「死にたい」「消えたい」そんな言葉を胸の奥に抱えながら、誰にも打ち明けられない子どもたちがいる。
厚生労働省によると、2025年の自殺者数は暫定値で1万9097人と、統計開始(1978年)以来初めて2万人を下回る見通しとなった。
しかし、その陰で小中高生の自殺者数は532人と、統計のある1980年以降で過去最多を更新する見込みだ。
こうした状況を受け、NPO法人ライフリンクは2月27日、都内で会見を開き、生きることに「しんどさ」を抱える子どもたちの実態調査を発表。調査には2247件(小中高生(18歳以下)1215件/19歳以上1032件)の回答が寄せられた。
※以下の数値はNPO法人ライフリンク「オンライン居場所『かくれてしまえばいいのです』」利用者2247人アンケート(2026.02)」より引用

54%が「相談できない・しない」

ライフリンクは2024年3月、Web空間「かくれてしまえばいいのです」を公開。
絵本作家のヨシタケシンスケ氏が世界観とコンテンツ制作に全面協力し、「この世でもなく、あの世でもなく、その世という選択肢」というコンセプトのもと、匿名・無料・24時間で利用できるオンラインの居場所として運営されている。厚生労働省の補助事業として実施されているプロジェクトだ。
開設から2年で累計アクセス数は2700万回に達し、現在も1日平均2万回以上のアクセスが続く。会見でライフリンク代表の清水康之氏は「悩みを相談したくない子、相談できない子もいる。そういう子どもたちの受け皿になれれば」と語った。
今回の実態調査は「かくれてしまえばいいのです」の利用者を対象に、2月3日から16日までの2週間で実施されたもの。
「しんどい気持ち」について「身近に相談できる人がいる」と答えた小中高生は25%にとどまった。「いない」(35%)、「そもそも相談しようと思わない」(19%)を合わせると54%が相談から遠ざかっている実態が明らかになった。
相談しない・できない背景については、「否定されたり、責められるのが怖い」「どうせ分かってもらえないと思う」がともに37%で並んだ。

自由記述でも「怖い」という言葉が繰り返し登場しており、清水代表は「最初からそう思っていたわけではなく、相談した経験の中でこう思わざるを得ない体験をして、抵抗感を持つようになった子どももいる」と分析した。

生成AIへの相談、高校生の半数が「週1以上」

「死にたい」「消えたい」気持ちが抑えきれなくなった場合の相談先として、小中高生の全年代で最多を占めたのが「生成AI」(50%)。一方、「身近な大人(家族・先生・親戚など)」を選んだのはわずか14%にとどまった。
高校生に絞ると傾向はさらに顕著だ。
しんどい気持ちをやり過ごすために「生成AIを活用した」と答えた割合は51%で最多となり、週1以上で生成AIに相談したと答えた高校生は50%にのぼった。そのうち29%は「ほぼ毎日」と回答している。
清水代表は「相手が生身の人間だと、迷惑なんじゃないかというブレーキがかかる。AIとの会話を通じて気持ちを言語化していく作業に救われている人が多いということではないか」とコメント。
AIへの相談はあくまで「人への相談の入口」と位置づけるとしながらも、「こうした実態を踏まえ、生成AIを活用した受け皿の拡充が必要だ」との考えを示した。

39%が「そっとしてほしい」と回答

「かくれてしまえばいいのです」では、利用者同士のコミュニケーションを遮断する設計を採用している。自殺の誘引や個人情報の流出といったリスクを排除するためで、掲示板への書き込みはすべて事前に人の目でチェックされ、問題がないと確認されたものだけが公開される仕組みだ。
今回の会見では、新たに「ゆる喜利ラジオ」「うらない情報館」「おひとりさまキャンプ場」の3コンテンツを追加したことも発表された。
3コンテンツは自殺念慮(※)の原因追求や解決策の提示ではなく、利用者からのリクエストをもとに設計されたといい、「何もかも嫌になっている子たちが、気が済むまでぼーっとできる場所」として、1人で静かに過ごすことを前提とした設計が施されている。

※自死したくなる気持ち
アンケートでは、周囲に対して「気づいてほしい、声をかけてほしい」と望む子どもが62%に上った。一方で「そっとしてほしい」という回答も39%に達しており、画一的な声かけでは届かない層の存在が浮かび上がる。
ライフリンクは調査結果を踏まえ、「(子ども側が)何かあれば相談してくれる、という前提を見直す必要がある」と訴える。会見の終盤、清水代表は以下のようにコメントした。
「『かくれてしまえばいいのです』のような空間を必要とする子どもがいない社会が、本来一番いい社会だと思います。
ですが、現に、生きていていいと思える瞬間もないという子どもたちが大勢いて、そういう子たちにとっては『かくれてしまえばいいのです』がよりどころとして機能しているのは確かです。
『かくれてしまえばいいのです』が今後もそういう子どものよりどころになればと思っています」
【相談窓口】
「まもろうよ こころ」(厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/


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