それによると、原告側の訴状のタイトルは「遍く女性が光り輝く令和光の離婚等請求事件訴状(19:47)(令和管轄:仙台家庭裁判所)」。提出先が「遍く女性が光り輝く令和光の最高裁判所」とされている。
原告の氏名には「光り輝く令和原告」の肩書が付され、原告住所として代理人弁護士の法律事務所の所在地(福岡県北九州市)が記載されており、被告については福島県いわき市内に住所を有する旨の記載があったという。
なお、法律上求められている印紙の貼付、郵券(切手)の予納がされていなかったという。
訴状の記載について、SNS上で「ふざけてる」などと批判する投稿が多くみられる。しかし、最高裁はこの訴えを却下するために、約2ページ半にわたり丁寧かつ緻密な法律論を展開している。
最高裁もヒマではない。それどころか多くの事件を抱えて常に余裕がない。にもかかわらず、最高裁がこの訴えを却下するために、貴重な時間を割いてまで長文の決定書を作成したのは、そうしなければならない理由、つまり、民事訴訟法の解釈ないしは理論上の問題があったからにほかならない。それはいったいどのようなものか。
大学時代に民事訴訟法を専攻し、同法の理論と実務の双方に造詣が深い荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に解説してもらった。
「管轄違い」の訴えでも裁判所は却下できない
荒川弁護士は、本決定の論旨を「問題点の所在を的確に把握し、論旨は明解で穴がなく、かつ原告の利益にも抜かりなく目配りし、妥当な結論を示している。まさに『獅子、欺かざるの力(※)』ですね」と高く評価する。※どんなにつまらないと思われることであっても、手を抜かず全力を尽くすこと
そもそも、わが国では三審制がとられているため、最高裁にいきなり出訴することは明らかに管轄違いである。最高裁は、その一点のみを理由として直ちに本件訴えを却下することはできなかったのか。
荒川弁護士は、そのような扱いは民事訴訟法上、許されないと説明する。
荒川弁護士:「裁判所は、訴えが管轄違いであることのみを理由として訴えを却下することはできません。本来の管轄を有する裁判所へ訴訟を移送することが義務付けられています(民事訴訟法16条1項)。
その理由は、管轄違いというだけで訴えを却下すると、原告に不測の不利益を与え、憲法が保障する『裁判を受ける権利』の侵害になりかねないからです。
どういうことかというと、原告は、本来の管轄がある裁判所に改めて訴えを提起し直さなければならず、手間と費用がかかります。また、その間に時効の期間や出訴期間を過ぎたりしてしまうことがあります。
そのような事態を防ぐため、裁判所は管轄違いの訴えでも却下せず、本来の管轄の裁判所に移送しなければならないこととされているのです」
民事訴訟法16条1項は「裁判所」について何ら限定を加えていないため、最高裁にも当然に適用される。したがって、最高裁は本件の訴えを、本来の管轄裁判所へ移送しなければならないはずである。
本件の場合、原告の住所は福岡県北九州市、被告の住所は福島県いわき市であり、離婚訴訟の管轄はそのいずれかということになる(人事訴訟法4条1項参照)。
したがって、最高裁は、上述した「管轄違いによる移送」の規定(民事訴訟法16条1項)からすれば、本来、当事者の申立てまたは職権で「福岡家裁小倉支部」または「福島家裁いわき支部」に移送しなければならないはずだった。
最高裁が義務であるはずの「移送」をしなかった理由
ところが、最高裁はそれをせず、「本件訴えは、訴訟上の信義則に反するとして却下すべきものである」と断じた。どういうことか。荒川弁護士:「訴訟上の信義則は、民事訴訟法2条に規定されています。『当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない』とあります。
これは、訴訟の当事者らが『訴訟手続きを悪用して不当な目的を達成しようとすること』や、『いたずらに訴訟を遅延させること』や、『裁判所の手を無駄に煩わせること』を禁じたものと解されています」
最高裁の決定文によると、原告が提出した本件訴状には『令和管轄の利益』と題する項目があり、そこに『令和管轄の利益を享受致したい次第である』『仙台家裁での本件完遂が可能である』との記載があったという。
荒川弁護士:「最高裁は、原告が訴状にこの記載をした意図について、次のように認定しています。
『最高裁判所の管轄に属しないことを十分認識しながら、あえて最高裁判所を経由し、本来、管轄のない裁判所への訴訟係属を求めて当裁判所に提起されたものというべきである』
これは、原告側が、法律上認められない特別扱いを求め、しかも法が定めた手続きを無視しているということを述べています。その上で、
『正当な権利の行使とはいい難く、是認し得るものではない』
『本件訴えは、現行法規に則って訴えを提起し訴訟手続を追行するという意思を欠いた不当な目的によるものというべき』
『本件訴訟を移送することによって原告の救済を図る必要があるということはできない』
と厳しく断じています。前述した『管轄違いによる移送』の制度の『原告の不利益防止』という趣旨は、本件のような身勝手な行為にはあてはまらないということです」
代理人弁護士が「暴走」した場合の「原告本人の利益」にも目配り
とはいえ、訴えを却下することは、それ自体が原告の不利益に直結するリスクがある。特に、本件のように、法律や訴訟手続きに精通したプロであるはずの代理人弁護士が「暴走」した場合に、素人である原告が不利益をこうむってしまう事態になるのは、きわめて酷である。
民事訴訟法16条1項の「管轄違いによる移送」の制度の根底にはこの点への配慮がある。
しかし、荒川弁護士は、最高裁は原告本人の利益にも抜かりなく配慮していると指摘する。
荒川弁護士:「最高裁は、『このように解したとしても、原告が本件訴えにおいて主張する実体的権利の有無について、法の予定する訴訟手続に則って裁判を受ける機会が失われるものではないから、原告の権利を過度に制約するものではない』としています。
原告と被告との間の離婚問題は、現在も解決しないまま存在していると推察されます。
したがって、訴えの却下によって訴訟の開始が多少遅延したとしても、原告は本来の管轄を有する家裁に訴えを提起し直しさえすれば、離婚訴訟を争うことができます。
このことから、原告の不利益は少ないと判断して、却下したものといえます。
なお、多少の遅延や、費用が余計にかかるなどの不利益は残ります。しかし、その点は、問題のある弁護士を代理人に選んだ原告が自己責任を負うのもやむを得ないと考えたのでしょう」
「明文の根拠規定がない」点へのフォローも
本件最高裁決定は、訴え却下の決定を行う法的根拠として「民事訴訟法317条1項の類推適用」を挙げている。荒川弁護士:「民事訴訟法317条1項は『上告が不適法でその不備を補正することができないとき』(316条1項1号)には、『上告却下』の決定を行うことができると規定しています。
本件では、管轄違いという不適法があり、かつ、訴訟上の信義則に反するという不備は補正できないと解することもできます。
最高裁は、この『上告却下』の規定を借用して、訴えを却下したということです」
しかし、裁判所による訴え却下については、民事訴訟法140条が以下の通り定めている。
「訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる」
それなのに、最高裁はなぜ、140条を直接適用するのではなく「317条1項の類推適用」という、一見まわりくどい法律論を用いて、却下決定を行わなければならなかったのか。
荒川弁護士:「最高裁はあくまでも、上告された事件についてのみ審理を行う裁判所です。
つまり、一審、控訴審で判決が行われ、それでも当事者が納得できず、かつ重要な法律問題がある場合に初めて、審理を行うことが大前提です。
そもそも下級審で不適法却下されるような訴訟について最高裁が審理することは、最初から予定されていません。したがって、最高裁が140条による訴え却下を行うのは不適法と考えたのでしょう。
つまり、最高裁が『訴え却下』を行う直接の規定は民事訴訟法には存在しないということです。
そこで、最高裁自身による『上告却下』の規定を類推適用、つまり便宜的に借用して、本件訴えを却下したものと考えられます。
最高裁がこういう細部までしっかりと論理を詰めていることに、感心します」
原告側の訴状は、文面に実在しない裁判所名が記載され、法律を無視した扱いを求める内容である等、「ふざけている」と批判されてもやむを得ないものかもしれない。最高裁の却下決定には、そのような訴状を作成した原告代理人に対する「ブチ切れ」ともいえる怒りがあからさまににじみ出ている。
しかし、どれほどブチ切れても、徹頭徹尾、細部まで手を抜かずに冷静かつ緻密な法律論を展開するところは、さすがは最高裁というべきかもしれない。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)
![[コロンブス] キレイな状態をキープ 長時間撥水 アメダス 防水・防汚スプレー420mL](https://m.media-amazon.com/images/I/31RInZEF7ZL._SL500_.jpg)







![名探偵コナン 106 絵コンテカードセット付き特装版 ([特装版コミック])](https://m.media-amazon.com/images/I/01MKUOLsA5L._SL500_.gif)