障害者支援を行う都内の任意団体が、実体のないオンライン研修会を名目に東京都の補助金を不正に受給した疑いがあるとして、行政の監視活動を行う「東京・市民オンブズマン」(事務局・東京都千代田区)が、都に対し同団体への返還請求を求める住民訴訟を提起。その第1回口頭弁論期日が1月21日、東京地裁で開かれた。

期日後の会見で、原告代理人の弁護士らは、多くの福祉団体が財政的困難の中で運営されている一方で、一部の団体が“抜け駆け的”に補助金を得ている不公平な事態を非難。そのうえで、実体を伴わない事業等への補助金給付が「氷山の一角」である可能性も示唆した。(ライター・榎園哲哉)

実施されていない研修会へ補助金が給付

問題となっているのは、都内で福祉・当事者支援活動を行う任意団体である。
この団体の代表を務める人物は、2022年11月から23年3月にかけて計5回、大学教授を講師に招きオンライン研修会を実施したとして、「東京ボランティア・市民活動センター(都社会福祉協議会(都社協)が運営)」を通じて、謝礼金名目で補助金計6万円を受給した。
しかし、実際には研修会は行われていなかった。講師として名前を使われた教授が、実施の覚えがないことから都側に情報開示請求を行ったことで発覚した。
この6万円については、都社協側が研修会の実体がなかったことを確認して、補助金交付を取り消し、すでに団体側に返還させている。
原告側によれば、この団体では、ほかにも実体のない研修会等を理由に補助金を受給していた可能性があるという。

「研修会は実際に開かれたのか」監査請求実施されず訴訟へ

この団体は、同様のオンライン研修会を22年3月、23年3月、同7月も実施したとして、講師への謝礼金名目で各回5万円ずつ計15万円の給付を受けていた。
「東京・市民オンブズマン」が3回の研修会・学習会で講師(非開示)を務めたと推認している別団体の代表X氏は、実施を裏付ける証拠を提出しないなど、説明責任を果たしていないという。
そのため「東京・市民オンブズマン」は昨年8月、研修会の実体および15万円の支出を対象に住民監査請求を行ったが、都はいずれの給付についても監査請求の期限となる1年が経過していることなどを理由に「監査を実施しない」旨を通知した。
これを受け、事務局長の谷合周三弁護士が原告となり、昨年10月24日、都知事を被告として、団体への返還請求を求める住民訴訟を起こした。
訴状では、補助金を仲介する都社協のような組織が補助金を利用する団体と個人的なつながりを持つ可能性にも触れ、「人的な癒着と忖度の実情の一端である可能性も高い」と指摘した。原告らは、今回の事例は不透明な公金支出の「氷山の一角」であると訴えている。

「金額はわずかだが、詐欺的な行為」

会見には、「東京・市民オンブズマン」事務局長で原告の谷合周三弁護士、原告代理人の佐々木信夫弁護士、精神医療などを専門とする長谷川利夫杏林大学教授の3人が出席した。
佐々木弁護士らは、「実体のない事業に対して、都民・国民の税金からなる貴重な公金を支出するべきではなく、ただちに15万円は返還されるべきである」と主張。
また、福祉活動の多くが利他的な努力によって支えられている中で、「一部の団体だけが不当に公金の支給を受けるのは、いかにも不公平である」と、補助金審査の透明化を求めた。
障害者支援にも関わる佐々木弁護士は「今回の件は、金額(15万円)こそわずかだが、公金を不正に受給していれば詐欺的な行為だ。障害者の福利を名目としていることは非常に罪深い」と語った。
裁判は今後、半年から1年程度続くと見られる。佐々木弁護士は「どこまで裁判所が実体審理を行い、事実関係を見てくれるか。それが争点になる」と述べた。
なお、オンライン研修会の実施の有無について、筆者は当該団体の代表者にコメントを求めているが、現時点では届いていない(1月22日18時現在)。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。
防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


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