新型AirTag登場で高まる利便性と「悪用」の懸念 ぬいぐるみに発信機、スマホ遠隔操作…探偵が教える最新のストーカー自衛術
26日、米アップルが紛失防止タグ「エアタグ」の新製品を発表した。スマートフォンなどからの位置検出距離が最大50%伸び、同タグを取り付けた物を探しやすくなったという。

健全な利用なら、特に物をなくしやすい人には至便のツールといえるが、こうした紛失防止機器を悪用するケースも後を絶たない。
昨年の大みそかに茨城県水戸市で発生した女性殺害事件では、位置情報がわかる機器が被害者に贈られたぬいぐるみに仕込まれていたという。
こうした機器悪用などの相談を受け、四半世紀上にわたって解決へ導いてきた“発見のプロ”で探偵の継野勇一氏は「まさか、ここまで…という事例も少なくない」と明かす。
プロも驚愕する仕込み方に、被害者が対処する術はあるのか…。(本文:Akai探偵事務所代表・継野 勇一)

大晦日に奪われた命──「懸賞当選」の裏にあった邪心

2025年12月31日、大晦日の夜。水戸市のアパートで、ネイリストのKさん(当時31歳)が殺害され、警察は元交際相手のO容疑者を殺人の疑いで逮捕した。
報道によれば、Kさんは頭部への強い損傷や首の刺し傷が確認され、さらに妊娠もしており、お腹の子を守ろうと必死に抵抗した痕跡も残されていたという。
事件の4日前、Kさんは車の中から警察に電話をしていた。ドライブレコーダーに残された音声には「ストーカーの相談はどこに行けばいいんですか」という切実な声が記録されていた。しかし、匿名の問い合わせにとどまり、加害者名など具体的な相談には至っていなかったという。その数日後、年の瀬に悲劇は起きた。
不気味で恐ろしいのは、容疑者がKさん宅を特定した手口として、警察が捜査を進めているその内容だ。
Kさんの実家に「懸賞の当選品」として届いたぬいぐるみに発信機が仕込まれていたとされており、なにげない贈り物が、被害者の居場所へ近づく“入口”に利用された可能性がある。
そう考えると背筋が寒くなる。
また、周囲の人々は容疑者を「明るくて優しい」「面倒見がよかった」と語っている。初めての彼女だと喜び、周囲にのろけていたという。ストーカー加害者が必ずしも“特別な異常者”として現われるわけではない――その事実も、この事件の恐ろしさをより際立たせる。

他人事ではないストーカー被害の実態

警察庁の統計によれば、令和6年のストーカー事案の相談等件数は1万9567件に上る。

高い水準で推移する相談件数(出典:警察庁ホームページ)

特に注目すべきは、20代から30代の被害者が全体の56.2%を占めているという点だ。また、被害者の86.4%が女性となっている。
筆者が運営する盗聴対策サービスの「盗聴器の発見PRO」「スマホ盗聴の発見PRO」にも、日々さまざまな相談が寄せられているが、交際相手や元交際相手から贈られたプレゼントについて「念のため中身を確かめたい」という依頼は、以前から一定数ある。
なかには、芸能人がファンから受け取った贈り物について、用心のために確認したいと相談に来ることもある。

日常に潜む発信機──実際の発見事例

これまで筆者が扱ってきた相談の中には、「まさか、ここまで…」と思わされるケースも少なくない。
たとえば、元交際相手からプレゼントされたブリーフケースを使い続けていた女性がいた。調べてみると、鞄の内部に発信機が巧妙に隠されていた。本人が気づかないまま、行動が追われていた可能性がある――“贈り物”が、一転して監視の道具になる瞬間だ。
車への取り付けも、珍しい話ではない。
車体の下部や内装のすき間など、目につきにくい場所に小型の機器が忍ばされる例は後を絶たない。
さらに近年は、自転車にまで対象が広がる傾向もある。通勤や買い物といった“いつもの移動”が、そのまま監視の入口になり得るのだ。
最も深刻なケースは、スマートフォンを使った監視だ。依頼を受け、元交際相手からプレゼントされたというスマホを調査したところ、コンピュータウイルスが仕込まれており、カメラ、マイク、GPS情報がすべて抜き取られていた事例がある。
恐ろしいのは、プレゼントされたスマホに限らず、遠隔操作で不正なプログラムを侵入させる手口が実際に存在するという点だ。

自分でできる基本的な対策

仕掛けられたが最後、プライベートが筒抜けになるリスクが最大級に高まるが、防ぐ方法はある。
最も効果的な対策は、そもそも発信機を仕掛けられない環境をつくることだ。見つけるより先に、「触れさせない」。それがより強い防御になる。
まず、自宅に届いた贈り物は脅威になり得る。心当たりのない荷物や不審な贈り物は、開封前に家族や住居の管理者などへ共有し、必要なら警察などにも相談したい。車や自転車への取り付けも後を絶たないため、むき出しになる場所は避け、できるだけ屋内や管理された場所に保管するのが安全だ。

また、加害者が私物に接近できなければ追跡のリスクは大きく下がる。住所や行動パターンを知られない工夫も重要だ。
SNSを日常的に使っているなら、表札や周辺の風景、最寄り駅が分かる投稿に注意し、位置情報の自動付加や公開設定も見直したい。「毎週月曜は◯◯でランチ」といった定期行動が読める投稿も控えたほうがいい。
スマホに関しては、普通に使っているはずなのに「バッテリー消費が異常に早い」「データ通信量が増える」などの兆候があれば、不正なアプリやウイルス感染を疑い、早めに点検・相談すべきだろう。

プロフェッショナルはどう調査するのか

プロの調査員は、こうした異常の痕跡を、一般の人には扱いづらい専門機器を使い分け、一つずつ拾っていく。
少し専門的な話になるが、GPS発信機の探索で使われるのが、NLJD(非線形接合探知機)という半導体探知装置だ。1軸タイプと3軸タイプがあり、1軸は安価に手に入る一方、現場での使い勝手は限定的とされる。
こうした機器の技術的な最先端を行くアメリカの発見業者等、本当に優れた業者が用いるのは主に3軸タイプで、隠された電子機器をより精度高くあぶり出せる。
スマホ盗聴の調査は“サイバーの目”で行う。通信の流れをモニタリングし、バックドア(不正アクセスの経路)の挙動を詳細に分析することで、コンピュータウイルスの存在を突き止めるのだ。

違和感を見逃さないで

水戸市の事件が突きつけたのは、ストーカー被害が「どこかの誰か」の話ではなく、私たちの暮らしのすぐ隣で起きる現実だということだ。優しそうに見える相手が突然ひょう変することもある。
毎日使うバッグやスマホ、身の回りのものが、気づかぬうちに“追われる入口”に変わってしまうことさえある。
だからこそ、上記のような違和感を少しでも覚えたら、その直感を握りつぶさないでほしい。
大事なのは、「相談すること」だけで終わらせないこと。たとえば警察などはなかなか動いてもらえない印象があるかもしれないが、やり方次第。
たとえば①時系列(いつ・どこで・何をされた)を1枚にまとめ、②着信履歴・メッセージ・投函物・待ち伏せ映像など証拠を原本で残し、③相談した日時・担当・受理番号も控える。同じ行為が繰り返されていると示せれば、警察も動きやすく、介入の速度は変わる。
同時に、身を守る即効策も取ってほしい。帰宅ルートと時間を固定しない、迎えや合流地点を決めて一人の時間を減らす、玄関と郵便受け周りは、防犯カメラで強化する。スマホは、誰にも触らせない、全てのアプリを最新にしておく、持ち物のタグ点検もする。
公的機関に頼りつつ、近づけない状況を先に作る――それが最悪を遠ざける現実的な一手だ。
【継野勇一】Akai探偵事務所・盗聴器の発見PRO・スマホ盗聴の発見PRO代表
最新鋭の機材力で盗聴器発見やスマホのハッキング調査、浮気調査を行っている。https://www.hakken.pro/


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