メガバンク行員、市長、警察官、保育士、お坊さんなど、多種多様な業界人の日常をのぞきみることができる内容は多くの支持を集める。
ときには「そんな事実があるの?!」と軽い衝撃を受けることもあるが、読後に感じるのは「どんな仕事も苦労の源は同じかも」という勝手な仲間意識だ。本の内容に、閉塞感のある社会へのある種のカタルシスを感じる人もいるのかもしれない。
ところが、クローズアップされた業界にとっては、都合の悪いこともあるのだろうか。職業日記のある出版物に対し、直接、「物言い」がついたことがあるという。
同社の社長、唯一の社員である中野長武氏はそのとき、どんな対応をしたのか。後編では、一人出版社が巻き込まれたトラブルのてん末に迫る。
>>前編:「70代警備員の日記」なぜ7万6000部超ヒット作に? 普通の人の日常”を綴った大人気シリーズを手掛ける「一人編集者」の型破りな仕事術
あくまでも「職業上の当たり前」を取り上げる
日記シリーズがこれまでに取り上げた職業は26種類(2月現在)。派遣添乗員やタクシードライバー、保育士、メガバンク銀行員、保育士、警察官、市長など本当に多種多様だ。その内容は、「日記」とある通り、現役時代の日常を軽妙に切り取ったもので、読みやすく、おどろおどろしさもない。
「持ち込み企画には暴露を目的にしている人も来ますが、そっちへ偏るようなものにはしないと最初にはっきりお伝えしています。もちろん、職業ものではありますから、業界の裏側に触れることもありますが、あくまでも職業上の当たり前として取り上げるイメージです。
結果的に暴露色が強くなる本もありますが、それでもできる限り、その人固有の人生がにじみ出るようなエピソードを大事にしたり、全体の構成を工夫したりすることで、読後にどんよりした気分にならないよう意識して編集しています」
まさに中野氏の編集者としての絶妙なさじ加減が、日記シリーズの面白さの源泉であり、多くの人を引き付ける魅力となり、平凡な職業でも読み応えのある内容に仕上がっている。
職業日記シリーズに難癖をつけた2社
ところが、そんな日記シリーズにも、物言いがついた本が2冊ある。『ディズニーキャストざわざわ日記』と『電通マンぼろぼろ日記』だ。
ディズニーは夢の国。そのイメージを壊すようなものに対しては毅然とした態度をとるのだろう。中野氏のもとには、オリエンタルランドの法務部から警告書が届いた。
「本の内容は入社時の守秘義務契約に違反する」といった主張だった。中野氏は「内部機密ではなく、あくまで個人の労働体験の範囲内」として突っぱねた。弁護士の見解が「五分五分」なら、面白さを優先して出版する。それが中野氏のスタンスだ。
電通からも警告書が届き、その後、同社内で犯人捜しが行われ、顔が割れたとの情報も聞こえてきたそうだが、同じように毅然と対応すると、以降はなんの進展もないという。
職業日記シリーズを続けていれば、あってもおかしくないようなトラブルともいえるが、転んでもただは起きないのも中野流。この警告書事件も、中野氏は最大限に活用する。
「警告書事件」も新聞広告にちゃっかり活用
新聞広告に「当該2社より警告書受領しました」と文言を記載し、「これって書いちゃいけなかったんですか?」と補足までして読者の興味を最大限にそそることに成功している。
ちなみに、この広告は数社に申請したが、審査落ちした新聞社もあったという。
出版の“素人”とどうやって本を仕上げていくのか
それにしても著者は基本、プロの物書きではない。毎回、一定のクオリティに仕上げるのは相当骨の折れる作業のハズだ。「別に書けなくてもいいんです。ただ、ネタとして深みを出せるか。そこは重要視しています。
ある風俗嬢の方から持ち込みがありましたが、やりとりすると、こんな人とこんなことをしました、というだけの体験談。そうではなく、そこにどんな思いがあり、相手をした人とどんな化学反応があったのか。そういう部分をつづっていくことが日記シリーズの肝なんです。
内容が薄くても私が矢継ぎ早に質問をして、打ち返してもらいながら、味わいを引き出していく。そうするとほとんどの企画はものになっていきます」
それでも、これまでに一人だけお蔵入りした例があるという。著者はある職業につくシングルマザーだった。
「内容もそこそこ面白く、編集もかなり進んでいました。
常にトコトン著者とやりあう。その結果が、日記シリーズの味わい深さ、読み応えにつながっているのかもしれない。職業日記シリーズの著者の一人に話を聞くと、「中野さんの千本ノックに本当に鍛えられました」と感謝の言葉を口にしていた。
三五館シンシャは、もともとは倒産した出版社を中野氏が一人で受け継いだ。不安もあったはずだが、最初からヒット作に恵まれ、ここまで約7年、快走ペースは落ちることなく続いている。
職業日記シリーズのこれから
今後はどこを目指していくのか。中野氏が明かす。「いま累計で80万部を超えましたが、まずは100万部が目標です。ただそれは通過点で、一生、日記シリーズは続けていきたいですね」
すでに1年先まで著者候補は決まっている。
「基本的に持ち込みからスタートしますが、いまやりたいと思っている職業が3つあります。プロ野球選手、力士、そしてプロレスラーです。それぞれに誰もが知りたい裏側がありますし、人間模様がある。 どのジャンルも、自伝や暴露本はよくありますが、そうではなく、日記シリーズならではの、人間味を織り交ぜながら、各業界で生きた人の、生活と不可分な百人百様の人生を世に知らしめる本を作りたいですね」
丸めた頭、強い目力。その風貌や編集へのスタンスはもはや、“職業日記職人”だ。
社会は高齢化が進み、黒字リストラも珍しくなくなっている。それはさまざまな職業を離職する人が続々と発生する一方で、高齢になっても働き続ける人が増殖することを意味する。
今後、職業日記の著者予備軍がいくらでも出てくる世の中で、中野氏の日記シリーズが、各分野の業界人がため込んだ思いを吐き出す場の「本家」として、知らない人はいない存在となる日もそう遠くないのかもしれない。
◆中野長武〔なかのおさむ〕
1976年東京都生まれ。中央大卒。

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