自民党と日本維新の会の連立政権が打ち出したOTC類似薬への「特別料金」新設について、難病患者や全国保険医団体連合会(保団連)などが1月22日、都内で記者会見を開き、制度の問題点を指摘するとともに、「連立政権の信を問うというなら、この政策を総選挙の重大争点にすべきだ」と訴えた。
OTC類似薬とは、医療用医薬品のうち、市販されているOTC(一般用医薬品)と同じ有効成分や類似した効能を持つ薬のこと。

新制度は、77成分・約1100品目のOTC類似薬について、通常の自己負担に加え薬剤費の25%を「特別料金」として徴収するもの。
政府試算では約900億円の医療費削減となり、国民一人あたり年750円、月63円の保険料軽減につながるとされる。
一方、慢性疾患で継続的に薬剤を使用する患者や医師からは、受診控えによる重症化リスクや、負担増による生活への影響を懸念する声が上がっている。

77成分・1100品目が対象に

対象となるのは、ロキソニンなどの解熱鎮痛薬、アレグラ(フェキソフェナジン)などのアレルギー治療薬、ヒルドイドなどの保湿剤、各種ステロイド外用薬などで、日常診療で幅広く使われている。
前述の通り、新制度では、これら薬剤について患者が通常支払う自己負担(1~3割)に加え、薬剤費の25%を「特別料金」として追加徴収するとしている。

最大2兆円規模の議論も

この制度は、2025年10月に発足した自民・維新連立政権の合意書で浮上した。社会保障政策の筆頭として位置づけられ、約3か月間の両党協議を経て、同年12月19日に政調会長間で最終合意に至った。
保団連によれば、協議過程では「最大2兆円規模、対象薬剤2万品目、保険除外割合を1分の1」という案も検討されていたという。
最終的には77成分に絞られたものの、合意文書には「2027年度以降にその対象範囲を拡大していく」との方針を明記。将来的にはOTC医薬品に対応する症状の医療用医薬品約7000品目まで拡大する可能性も示されている。

「がんの見落としなどにつながる恐れ」

全国保険医団体連合会会長・竹田智雄氏は、制度導入による受診控えと自己判断でのOTC類似薬の長期使用がもたらす医学的リスクを具体例を挙げて説明した。
「市販されている胃薬やロキソニンなどの鎮痛剤をちょっとの間自己判断で服用する分にはいいかもしれないが、医者にかからず長期間自己判断で使用し続ければ、原因疾患を見落とし、重症化につながりかねない。
たとえば胃薬の場合、患者から胃が痛いといわれたら、医者ならまず胃がんの可能性を考慮します。その上で、しばらく薬を処方するなどして様子を見てから対応していきます。
ですが、市販の胃薬を長期間自己判断で飲み続けた場合、その時は胃の痛みは消えるかもしれませんが、ついに効かなくなり病院に行ったころには重大な疾病が進行していたということにつながりかねません」

「メインで使用している薬、すべて対象に」

この日会見に出席した難病患者の家族・大藤朋子氏は、魚鱗癬(ぎょりんせん※)という難病を抱える息子への影響について次のように述べた。
※皮膚の表面の角層が異常に厚く硬くなり、魚のうろこのように剥がれ落ちる疾患
「77成分が対象になった場合、息子がメインで使っている薬はすべて対象になります。
薬代以外にも診療代など負担はありますが、それでも息子は、この先もずっと難病と向き合いながら生きていかなければなりません」
また大藤氏は、配慮対象の設定についても疑問を呈した。
「国は特別料金の追加徴収を実施する人の範囲について、低所得者やすでに高額の医療費を負担している患者については、一定の配慮基準を設けるとしていますが、今の時点では配慮基準などは公表されていません。
そもそも、社会保障制度が『すべての人々の生活を生涯にわたって支えるもの』であるならば、配慮する人としない人の線引きは許されないのではないでしょうか」

対象拡大を警戒「とんでもない影響を及ぼしかねない」

保団連は今回の新制度導入による約900億円の医療費削減は「始まりに過ぎない」と警戒している。
「衆院選の結果、自民党と日本維新の会が過半数を獲得した場合、高市政権がOTC類似薬の保険給付のあり方について、国民の理解を得たと受け止め、その後もどんどん対象を拡大していく可能性があります。
ですが、金額負担が増えれば受診抑制につながりますので、新制度導入後の(インフルエンザ等の)感染症シーズンにはとんでもない影響を及ぼしかねません」(保団連・本並省吾事務局次長)


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