北海道の私立高校の女子生徒だったAさんが、元講師の男から高校在学中から繰り返し性的行為を強要されたとして、男に対し損害賠償を求めた訴訟で、2月20日、札幌地方裁判所は被告の男に1100万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
なお、原告は学校法人に対する使用者責任による損害賠償請求もしていたが、「性的行為は授業と関係のない日時・場所で行われた」として棄却された。

月1~2回、3年間にわたる性的行為

原告Aさんは2016年4月、北海道の私立高校に15歳で入学した。漫画家としても活動している被告は、Aさんの授業を担当するデッサン講師として在籍しており、授業の合間に「漫画の話をしてあげるよ」「裏話もあるよ」などと声をかけ、LINEの連絡先を交換した。なお判決文によると、被告はAさんより30歳年上だった。
高校1年生のある日、遅くまで課題に取り組んでいたAさんを被告が自宅まで送るとして車に乗せたが、途中で別方向へ走行。人気のない場所で停車し、身体を触るなどのわいせつ行為に及んだとされる。帰宅後、Aさんが「怖かったけれど、送ってくれてありがとうございました」とLINEを送ったところ、被告は「怖がらせるつもりはなかった、ショック」と返信したという。
原告側代理人の河邉優子(こうべ・ゆうこ)弁護士は会見で「怖かったと伝えた生徒に対して否定的な反応を示すことで、Aさんが被告に逆らえない心理状態を徐々に作り上げていった」と説明した。
同年冬頃から被告は学校外での接触を重ね、やがてホテルへ連れ込み性交するに至ったと原告側は主張している。Aさんが「16歳なので入れません、先生と生徒なのでいけないことになりますよ」と断ったにもかかわらず、被告は聞き入れなかったとされる。
その後、月1~2回のペースでホテルへの同行が続いたとされ、性行為の態様は次第にエスカレートしていったと訴状には記されている。大便を食べさせる、顔に塗りつけた状態で性交する、屋外で裸にして歩かせる、身体に「奴隷」「ペット」などと落書きして撮影するなど、複数のわいせつ行為が行われたといい、Aさんは陳述書で次のように述べた。
「行為中に五感を働かせていると、辛すぎて気が狂いそうになる。だから最中はなるべく何も感じないように自分の意識を遠ざけた。
そういうことを繰り返すうちに、自分の心から自分を追い出すことが癖になり、乖離(かいり)状態になるようになった」
こうした行為は2019年3月の高校卒業まで続いたとされ、その後Aさんが北海道外に転居した後も、被告が胸や陰部の画像を送るよう要求し続け、同年7月まで連絡が続いたと原告側は主張している。

「被告との行為がPTSDを引き起こした」

一方、被告の男は、一連の行為は「真剣な交際関係のもと、原告の同意を得て行われたものだ」と主張。
ホテル以外にも水族館や美術館、祭りなどに2人で出かけたことがあること、最初にホテルへ向かった際もAさんが周囲に助けを求めなかったことなどを根拠に挙げ、「原告の権利や法律上保護された利益を侵害していない」と反論した。
また被告は、Aさんが被告の行為によってPTSDに罹患したという因果関係について、その証拠となる診断書が原告代理人の指示により作成されたことを理由に、信用性が乏しいと争った。
裁判所はこれらの被告側の主張を退け、不法行為の成立を認めた。
判決は「被告は原告より30歳も年上で、授業を担当する教員という優位な立場にあった」と指摘。また「被告は原告の年齢相応の両親への葛藤や自己肯定感の低さにつけ込み、自らが優位に立つ関係を意図的に形成した」として、Aさんの「性的自己決定権」が侵害されたと認定した。
PTSDの診断についても、「PTSDの可能性を最初に示したのは原告代理人ではなく医師であり、診断はそれ以前からの診療経過に基づいている」と判断した上で、「被告との一連の性的行為がトラウマ体験となりPTSDを引き起こしたと判断するのが合理的だ」と認定した。
損害額については、精神的損害1000万円と弁護士費用相当額100万円を合わせ、1100万円の賠償を命じた。
なお被告は2020年2月、児童ポルノ禁止法違反により罰金30万円の略式命令を受け確定している。

原告側は「学校は被害を知っていた」と主張

記者会見でAさんは電話越しに、「どれだけ謝られてもなかったことにはならないが、最後まで誠実な謝罪はなかった」と涙ながらに語った。
また原告側は、Aさんより以前に、同様の手口で被告から性的被害を受けた生徒が学校へ相談していたにもかかわらず、何ら対応が取られなかったと主張。
河邉弁護士は教員と生徒のLINE交換が野放しにされ、別の教員が「今日もJKとLINE交換した」「今日は生徒と肩を組んだ」などとSNSに投稿していたとも指摘し、次のように述べた。

「控訴するかはもちろんこれから考えるが、法的にどうなのか、という視点に加えて社会的に許されるのかどうか、についても広く考えてほしい」


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