​「特定運送委託」の取引も規制の対象に

改正により、従来の「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に名称変更された(略称:中小受託取引適正化法、通称「取適法」)。
労務費や原材料費などのコストが急激に上昇しているなか、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させることを目的とする改正だ。
また、従来、「下請」という言葉は委託側と受託側の上下関係を連想させる側面がある、と指摘されてきた。
改正に伴い、従来の「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」、「下請代金」は「製造委託等代金」と、法律上の用語も変更される。
また、法律の適用対象となる取引には、これまでの​製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、新たに「特定運送委託」が追加された(取適法2条5・6項)。
特定運送委託とは、発荷主(メーカー、卸売業者など)が、自らが販売・製造する物品を買い手や次工程の事業者のもとへ届けるため、運送事業者に運送業務を委託する取引。
改正前は、元請運送事業者から下請運送事業者への「再委託」のみが対象だったところ、改正により、発荷主から運送事業者への「直接の委託」も新たに対象に追加された。
これまでは独占禁止法により規制されていたが、無償で荷役・荷待ちをさせられている問題などを受け、取適法の対象に追加されることになった。
さらに取引業者に関しても、これまでの「資本金基準」に加え、「従業員数による基準」が新たに追加される。委託事業者・中小受託事業者は、資本金基準または従業員基準のどちらかを満たす場合には、取適法の適用対象となる(2条8・9項)。
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取適法の適用基準(政府広報オンラインから転載)

新たに追加された義務・禁止行為は?

取適法は、委託事業者に対して中小受託事業者との取引における適正な対応を求めるため、具体的な義務と禁止行為を定めている。違反した場合には勧告・指導のほか、50万円以下の罰金が科されることもある。
委託事業者が守るべき義務は以下の4点。

1:発注内容などの明示(4条)
2:取引記録の作成・保存(7条)
3:支払期日の設定(3条)
4:遅延利息の支払い(6条)
このうち「発注内容などの明示」に関しては、これまで電子メールなどによる明示には中小受託事業者からの承諾が必須だったところ、法改正により、承諾がなくても可能になった。
また「遅延利息の支払い」に関しては、これまでは「支払期日までに代金を支払わなかった場合」にのみ課されていたところ、法改正により、「正当な理由なく支払代金を減額した場合」にも支払い義務を課されることになった(6条2項)。
禁止行為は以下の11(いずれも5条)。
1:受領拒否
2:製造委託等代金の支払遅延
3:製造委託等代金の減額
4:返品
5:買いたたき
6:購入・利用の強制
7:報復措置
8:有償支給原材料などの対価の早期決済
9:不当な経済上の利益の提供要請
10:不当な給付内容の変更・やり直し
11:協議に応じない一方的な代金決定
このうち「協議に応じない一方的な代金決定」は改正によって新たに追加された禁止行為(5条2項4号)。
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、委託事業者が協議に応じなかったり必要な説明を行わなかったりして、一方的に代金を決定することは認められない。
また「製造委託等代金の支払遅延」に関しては、手形の交付等、中小受託事業者が支払期日までに代金に相当する金銭を得ることができない方法での支払は、改正により完全禁止された(5条1項2号)。発注者は現金、銀行振込、電子記録債権などへの支払方法に切り替える必要がある。
さらに電子記録債権や一括決済方式については、以下の両方を満たす場合のみ認められる。
  • サイト(交付から支払期日までの期間)が60日以内
  • 中小受託事業者が支払期日時点で、手数料などを含む満額を得ることができるもの
「手形払い」が禁止、“価格協議の拒否”もNGに… 元旦から施行「改正下請法(取適法)」のポイントを解説

手形払等禁止の例示(政府広報オンラインから転載)

そして「報復措置」に関しては、従来、公正取引委員会や中小企業庁への申告に対する報復のみが禁止されていたところ、改正により事業所管省庁への申告に対する報復も禁止対象に拡張された(5条1項7号)。
「手形払い」が禁止、“価格協議の拒否”もNGに… 元旦から施行「改正下請法(取適法)」のポイントを解説

「報復措置」に対する禁止も拡大(政府広報オンラインから転載)

また法改正により、勧告前に既に違反行為が是正されていた場合でも公正取引委員会は再発防止策を勧告できるようになり、禁止行為に対する制裁が強化された(10条2項)。
公正取引委員会は取適法に関する窓口を設けているので、委託事業者による取適法違反が疑われる場合、中小受託事業者は相談・通報が可能だ。また委託事業者の側も、取引にあたって疑問点などがあれば相談することができる。



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