年末年始といえば、芸能界は“結婚ラッシュ”。今年も大物女優や人気タレントの結婚報告が相次ぎ、スポーツ紙もワイドショーも華やかな話題で埋め尽くされた。

そんなお祝いムードの裏で、元旦に、双方のSNS(X)で、ひっそりと公表されていたのが、タレントの吉岡美穂とミュージシャンのIZAMの離婚だ(敬称略、以下同)。

2人は2006年に結婚。4人の子どもを育ててきた“子だくさん芸能人夫婦”。
離婚について発表された文面では「前向きな話し合いの末」「それぞれの道を尊重する」という、いわゆる「円満離婚」を強調する内容だったが、世間の関心は意外な方向へと向かっていった。
SNS上で、吉岡の過去の発言が掘り起こされ「本当に円満離婚なのか」「過去の発言を見ると違和感がある」といった声があがったのだ。(ライター・中原慶一)

「短すぎる」娘のスカートをゴミ箱へ

注目されたのは、吉岡がこれまでテレビ番組などで語ってきた結婚生活のエピソード。いずれも当時は、笑い話や夫婦あるあるの類として紹介されていたが、現在の価値観で見直すと、受け止め方が変わるという指摘が相次いだ。
代表的なのが、服装への強い口出し発言。
吉岡は過去に、「結婚当初は私の洋服にすごく意識が向いていて、胸元が空いているのを嫌がったり、白いスカートは透けるからダメだったり」と語っていた。
夫として、人気グラビアアイドルだった吉岡への“心配”とも受け取れる一方、今の感覚としては、着るものを細かく制限されることに違和感を覚えた人も少なくない。
さらに波紋を呼んだのが、吉岡が2024年に出演した番組で語った、子どもの服をめぐるエピソード。長女が欲しがって購入したスカートを見たIZAMが、「なにこれ? 短すぎるよ」と言い、そのままゴミ箱に捨ててしまったというのだ。
吉岡自身は当時「娘も分かっていて、短いスカート選ばないので、もめることはないんですけど、子どもは本当は嫌がってる。
でも、パパ(IZAM)の前でそんなことを言うと怒っちゃって怒っちゃってしょうがないんで、我慢してます」と苦笑いしながら語っていたが、ネット上では「教育方針の違いを超えている」「モラハラではないか」といった声が噴出してしまった。

千秋、SHELLYも「委縮していた」「コントロールされている感覚」

実は、こうしたケースは吉岡・IZAM夫妻に限った話ではない。芸能界ではこれまで、女性芸能人がテレビや雑誌で、夫のその手の言動を冗談交じりに語る場面がたびたび見られてきた。
一例を挙げると、タレントの藤本美貴は、バラエティ番組で夫・庄司智春の“過度な嫉妬や束縛”を大いに「笑い」に変えて話している。
おしどり夫婦として知られる2人だが、外出時の服装チェックや、行動を逐一確認されるエピソードは、夫婦円満アピールであると同時に、状況によっては「アウトでは?」という見方もできる。
また、タレントの千秋も、2007年にココリコの遠藤章造と結婚し、その後離婚しているが、後年、当時の結婚生活について雑誌のインタビューやテレビ番組で、「怒鳴られることが日常だった」「萎縮していた」と明かしている。
当時は“気の強い夫婦ゲンカ”として消費されていた話だが、離婚後に改めて聞くと、なかなか精神的圧力を感じさせる内容だった。
さらに、モデル・タレントのSHELLYも、かつての自身の離婚経験を通じて、元夫との関係について、「コントロールされている感覚」「自分の意見が通らない苦しさ」を赤裸々に語り、モラハラへの社会的理解を促す発信を行い、話題となったことがある。
これらに共通するのは、芸能人特有のエピソードトークのひとつとして、結婚中は“笑い話”や“愛情表現”として処理されていた言動が、関係の終焉とともに別の意味を帯びて見えてくるという点だ。

モラハラは離婚理由として認められる?

では、一般論として「モラハラ」は法的に離婚理由として認められるのか。
離婚・男女問題に多く対応してきた曽我宣明弁護士は、「モラハラ(言葉や態度によって行われる精神的な暴力)は離婚事由に当たり得ます」とした上で、こう話す。
「モラハラには、夫婦げんかの域を出ないと評価されるものから、精神的支配下に置いていて、およそ婚姻関係を継続することは困難であるというものまで、いろいろな種類のものがあります。
そのため、モラハラを理由に離婚するためには、当該モラハラによって、婚姻関係を継続しがたい重大な事由(民法770条5号・令和8年4月1日以降は同法770条4号)が認められる必要があります」
それでは、具体的に裁判所に「婚姻関係を継続しがたい」と認められやすい言動はあるのだろうか。
「やはりもっとも典型的なものは、『誰の金で生活ができていると思っているのか! お前なんか何の役にも立っていない』というような表現で、相手を“口撃”することでしょう。
こういった発言はモラハラであると裁判所も認定しやすいように思います。
ただし、被害者単独の供述だけでは証拠が足りず、モラハラが認められにくいという点が、この問題特有の課題だと思います」
曽我弁護士によれば、実際に被害を受けている人でも、自分がモラハラ被害を受けているという認識を欠いていることも多いといい、「配偶者と話していると精神的につらくなる」と感じた時は、近しい友人や親族の数名に相談してみると良いと話す。
ただ一方で、モラハラ加害者は、被害者と家族や友達とのつながりを切ろうとするケースも多く、もし、配偶者から、家族や友達に合理的な理由なく連絡を取るなと言われた場合などには、勇気を持って、役所の相談窓口や弁護士に相談をしてみて欲しいという。
さらに、身体的な暴力などと比べて証拠が残りにくいモラハラ。証拠を集める有効な方法として曽我弁護士はこうアドバイスする。
「モラハラを理由として離婚したいということであれば、相手方の発言を録音しておくことが有力な手立てとなります。普段からモラハラに悩まされている場合には、自宅内での発言などを録音しておくとよいかもしれません。
録音ができないような場合でも、LINE等のSNSツールで連絡を受けた内容次第では証拠になり得ます。
また、ボールペンで手書きの日記をつけていただくということも証拠としては価値があると考えます。ボールペンで書かれた日記は、後に記載内容を変更できないので、本人が作成した物であっても一定の証拠としての価値が認められやすいです。
最後に、同居しているお子さんがいらっしゃる場合には、そのお子さんがモラハラについて供述をしてくれれば、それも一定証拠として認められる可能性があるでしょう」(曽我弁護士)

一方的な服装制限「モラハラに該当する可能性高い」

翻って、冒頭のIZAMと吉岡のケースについて。曽我弁護士に尋ねてみると、「報道されている発言からしか判断できないので、断言はできませんが」とした上で、こう話した。

「TPOに即していないなどの特異な服装や、善良な風俗を害するような服装であるということを除いては、どのような服装で生活を送るかは個々人の自由です。
そうであるにもかかわらず、配偶者や子どもの服装を制限し、制限を破ると不満を伝えるという行為は、モラハラに該当する可能性が高いと思います」
もちろん、IZAMと吉岡の離婚理由がモラハラによるものだったかどうかは、当事者にしか分からない。
だが、かつて吉岡が「我慢してます」と言いながら浮かべていた“苦笑い”は、現代社会における“モラハラ認識”を考える材料を提供しているといえるかもしれない。
■中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。


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