X(旧Twitter)で、新党「中道改革連合」のロゴについて、同ロゴを改変して作られた、実際には存在しない「中国の『中革連』」という団体のロゴと並べて示し「ほぼ同じ」「そっくり」などと投稿したものが拡散されている。一連の投稿・拡散を行った者の中には、政治家・インフルエンサーもいる。

折しも高市早苗内閣による衆議院解散が想定され、選挙戦に突入する前であり、一部に根強い中国への反感に乗じ、マイナスの印象を流布する効果が考えられる。
これに対し、中道改革連合のX公式アカウントは、「中道改革連合のロゴを悪意をもって改変・使用し、中道改革連合と関係があるかのような虚偽の示唆を行う投稿」であり、「法的措置を含め、厳正に対応いたします」との注意喚起を行った。
中国の架空の団体との関連性を想起させるような投稿を行った者、リポストにより拡散した者などの法的責任はどうなるのか。表現の自由やメディアの問題に詳しい杉山大介弁護士に聞いた。

投稿をした者の法的責任は?

「中国の中革連とほぼ同じロゴなのはなぜ?」(1月20日、埼玉県戸田市議・河合ゆうすけ氏 ※現在は削除)、「ホントにそっくり」など、一連の投稿は、中道改革連合のロゴと架空の「中国の『中革連』」のロゴとの類似性を指摘するものである。このような行為について、民事・刑事の名誉毀損は成立し得るか。
ただ図柄の類似性を指摘しているにとどまるとも思えるが、杉山弁護士は、このような投稿にも名誉毀損性が認められると説明する。
杉山弁護士:「中道改革連合が、あたかも中国の利益のために活動する政治勢力であるかのように印象付けようとする投稿なので、同党の社会的評価を低下させる要素があります。
そして、それを『中国の中革連』が実在するとの虚偽の事実を摘示して行うことには、名誉毀損性が認められます。
しかも、『中国の中革連』の存在が虚偽であることは、少し調べれば簡単に分かります。そうであるにもかかわらず、調べずに具体的な記載をすれば、違法と評価される余地は高まります」
また、インフルエンサーがポストしたことに起因して広く拡散した場合には、影響力のない一般人よりも責任が重くなりうると指摘する。
杉山弁護士:「違法性の程度に関しては、虚偽の事実がどれだけその行為者によって拡散されたかによって決まります。
政治家やインフルエンサーなど、拡散力の高い人であればあるほど、違法と評価された場合の責任は重くなります」

リポスト等により拡散した者も責任を問われる

インフルエンサー等による元の投稿をリポスト、あるいは引用リポストにより拡散した者については、どのような法的責任が問われるか。
杉山弁護士:「元の投稿と同様の違法性が認められ、名誉毀損として民事・刑事の法的責任が問われます。

リポストは 元の投稿をそのまま他人に表示する行為なので、元の投稿に違法性があれば、リポストも違法性を帯びます。
引用については、その方法にもよりますが、そのまま同じ内容を伝え、あるいは同調する趣旨であれば、元の投稿と同様の評価になります」
これに対し、元々のロゴを作成した者については、作成した事実だけでは法的責任を問われることはないという。
杉山弁護士:「名誉毀損かどうかは、あくまでも虚偽の事実によって社会的評価が害されたことについて判断されるものです。したがって、法的責任は、基本的には投稿を行った者、リポストした者について問題となります。
元のロゴを作成しただけでは、法的責任を問われることはありません。ただし、現在のような形で外部に拡散されることまで予見して作成物を誰かに交付したというのであれば、理論上、法的責任は生じ得ます」

法的責任の追及が「現実には困難」という問題

とはいえ、インターネット上での投稿やリポスト等による名誉毀損は、加害者が不特定かつ多数に及び、かつ、発信者情報開示請求の手続を利用しても特定に時間がかかるうえ、差止めもすぐには困難である。しかも、得られる賠償金等の額も大きくはない。
とりわけ、選挙直前から選挙期間中という限られた期間に、デマの拡散を抑制し、実効性のある法的措置をとることは至難の業といわざるを得ない。
杉山弁護士は、現在の名誉毀損の法的枠組みでは処理の限界を超えており、新たな法的枠組みの構築が急がれると説明する。
杉山弁護士:「選挙前の時期はやるべきことが多いので、虚偽の情報を流布された陣営も十分に対応できず、違法性が認められても、法的責任が追及されないままになってしまうこともあります。
また、訴訟を起こすなど被害者側がコストを割いて動かなければ、違法性の判断すらされないのが現状です。投稿者が誰かもわからない状態では、警察も基本的に動きません。

特に、選挙に絡んで政治的目的をもって、あるいはビュー数稼ぎで収益を得る目的をもってデマを投稿する『プロデマ』ともいうべきものについては、一般的な名誉毀損の法理ではまったく対応できておらず、生じる加害に対し、行為者が受ける制裁はささやかなものです。
もっと危険で有害なものとして取り扱わなければ、今の社会を支えている民主主義や表現の自由といったシステムの前提が崩壊してしまいます」
ただし、その枠組みの制度設計にあたっては、公権力による濫用の危険にも留意しなければならないと指摘し、枠組みのあり方を提案する。
杉山弁護士:「まず、第一段階として、被害者が違法性の立証の負担と責任を負うこととします。
次に第二段階として、それが特定のカテゴリの悪質な類型にあたっていた場合は、現在の民法の枠組みで導かれるよりも数段高額な賠償が認められるようにするという制度設計が望ましいと、私は考えています。
侮辱罪の厳罰化のような、結局ほとんど執行されない刑法の効果を少し強めて満足するのではなく、もっと抜本的に、損害賠償制度を見直すことを求めたいです」


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