3月2日、外国人および民族的マイノリティの人権を保障し、人種差別を撤廃する法制度の実現に取り組むネットワーク団体「外国人人権法連絡会」が、「外国人への差別を助長し住民を分断する茨城県の『通報報奨金』制度創設撤回を求める声明」を発表した。
同声明は、2月18日に茨城県が「不法」就労の外国人に関する情報を市民から募集し、情報への報奨金も付与する制度を新年度から始めると発表したことを受け、これの撤回を求めるもの。
大井川和彦・茨城県知事にも送付したという。

国連人権機関は「不法」ではなく「非正規」と呼ぶよう要請

「通報報奨金制度」(以下「通報制度」)は、市民からの情報が外国人の摘発につながった場合には報酬金を支払うというもの。金額は1万円として検討されている。また、茨城県は「茨城県不法就労活動の防止に関する条例」の制定も目指すとしている。
これらの施策について、声明では「報奨金という『カネ』までつけ、『密告』に公的なお墨付きを与えるものです」と指摘し、「外国人は社会の一員でなく、何をしてもかまわないと、県が自ら差別を煽る公による排外主義というほかありません」と非難。
「当該制度によって外国人一般は取り締まり、密告の対象として、疑いの眼差しを向けられるようになることは明白です。住民を疑いの目で見る側と見られる側とに分断し、社会の土台である人びとの間の信頼を壊してしまうことを危惧します」(声明から)
声明では、国連が各国政府に対し公式文書で「不法移民」という用語を使用せず「非正規移民」などの語を用いるよう要請していること、また国連人種差別撤廃委員会と移住労働者権利委員会が2025年に発出した「外国人排斥根絶のためのガイドライン」では非正規の状態にある移住労働者に「不法」という用語を使わないよう強く要請していることを指摘し、茨城県の制度名に「不法就労」という言葉が使われていることを批判している。
さらに、不当解雇をされたことや、パワハラ・性的搾取などの問題が起こっている就労環境から逃れたことが原因で非正規滞在となる外国人が多々いることを指摘し、「茨城県が進めようとしている制度は、困窮している非正規滞在者を自治体等の相談支援の場から遠ざけ、逃げ場をなくし、いっそうの苦境に追いやるものです」としている。
また、職員や同級生の保護者による密告を避けるために外国人の親が子どもを学校に通わせなくなることも懸念されることから、通報制度は子どもの学習権を侵害するとも指摘。
さらに大井川知事が「住民の中には、外国人に対するフラストレーションが大きくなっているという事実もある」と述べたことについて言及しつつ、「今回の制度はこのような人たちのストレス解消のために、外国人を『生贄』(いけにえ)に差し出し、小金まで提供する仕組みともいえます」と非難している。

外国人にも「地域住民」としての権利がある

声明では、SNSや動画配信を利用して、収益や悪ふざけを目的にした差別行為がすでに他地域でも多発していることを指摘しつつ、そのような行為を県が自ら招来・煽動することや、経済的に困っている住民同士を差別により分断させることは許されないとしている。
「金目当てに地域住民を密告させるという当該システムは、取り返しがつかないほどの社会の劣化に繋(つな)がってしまいます。
本来、人種差別撤廃条約及びヘイトスピーチ解消法(※)が地方自治体に求めているのは、横行する差別デマに基づく根拠のない外国人に対する偏見を解消し、差別を終了させることです。
逆に差別を助長する茨城県の施策は、これらの条約、法律にも違反するもので到底許されません」(声明から)
※本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律
声明の末尾では、国連の自由権規約(※)は国籍の有無にかかわらず領域内のすべての人の人権保障を締約国に求めている点、また地方自治体とその長は日本国籍や在留資格の有無を問わず地域の人びとを等しく住民として遇することが地方自治法や憲法によって定められている点を指摘。
※市民的及び政治的権利に関する国際規約
加えて、政府・法務省が「非正規在留外国人に提供されてきた行政サービスは、2009年の入管法改定後も受けることができる」との見解を示した点、政府・文科省が「在留資格がない子どもも学習権を保障され、日本国籍の子どもと同じく学校に受け入れられる」との見解を示した点について言及している(いずれの見解も2009年の国会答弁によるもの)。
「このように、この度の制度は、外国籍者を含む住民に奉仕し、人権を守るべきである地方自治体を一種の治安機関化、警察機関化するものです。
以上より、茨城県に対し『通報報奨金』制度創設を直ちに撤回することを強く要請します」(声明から)


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