シワやたるみ、クマに効果があるとして東京都内のクリニックで「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた女性3人が、施術を受けた箇所に膨らみやしこりが残ったとして同クリニックを運営する医療法人社団に対し、27日、施術費用の返還のほか原状回復のための治療費や慰謝料など合計約1850万円を求めて東京地裁に提訴した。
提訴後に、代理人弁護士3人とともに会見に出席した原告のBさんは、「しこりができるような手術だと(病院は)教えてくれなかった。
顔が変わってしまって友人にも気づいてもらえなくなってしまった」と施術の失敗が日常生活にも影響を及ぼしていることを語った。

プレミアムPRP皮膚再生療法とは?

原告代理人らは、被告のクリニックが行っている「プレミアムPRP皮膚再生療法」について、「bFGF(フィブラストスプレー)添加PRP療法」であると説明する。
PRP療法とは、患者自身の血液を遠心分離で濃縮させ、精製した血小板を含む血漿(けっしょう)液を目的部位に注入する治療法のことだ。血小板から放出される多種の細胞増殖因子の作用によって、シワやたるみの改善を目指すことができる(※)。
※日本では未承認医療であり、行うには認定再生医療等委員会の審査を経て厚労省への届け出が必須。
このうち、被告のクリニックを含む一部の美容外科等ではこのPRP(血漿液)に、さらに「bFGF(フィブラストスプレー)」を添加したものを皮膚の下に注入し、ボリュームを補うことでシワ、たるみ、クマを改善させる施術に用いているという。
ただし、このフィブラストスプレーは、本来、褥瘡(じょくそう)や皮膚潰瘍に用いられる傷薬(医薬品)であり、製造する製薬会社は「本剤は外用薬であり、注入投与の有効性・安全性は確立されておりません」と注意喚起しているものだ。
さらに日本美容外科学会も、このbFGF添加PRP療法について、しこりや皮膚隆起などの合併症が多く報告されており安全性が保障できないため「行わないことを弱く推奨する」としている。皮下組織に直接異物(bFGF)を注入する施術のため、取り出すには除去手術が必要となる。
しかし、こうした合併症の危険性や、合併症が発症した際の対応方法について、原告らはクリニックから説明を受けていなかったという。

「施術についての説明が不足していた」

原告代理人の梶浦明裕弁護士は、会見で「病院側による施術についての説明が不足していた」と指摘する。
「製薬会社が適用外使用しないでくださいと注意喚起しているような傷薬を体に入れるという施術内容を聞いていたら、それだけで受けたくないと感じる人もいると思います。
また成分の問題のみならず、一度入れてしまえば除去手術でなければ取り出せず、半永久的に残る。そういうことについてもきちんと説明せず、あたかも自分の血液だけで安全に施術ができるかのように誤解させて、あるいは患者の誤解を解かずに実施している点が一番の問題だと思います」
さらに、「PRP療法はいわゆる再生医療等に該当するもので、再生医療法の適用を受けます」と梶浦弁護士は説明を続ける。

「再生医療法を受けて規定された厚生労働省令(再生医療規則)では、再生医療を実施する医療機関が患者に対し説明しなければならない項目が記載されています(13条2項)。しかし原告らの同意書を見ても、被告は明らかに説明していませんでした」
これらを踏まえ、原告らは裁判を通じ、被告の「再生医療法違反」「説明義務違反」等を訴えていくという。

「まずは失敗を認めてほしい」

会見には原告3人のうち2人(Aさん、Bさん)が出席。ともに顔に「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受け、頬などに膨らみやしこりが残ったという。
Aさんは、まず日常生活への支障についてこう話す。
「施術によって頬が隆起してしまい、マスクの跡がはっきりとついてしまいます。隆起を隠すため眼鏡をかけていますが、眼鏡の下部にファンデーションがついてしまうといった不便さを日々感じています。
ただ、それらよりももっと辛いのが人前で笑えなくなったということです。笑うと口角と一緒にしこりが持ちあがり、頬の隆起がすごいことになってしまうので、笑うときには、必ず手を添えて隠して笑うか、顔をそむけて笑っています」
さらに「鏡に向き合う度に、絶望という傷跡を毎日毎日突きつけられている感じです」と心中を打ち明け、「医療機関であり、医師でありながら、説明の欠落、むしろ誤解を誘導する説明をしたことに大きな怒りを覚えています。裁判所にはわれわれ被害者のためにも正しい判断を望みたいと切に思っています」と語った。
Bさんも「笑いづらくて笑えないし、笑うと頬がますます盛り上がるので不自然すぎて、笑うのをためらうようになってしまった」と話す。
「施術後に病院にしこりができたことを相談したら、『クマなくなって、成功してるじゃん』と丸め込もうとされて、誠実に向き合ってもらえませんでした。
クリニックに対しては、損害賠償金も求めていますが、まずは失敗を認めて謝罪してほしいと思っています」(Bさん)
また、Bさんは今後他院でbFGFを取り出す除去手術を受けることも考えているという。
「うまくできる医師を探すことも大変だし、リスクもあるし、ダウンタイム(回復期間)も半年ほどあるそうです。施術をする前に、そんな重大なしこりができる手術だと教えてくれなかった病院にはすごく怒りを覚えています」
弁護士JPニュース編集部では、被告にも取材を申し込んでいるが、現時点で回答は届いていない(2026年2月27日18:00現在)。回答が届き次第追記する。


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