裁判所は原告らの主張を退け、請求を棄却した。
災害拠点を担っていた病院の突然の閉院
「厚生荘病院」は、東京西部・多摩市の災害拠点病院(災害時に災害医療を行う)に指定されていた総合病院だ。そこで何があったのか。会見に臨んだ原告代理人の弁護士3人が、原告らが整理解雇された経緯などを説明した。一般財団法人「愛生会」(2018年から「湖山医療福祉グループ」=本部・東京都中央区=の傘下)が運営する「厚生荘病院」は、2021年7月、同年12月末をもって閉院することを突然発表した。
その際、「建物の老朽化」「耐震基準を満たしていない」「経営環境の悪化」などの理由が示された。
同病院の労働組合は、2021年10月までに6回の団体交渉を行い、①病院を閉鎖せず建て替えながら病院を継続し、雇用を確保すること、②湖山医療福祉グループ内での出向などを求めたが、法人側からは明確な回答を得られなかったという。
2021年12月末の閉院までに、在籍していた職員・スタッフ129人のうち119人は法人側が提示した希望退職を受け入れて病院を去った。希望退職を受け入れなかった10人は整理解雇され、22年1月、雇用契約上の地位にあることの確認を求め、東京地裁に提訴した。
10人の原告らは、「整理解雇は解雇権の濫用であり、労働契約法16条(※)により無効である」と訴えていた。
※解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする
整理解雇に“有効性”は認められるのか
原告代理人の加藤健次弁護士は、「本当に病院は建て替えではなく、閉鎖しなければならなかったのか。仮に閉鎖するにしても、整理解雇した10人の(グループ内の他の医療機関等への)雇用を確保することはできなかったのか」と、提訴以来およそ4年間の争点を改めて解説した。裁判では以下の4つが争点となった。
①人員削減の必要性
②解雇回避努力
③人選の合理性
④手続きの相当性
原告らは、「①人員削減の必要性」について、当初は法人側から病院の建て替えの可能性が示されていたことにも触れ、法人側が主張した財政上の理由を否定した。
また、法人側が「②解雇回避努力」を尽くしたと主張したことに対しても、原告らは「全国に展開するグループの他の医療機関等への出向・転籍の話はされなかった」と異を唱えた。
「③人選の合理性」は、希望退職に応じなかった労働組合員の10人が整理解雇の対象となったことを挙げ、人選に組合員を対象とした不合理性があったと訴えた。
さらに、解雇2か月前に、法人側が原告らに対し「希望退職前提の団体交渉しか応じない」と交渉を拒否したことは「④手続きの相当性」がなく、誠実交渉義務に反するとした。
しかし、裁判では、そのいずれも原告側の主張が退けられた。
4つの争点のいずれも原告主張認められず
裁判所は、「①人員削減の必要性」について、2020年当時、病院には約1億3100万円の現預金残高があったとしつつも、赤字状況が続いており、「そのままの状況で事業を継続すれば、おおむね2~3年で預貯金が枯渇するという経営状況であったといえる。閉院をする旨の経営判断をしたことには合理性が認められる」と、財務・財政上の理由を認めた。「②解雇回避努力」については、「出向先の候補となる湖山グループ内の別法人に対し個別に出向の可否を打診し、グループ法人が多数参加する財務会議において再度意見聴取を行ったものの、出向期間が不明確であることなどを理由に受け入れに応じる法人はなかった」とした。
「③人選の合理性」については、「本件解雇は希望退職に応じなかった者すべてを対象とするものであり、原告ら以外の従業員はすべて閉院の翌月までに退職している」ため問題は生じえないと結論づけた。
「④手続きの相当性」についても、「被告は整理解雇にあたり、説明会や従業員との個別面談、組合との団体交渉において必要な説明に努めている」と相当性を認めた。
和解でまとまりかけるも理事長意向でほごに?
被告側の主張がほぼ全面的に認められた判決について、原告代理人の弁護士らは会見で強く批判した。まず、判決が認めた病院閉鎖の財政上の理由について、加藤弁護士は、2018年に湖山医療福祉グループに経営が引き継がれるまでは「都内の病院としては比較的健全な経営をしていた」と話す。
そのうえで、同グループに経営が移ってから「人件費を削減し始め、大量の離職者が出た。職員が減るとそれだけ患者の世話ができず、(診療報酬の)点数がつかないため、収入が落ち込む。そういう悪循環になっていた」と指摘。
さらに、2021年10月に行われた団体交渉の休憩時間の録音に、解雇回避努力をしたというアリバイを残すため財務会議を行うことや、その際理事長が「出向させればいい」といった発言をしないよう黙っていてもらうといった趣旨の被告側の発言・会話が残されていた。
原告らはこうした被告らの発言について、「解雇回避の努力をしていないのに、したふりをするための証拠、アリバイを作ろうとしたと考えるのが普通。理事長はグループ全体のトップでもあり、影響力が絶大。紛争化しないために理事長自ら原告らを出向させるように言えば、解雇回避が実現したはずだ」と主張。
しかし裁判所は、被告の発言以前に出向先候補となる法人に出向の可否を個別に打診し、難しい旨の回答を一度得ていたことなどから、団体交渉の時点で出向はすでに困難であったと判断。
さらに、会議で理事長に黙っていてもらうという発言についても、「必ずしも被告代表者(理事長)の発言の影響力に鑑みたものともいい難い」とした。
これに対し加藤弁護士は、一時まとまりかけた和解案が理事長の意向で“ほご”になった裁判上の経緯を明かし、「理事長の影響力が強いことは、裁判長も身に染みてわかっていたはずだ。この判決は、証拠作りをしてもいいと裁判所が認めているようなもの。事実認定や法解釈以前のリーガルマインドの問題で、到底許せるものではない」と言葉を強めた。
会見では、閉鎖が新型コロナウイルス感染症の対応に追われるさなかに行われたことへの“憤り”の声も聞かれた。
厚生荘病院の閉鎖により、多摩市和田地域には医療空白ができたことを挙げ、原告代理人の生駒巌弁護士は「多数の入院者がいる中で、この時期に突然、半年も間を置かずに閉鎖を決めて実行すること自体、病院の経営者としてはいかがなものかということも裁判上で主張したが、判決はその点には全く触れていない」と述べた。
「厚生荘病院」労働組合委員長の吉田千代さんは、「クラスター(集団感染)の発生もなく、職員は頑張っていたのに」と肩を落とした。
愛生会「当方の主張が、裁判所によって認められたものと考えております」
控訴の意向を固める原告らだが、一方、被告の愛生会は、筆者の問い合わせに対し「令和3年(2021年)当時において厚生荘病院を閉院せざるを得ないと判断した経営上の決定およびそれに伴う元職員の方々や労働組合への対応が適正であったとの当方の主張が、裁判所によって認められたものと考えております。また、病院跡地は別の社会福祉法人により定員240床の大規模特別養護老人ホームの用地として活用される予定と承知しており、今後も地域の皆様にとって有益に活用されていくことを期待しております」との回答を寄せた。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。

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