日本最大の労働組合組織・日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長は1月23日、東京都内で開かれた内外情勢調査会で講演。
2026年春季生活闘争(春闘)において「賃上げノルム(社会規範)の確立ができるかどうか正念場だ」と強調した。
全体で5%以上、中小企業で6%以上、パート・派遣等で7%以上という「5・6・7」の数値目標を掲げ、3年連続での高水準の賃上げ達成に強い意欲を見せた。
また、同日に衆議院が解散され、短期の選挙戦が始まる中、連合の選挙スタンスについても明確な立場を示した。

デフレマインド完全脱却へ正念場

連合は2022年から「未来づくり春闘」をスタートさせ、2024年、2025年と2年連続で5%台の賃上げを実現してきた。
しかし芳野会長は「依然として課題が残っている」と指摘。「『自分の賃金がこれからも上がるんだ』という賃上げノルム確立を目指していく」として次のように続けた。
「賃上げの裾野は着実に広がってきたと考えられる一方、実質賃金の低下、賃上げの格差、労働組合のない企業への波及など課題も残っています。
物価上昇に直面して、ようやく少しずつ薄れてはきているものの、物価も賃金も上がらない時期のデフレマインドがまだ私たちの中に残っています。
今年はデフレマインドから完全に脱却することができるかどうかの正念場であり、賃上げのノルムの確立、格差是正と分配構造の転換、仲間づくりの3つの基本スタンスで春闘に取り組むとともに、政労使の三者がそれぞれの役割を果たすことによって、2026年度には実質経済成長率1%、物価2%、実質賃金1%上昇を実現したいです」

いまだにコスト削減が評価される傾向が強い

今回の春闘で連合が特に重視するのが、中小企業を含めた賃上げの裾野拡大だ。2025年春闘では5%以上の賃上げを獲得した組合が43%と過半数に届かず、大企業と中小企業の格差が依然として課題となっている。
芳野会長は「賃上げ原資を確保するには、サプライチェーン全体での適正な価格転嫁が不可欠だ」と強調。以下のようにコメントし、企業間の分配構造見直しを求めた。
「賃上げには当然ながらその原資が必要です。 特に中小企業においては、サプライチェーンの中できちんと価格転嫁が行われなければ原資を確保することができません。
大手企業のトップには価格転嫁の必要性が浸透しつつありますが、現場の購買調達担当者レベルでは、いまだにコスト削減が評価される傾向が強く、価格転嫁がネックになっているのではないでしょうか」(芳野会長)
また「良いモノ、良いサービスには相応の値がつく。
送料無料のネット販売などで安さにこだわれば、どこかの誰かの賃金が低く抑えられるかもしれない。私たちの社会はつながっており、最終的には自分や家族の賃金に影響しかねない」と、消費者側の意識転換の必要性にも言及した。
加えて、講演では労働組合の有無による賃上げ格差にも言及。
厚生労働省の調査では、労働組合がある企業とない企業で約1ポイントの賃上げ率の差が見られるといい「労使交渉の機会が保障されている労働組合ならではの強み」として、組合組織化の推進にも意欲を示した。

衆院選への対応「春闘優先、野党の立場堅持」

会見と同日に衆議院が解散され、超短期決戦の選挙戦が始まった。高市早苗首相率いる自民党に対し、立憲民主党と公明党による「中道改革連合」が結成されたが、国民民主党は加わらず、選挙の行方は混沌としている。
質疑応答で、連合の選挙対応を問われた芳野会長は「連合は労働団体なので、選挙中心ではなく、まずは3年連続5%台の賃上げ、特に今年は中小企業で5%台に持っていくという結果にこだわっていきたい」と春闘優先の姿勢を強調。
その上で「地方連合会(地方組織)と合わせて、連合推薦候補者全員の当選に向けて取り組みを強化していく」と述べた。
連合は国民民主党と立憲民主党を「支援」ではなく「連携政党」と位置づけており、人物重視、候補者本位の考え方で都道府県の地方連合会が推薦を行い、本部で確認する方針だという。
選挙後に自民党から国民民主党への連立入りの働きかけが強まる可能性について問われると、芳野会長は「国民民主党には連合の組織内議員がいるので、連携政党であることには変わりはない」としつつ、「連立入りについては看過できないというスタンス」と明言。
「多党制の時代ではあるが、与党と野党の対立構造に変わりはない。連合としては野党の立場で政府に対してしっかりと対峙していくことがとても重要」と強調したが、「そこから先は政党が考え、判断すること」と述べ、配慮を示した。



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