選挙期間中には、候補者に対する誹謗中傷ばかりか脅迫までもがネットで相次いだと報じられた。
先日も41歳の会社員がある政党の幹部について、SNSに「人としてヤバい人認定」をしていると書き込んだ侮辱罪の疑いで逮捕された。「ヤバい人認定」ぐらいのことで逮捕されるのか、昨今の厳罰化も行き過ぎなのでは、などと思う方もいるだろう。
私も執筆した記事が名誉毀損に問われたことがある。駆け出しの頃だ。被告として約3年にわたり民事裁判で争った。ほぼ全ての期日に出廷し、本人尋問も受けた。
その時の経験を踏まえ、ネット投稿で後悔しない心構えを考えてみた。(ITジャーナリスト:井上トシユキ)
駆け出し時代、執筆記事が名誉棄損で訴えられた!
訴えられた記事は、ある広域組織と政治家の関係が不適切なのではないか、との趣旨のものだった。当初、相手側の主張は、「記事全体が嘘八百だ」というものだった。だが、裁判が進むにつれて表現やキャプションなどの細部にもクレームが次々とつくかたちとなり、なかなか複雑な経緯を辿ることとなった。
民事裁判における名誉毀損や侮辱とは
その時の経験を踏まえつつ、名誉毀損や侮辱について、民事裁判ではどのように扱われるのか、いま一度確認しておきたい。〈他人の社会的な評価、評判を貶(おとし)めるような具体的事実や意見を記事内で書いたり、ネットに投稿したりすれば、名誉を毀損したとして民法709条(不法行為責任)により損害賠償しなければならないことがある〉
弁護士との初めての打ち合わせでそう聞かされ、法学部の出身ではない私は驚いた記憶がある。
そもそも「他人を貶めることは記事にしたり、ネットに投稿したりしないでおこうね」というのがわが国の民法なのだ。
そうしたなかで、私の記事のように具体的な事実を示して貶めると名誉毀損に問われ、「人としてヤバい」「人間のクズ」等と抽象的に行えば侮辱に問われる。
誰かを貶めたりdisったりするネット上の投稿は基本的に違法——この点を多くのネットユーザーが十分に理解していない。それがいつまで経っても野放図な誹謗中傷がなくならない根源にあると私は思う。
名誉毀損の違法性が問われない条件
とはいえ、真っ当な批判や論評は権力者や企業、団体の暴走を監視、抑止するために必要なことでもある。そこで、以下の三要件をすべて満たせば名誉毀損の違法性が阻却される。◾️公共性…社会一般に知らせるべき公共の利害に関する事実である。
◾️公益性…社会一般の利益に資する事実の公表であり、私的な嫌がらせや報復、金銭目的ではない。
◾️真実性(または真実相当性)…その事実が客観的に真実である(または、真実だと信じるに足りる相当な理由がある)。
記事を作成するプロセスで、この三要件に不足がないよう、取材をして裏付けや証拠を取っていくのだが、同時に表現方法にも注意が必要となる。
たとえば、「詐欺」は刑法上の罪名であるから、裁判を経て詐欺罪が認定されていない相手に対し、うかつに「詐欺師」呼ばわりすると名誉毀損に当たる可能性が出てくる。
訴訟リスクを回避したいのなら控えめで要を得た表現が不可欠となる。しかし、一般的に文章は、短く書いて過不足なく伝えようとする方が難しい。
迂闊な投稿で痛い目にあわないために
短時間で違法性阻却の要件を満たし、訴訟リスクを避けた書き方で短文を投稿するのは、相当ハードルが高い。「いままで大丈夫だった」という向きもあるだろうが、それは単に見過ごされてきた、まだ我慢の範囲内だった、というだけのことだ。投稿や報道に対して感じたことや思ったことを即時的に書いたとして、違法性を問われる際に「反射的に書いてしまった」という言い訳が受け入れられることなどまずない。「カッとなってボコした(殴った)」が通じないのは、リアル社会における物理的な暴力も、ネット上での言葉の暴力も全く同じなのだ。
SNSでよく見られるネットスラングの使用も、名誉毀損や侮辱の判断の上で万能ではない。日常的にインターネットを利用している者にとって理解できるなら、非常に特殊なスラングでもない限り名誉毀損や侮辱、脅迫は成立しうる。私は法曹関係者から何度もそう聞かされてきた。
筆者が名誉毀損を民事で争ったのは、まだ2ちゃんねるがネットのアンダーグラウンドと言われていた頃で、ネットスラング(=2ちゃんねる語)もまだ非日常的なものだった。だが、いまや「日常的にインターネットを利用する者」とは小学生から大人までの大多数の国民を指す。
ゆえに、SNSで普通に見かけるスラングならば「極めて特殊」とは見なされず、名誉毀損や侮辱と認定される可能性は十分にある。
さらに、自分の投稿について「まさか、みんなが見ていて、拡散して問題になるとは思わなかった」との主張も通用しない。ネットは世界に開かれている。つまり不特定多数の人が誰かの投稿を認識する余地のある「公然」の空間なのだ。
また、ネット上での伝播=拡散の可能性が否定できないため、非公開グループや鍵付きのアカウントでの投稿でも「公然性」が認められ、名誉毀損や侮辱が成立する可能性は残る。
他人の投稿や振る舞いに対してネガティヴに反応するのは、義憤やストレス等から「一言物申したい」と思ったとしても、こらえておくのが賢明だ。気に入らないのなら、ただスルーしてしまえば、自分を含め誰にも迷惑や負担をかけないのだ。
心理的負担が甚大な民事訴訟の実際
さて、民事訴訟の実際についてである。まず、ひと月か数か月に一度、平日に裁判所へ赴く時間を確保するのは、訴訟相手のほかに裁判所や弁護士の都合もあるため、思っているより難しい。
いくつも候補日時を出して、やっと決まったと思ったら2か月も先だったということも珍しくない。会社勤めや店舗を運営しているなら、なおさら簡単ではないだろう。裁判の日程が見通せないと、心理的な負担の終わりもまた見えなくなってしまう。
期日に出廷せず弁護士に任せきりでも構わないが、裁判官への心証が悪くなるといった不利を被ることもあると諭され、優先してやりくりしていたことをいまも思い出す。
もうひとつ忘れられないのは、訴訟戦術としての嫌がらせだ。相手は広域組織だったのだが、その構成員が日本各地で同じ事案に対し、細かな言い回しなどの表現を取り上げて、少しずつ異なった趣旨で別の訴訟をいくつも提起してきたのだ。
それらを同一のものとして東京の裁判所で併合審理するかどうか、途中でこの争いが加わり、日程が間延びして裁判が長期化する大きな要因となった。
私の場合、記事執筆という仕事上のトラブルであり、ある意味で「仕方のないこと」と割り切ることで、徐々に落ち着いて対処できるようにはなっていった。
だが、普通の仕事、普通の生活を送る人が、勢いやノリでネットに投稿した件で、訴訟の過程で「違法性のない嫌がらせ」を受けて果たしてどこまで冷静でいられるだろうか。
結局、私は「互いに尊重し配慮しあう」という趣旨の和解に至るまで約3年もかかった。
長年にわたって争えば思った以上に費用がかかってしまう。裁判の過程で多くのペーパーの作成とそのコピーが必要になるし、打ち合わせや出廷の交通費もかかるからだ。
さらに判決で負ければ、賠償金や謝罪広告の負担がのしかかる。一瞬のうかつな投稿によって失うのは時間と金銭、得るのは心理的な負担だけともなりかねない。
これが民事裁判における名誉毀損のリアルである。
リアル社会で面と向かって堂々と言えないなら「やめるべき」
「口がすべる」「筆がすべる」と言う。つい、過激な言い方をしたり、大げさに盛り過ぎたりしてしまうことは誰にでもある。だが、その内容はハンドルネームではなく、本名、実名でも投稿することができるか? 顔の見えないネットではなく、リアル社会で面と向かって堂々と言えることなのか?
もし、できないのなら、それは投稿するべきではない。
ネットは現実の社会と同じく「公然」の場である。公の場でできない立ち振る舞いは、ネットでもしてはいけないのだ。
■ 井上 トシユキ
1964年京都市生まれ、同志社大学卒業。

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