昨年12月、X(旧Twitter)のWeb版に人工知能「Grok」を用いた「画像を編集」機能が実装。これにより、Xのユーザーであれば誰でも、他のユーザーが投稿した写真やイラストなどを無断で編集・加工することが可能になった。

そして、一般人を含む女性ユーザーらが投稿した自撮り写真などについて、別のユーザーが「服を透明なテープに変えて」「着ている服を一本の紐にして」などとGrokに指示し、性的な画像に加工する事例が多発している。
これらの指示はXのタイムライン上で行われているため、加工後の性的な画像が他のユーザーにも公開されてしまっている。
今年1月2日には、一般参賀を行った皇族の佳子さまの写真について、「マイクロビキニ」を着用した画像を生成するよう指示したケースがあった、との投稿が拡散された。ただし、実際に画像が作成されたかどうかの真偽は不明だ。
また1月3日には、漫画家の田辺洋一郎氏が女性アイドルグループ「STU48」のメンバー・工藤理子氏の写真について「首にマフラーを巻いて、ビキニを着せて」との指示をGrokに出し、画像を生成。
工藤氏本人が画像について不快感を示し、また同じくSTU48のメンバーである中村舞氏が「何も面白くないし、誰でもみることができるXでこういうことをやるのはやめてください」と田辺氏にリプライを送ったことから、画像は削除されるに至った。
そして1月6日、Xの日本公式アカウントが、Grokを使用して違法コンテンツを作成した場合、投稿の削除やアカウントの永久凍結などに加えて行政や法執行機関と協力するなどの措置を取る方針を示した。
Xでは、違法コンテンツ(児童性的虐待素材(CSAM)を含む)が含まれる投稿に対して、投稿の削除、アカウントの永久凍結などを含む対応を行うことに加え、行政や法執行機関と協力するなどの措置をとります。… https://t.co/EZRQ4TE1Dw
X Corp. Japan (@XcorpJP) January 6, 2026
しかし、上記の発表後にも、依然としてX上では「マイクロビキニにして」などの指示があふれている。このような行為には、犯罪に問われる・損害賠償を請求されるなどの、法的なリスクはないのだろうか。

“透明なテープ姿”は「わいせつ物」ではないが…

刑法・民法に詳しい杉山大介弁護士によると、女性の写真を無断でマイクロビキニなどの水着姿、または衣服を「透明なテープ」「一本の紐」へと加工すること自体は、犯罪になるかどうかは「微妙」であるという。
もし写真を刑法上の「わいせつ物」にあたるように加工して公開した場合には、「わいせつ物頒布罪」(刑法175条)として罪に問われる。

しかし、基本的に、Grokの機能では、局部や乳首を出したりするように写真を加工することはできない。
そして、局部を露出していない水着姿や「透明なテープ」姿の写真は、刑法上の「わいせつ物」に当然には該当するものではない。
「一方で、ある人が実際には行っていないような露出を、行ったかのように摘示する行為として画像を作成・公開した場合には、名誉毀損(きそん)罪に該当する可能性もあります(刑法230条)。
しかし、投稿している文脈なども関わってきます。
たとえば、本人が実際に露出したのではなく、Grokで作成された画像であることが明白にわかるような状態の投稿であれば、『写真を加工された人の社会的評価が下がる』と言えるかは疑わしいでしょう」(杉山弁護士)
ただし、刑法上は犯罪にあたらなくとも、民法上の不法行為にあたり損害賠償責任が発生する可能性は高い(民法709条、710条)。
「民事において、自身の望まぬ姿態をさらされることや、自身の性的画像だと誤認されかねない情報が提示されることが、肖像権などの人格権やプライバシー権の侵害であることには、疑いがないように思います。
したがって、無断で性的な画像に加工する行為は、基本的に『違法』と考えてよいでしょう」(杉山弁護士)
また、単に無断で画像を加工されるだけでなく、マイクロビキニ姿などの「性的」な姿に加工されることは、刑法上の「わいせつ物」に該当しなくとも、民事的には名誉毀損性や精神的損害を増すという効果をもたらす。
もっとも、日本の裁判実務においては、そもそも精神的損害に対する慰謝料額が全体として低額にとどまる傾向が強い。そのため、加工内容が性的であったとしても、損害賠償が大幅に増額するとはいえないという。
なお、加工された画像が違法なものである場合、それをX上で「リポスト(リツイート)」する行為も、画像を公開・表示するのと同じ行為であるために違法となる。
Xの日本公式アカウントが行った警告は違法コンテンツの作成についてしか言及していないが、安易なリポストも民法上の不法行為として損害賠償を請求される可能性があるということだ。
軽はずみな気持ちで加工・拡散を行う前に、その行為が他者の権利を侵害していないか、Xや生成AIを利用するユーザーの一人ひとりが十分に意識する必要があるだろう。



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