今年4月の改正民法施行に伴い導入される「法定養育費制度」。
離婚時の養育費未払い問題を解消する施策として期待される一方、ひとり親など制度の対象となる当事者への周知不足が課題となっている。

アディーレ法律事務所が「日本シングルマザー支援協会」の協力を得て行った調査では、養育費への関心が高いはずの協会会員でも、法定養育費制度について「(内容まで)知っている」と回答した人はおよそ3人に1人(35.9%)に留まった。さらに、一般層(アディーレ法律事務所に内容問わず相談した人)に至っては、「知っている」と回答した人は4%だったという。
2日、同事務所の近藤姫美弁護士が都内で会見を開き、「法定養育費について、『2万円』という金額のみが独り歩きして、それしかもらえないかのような誤解を生んでいる」として、制度開始に向け正しい情報の周知が必要だと訴えた。

法定養育費制度とは?

「法定養育費制度」とは、離婚時に養育費についての取り決めを行っていない場合でも、同居親(監護親)が別居親に、養育費として「最低月額2万円」を請求できるというもの。
最大のメリットは支払い開始のスピード感だ。
「これまで、両親間で養育費に関する取り決めがない場合、監護親が家庭裁判所に調停か審判を起こすしかありませんでした。
これにはデメリットがあって、申し立てた月から調停の成立、あるいは裁判所による審判が下るまでの間、別居親は支払いをしなくてもお咎(とが)めがなかった。それをわかっていて、あえて調停や審判を延ばす別居親も残念ながらいました。
これに対し法定養育費制度は、調停や審判をしなくとも、とりあえず暫定的に2万円までは差し押さえができるようになる制度です。離婚したくても配偶者の財力がないと生活できないという方にとって、この制度はとても大きな助け船になると思います」(近藤弁護士)
改正民法では、養育費に対し、借金や住宅ローンなどの他の債権より優先され、裁判所の判決等を得なくても直接財産の差し押さえができる「先取特権」が付与された。
これによって、今年4月以降に発生する養育費については、給与からの差し押さえなど強制執行が従来よりも容易になる。

「2万円」は養育費の上限ではない

なお、2万円という金額が大きく報道されているが、法定養育費制度によって養育費の上限が2万円になるわけではない。
法定養育費はあくまで話し合い(協議)や調停を通じて養育費の額が決まるまでの「暫定的」なものだ。
協議や調停審判では、これまで通り、裁判所が公表している算定表をもとに、別居親の収入と監護親の収入、子どもの人数や年齢などを考慮して養育費が決まる。

たとえば、義務者(別居親)が年収600万円、権利者(同居親)が年収400万円で、子ども1人の場合、別居親が支払う1か月の養育費の目安は4~6万円である。
ただし、法定養育費がもらえるからといって、調停・審判の申し立てを先延ばしにすると、同居親に不利益が生じかねない。
なぜなら、養育費の効力は一般的に「調停を申し立てた時」から発生するためだ。離婚から調停を申し立てるまでの期間に、本来受け取れるはずだった差額分を受け取れなくなる可能性がある。
「本来の養育費は、法定養育費の2万円より多くなるケースの方が多いので、やはり離婚と同時に調停を申し立てる方が良いと思います。
先述したとおり、調停・審判が終わるまでの間も暫定的に2万円は受け取ることができますし、調停で決まった養育費が2万円よりも多かった場合、すでに支払われていた2万円との差額分を追加で受け取ることもできますから」(近藤弁護士)

弁護士「制度活用して」

国の調査によれば、「養育費の取り決めをしている」割合は、母子家庭で46.7%、父子家庭で28.3%。「養育費を受けたことがない」割合は、母子家庭で56.9%、父子家庭で85.9%に上る(厚労省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」より)。
養育費の取り決めをしていない理由として、母子世帯では「相手と関わりたくない」が34.5%と最も多く、父子世帯では「自分の収入等で経済的に問題がない」が22.3%、次いで「相手と関わりたくない」が19.8%だった。
近藤弁護士も「元配偶者と関わりたくないという理由で、協議や調停を諦めていた方をたくさん見てきた」と話す。
「実際は、弁護士が間に立てば、元配偶者と直接やりとりする必要はありませんが、協議や調停は『話し合いの場』という思いこみがあり、そもそも養育費を請求していなかったひとり親が非常に多かったです。
法定養育費制度によって、調停も必要なく月2万円はもらえるように簡略化されました。制度を活用して、養育費を得るための第1歩にしていただきたいです」(近藤弁護士)


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