ざっと挙げてみると、12月23日に俳優の波瑠と高杉真宙、12月28日に堂本光一と元タレントの一般人女性、元旦には、前述の長澤まさみのほか俳優の本郷奏多と一般人女性、女優の南沢奈央とタップダンサーの安達雄基の結婚がそれぞれ自身のSNSや所属事務所の公式サイトで発表された。
さらに8日には、元SKE48の松井珠理奈とBOYS AND MENの辻本達規が結婚会見を開いたが、こちらは、元旦にスポニチがスクープしていた。
そんな中、注目を集めたのは、長澤まさみの結婚発表後、所属事務所が4日に一部メディアの取材姿勢に対して出した、異例の注意喚起声明だった。
声明では、過度な取材行為によって「精神的負担と恐怖を感じる事態となっている」として、プライバシー侵害に該当する可能性を示唆。場合によっては法的措置も検討する、という強いトーンがにじんでいた。(ライター・中原慶一)(ライター・中原慶一)
「記者会見で発表」も今は昔…
なぜ、年末年始に結婚発表や報道が相次ぐのか。スポーツ紙芸能記者はその背景についてこう話す。「昨今の芸能人の結婚は、記者会見で発表されることはほとんどなくなり、本人のSNSか所属事務所の公式サイトなどで最初に発信することが主流。かつてとはすっかり様変わりしました。
発表直後に懇意にしていたメディアが最速で報道できるように、情報を内々で伝えている場合もあります。『何時に発表しますから、書くのは○時以降にしてください』と芸能事務所と芸能メディアが調整するやり方です。
以前は主にスポーツ新聞やテレビがそういう役割を担っていました。しかしそうした関係を持たないメディアにとっては、この手の発表は、“発表モノ”と呼ばれ、第一報を受け、初めてその事実を知り、ウラ取りや+αの周辺取材などをした上で、後追い報道をすることになる。
昨今の結婚報道は、週刊誌メディアやWEBメディア、夕刊紙などだけでなく、テレビや新聞などもすっかりそういう報道の仕方になりつつなります」
かつては芸能人の熱愛や結婚に関するスクープは、元日のスポーツ新聞の花形だったが、今やそちらも様相は変わっている。
「必ずしも1面トップがそうした“花形”ニュースではなくなっています。今年も前出のスポニチの松井珠理奈のスクープに加え、剛力彩芽と丘山晴己、そして柏木由紀とお笑い芸人のすがちゃん最高No.1が〈結婚へ〉と書いたサンスポなどもありましたが、実際、大きな話題になったのは、圧倒的に長澤まさみの方でした。
しかも、『紙』でのスクープは年々意味をなさなくなっている。芸能の記者会見などに行っても、どこのWEBメディアがそれを一番に配信できるかが最も重要になっており、WEBメディアの中には、一番に出せた場合に記者にインセンティブを払っているところもあります」(前同)
メディアとの芸能人側との“緊張関係”
一方で、こうした報道の裏では、当事者や所属事務所との間で、常に緊張感が走っているのも事実だ。たとえば、長澤まさみの結婚報道に関して注目を集めたのは、結婚そのものよりも、結婚発表後の所属事務所による冒頭の注意喚起声明だった。
前出のスポーツ紙芸能記者はその背景についてこう語る。
「長澤の結婚発表を最速で報じたのは、一部のスポーツ紙のみで、ほとんどの芸能マスコミにとっては、寝耳に水でノーマークだった。それで各社が一斉に関係者に電話したり、長澤の親族をあたったり、動きはじめました」(前同)
また、ある芸能関係者もこう語る。
「今は、交際段階でも、オートロックのマンションの別の部屋に住んでカムフラージュする、地下の駐車場からしか出入りしないなど、芸能人側も最新の注意を払っています。
しかし今回の長澤の件では、実家周辺での張り込みや、関係者への執拗な接触が正月早々、エスカレートしていたようです。事務所としては、“ここで一線を引く”というメッセージを出さざるを得なかったのではないか」
年末年始に発表することの“メリット”
実は、年末年始に結婚発表ないし報道が集中するのには、業界なりの事情もある。「年末年始休みで世間の空気が緩む時期に発表した方が、祝福ムードになりやすいし、仕事への影響も最小限に抑えられる。
なお、かつては、年末年始に発表することは、週刊誌が発売されない時期なので、後追い報道を抑えられるというメリットもありました。
さらに、近年はSNSの存在が決定的に大きくなっているという。本人や事務所が正式発表する前に、匂わせ投稿や関係者の書き込みが拡散し、マスコミがそれを受けて後追いを強いられるケースも増えているというのだ。
「昔なら水面下で調整できた話が、今は一瞬で拡散する。スクープ競争が激化し、取材が過熱しやすい土壌がある」(前出のスポーツ紙芸能記者)
そうした中、“どこまでが許される取材なのか”という線引きは、年々曖昧になっているようだ。
行き過ぎた取材行為が抱える“法的リスク”
違法行為や事件など公共的な事柄ならいざ知らず、芸能人の結婚や離婚は、社会的関心は高いと言えるが、プライベートな事柄であることは確かに否定できない。そうした中、自宅前での張り込み、家族や近隣住民への取材、移動中の追跡――かつては黙認されていた取材行為自体も、今では批判の対象となる。では、行き過ぎた取材行為に対して、実際にはどのような法的措置が考えられるのか。ある法律事務所関係者はこう解説する。
「自宅周辺での常態的な張り込みや、拒否の意思を示しているにもかかわらず取材を続けた場合、プライバシー侵害や人格権侵害等の不法行為が成立する可能性はあります。悪質なケースでは、軽犯罪法、都道府県の迷惑防止条例、刑法の適用が問題になることもあり得るでしょう」
さらに、損害賠償請求だけでなく、接近禁止などの仮処分を求めるケースも想定されるという。
「最近は裁判所も“表現の自由”一辺倒ではなくなってきているため、精神的苦痛等の損害が具体的に立証されれば、メディア側が不利になる場面は増えてくる可能性があります」
岐路に立つ芸能界とメディアの“関係”のあり方
そんな中、業界内で評価が高かったのは、元SKE48の松田珠理奈の結婚会見だ。1日のスポニチのスクープの後、8日に、本人が公の場で丁寧に報告し、質問に対し誠実に答えたことだった。マスコミ側からも「非常にやりやすかった」「後味が良かった」という声が多く聞かれた。「本人発信で筋を通してもらえると、無理な取材をする必要がなくなる。この手の会見は、2019年5月の南海キャンディーズの山里亮太と女優の蒼井優、2023年6月のタレントの足立梨花とHANDSIGNのTATSU以来だと思う。
こういう対応がなされれば、芸能マスコミや記者との関係も円滑になり、その後の仕事にとってもプラスにつながることがあると思います」(前出の週刊誌記者)
芸能人にとって、結婚や離婚はあくまでも私事であり、プライバシーや日常生活の平穏は尊重されてしかるべきである。しかし他方で、私事とはいえ、みずからの商品価値とも結びつく微妙なテーマであり、一定の社会的注目を受け、取材・報道の対象となることは避けられない。
その境界線をどこに引くのか――年末年始のお祝いムードの裏で、芸能界と芸能メディアの関係は、まさに岐路に立たされていると言ってよさそうだ。
■ 中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。

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