18日に主要企業の集中回答日を迎える今年の春闘。自動車や鉄鋼など大手企業では、すでに満額回答が相次いでいる。

厚生労働省の調査によると、民間主要企業の賃上げ率は2024年に5.33%、2025年に5.52%と2年連続で5%を上回っており、今年も高水準の賃上げムードが漂う。
一方、公務や医療関係、中小零細企業の労働組合が多く加盟する全国労働組合総連合(全労連)らによる国民春闘共闘委員会が13日、都内で記者会見を開き、第1回集計結果を公表した。集計からは、大手企業とは異なる回答状況が見えてきた。

28年ぶり8000円台のスタートも「極めて不十分」

国民春闘共闘が12日付でまとめた第1回集計によると、321組合から回答が引き出され、1人あたりの平均は月額8106円(改定率2.74%)。前年同期を1078円上回り、1998年以来28年ぶりの8000円台でのスタートとなった。
しかし、会見に臨んだ黒澤幸一事務局長の表情は厳しかった。
「この賃上げ水準は、昨年、一昨年と同様に極めて不十分だ」。黒澤事務局長がそう断じた背景には、四半世紀に及ぶ実質賃金の低下がある。
国民春闘共闘が掲げた要求基準は「月額3万3000円以上(10%以上)」だが、今回の回答額は、その4分の1にも満たない。
黒澤事務局長は「実質賃金が4年連続でマイナスとなるなか、このままの水準で回答が続けば、実質賃金をプラスに転換することはできない」と語気を強めた。

ケア労働者の賃上げ「最も力を入れてきたが…」

今春闘で最も深刻な実態が報告されたのが、医療・介護分野だ。
黒澤事務局長は「26春闘で最も力を入れてきたのがケア労働者の賃金引き上げだが、回答状況は大変厳しい」と述べる。
政府は昨年末の臨時国会で、医療介護支援パッケージとして1兆3649億円の補正予算を計上。診療報酬についても2014年以来12年ぶりとなる本体3.09%のプラス改定を打ち出し、ベースアップとして年3.2%、2年間で6.4%の賃上げを見込んだ説明がなされた。

ところが、第1回集計で明らかになった医療分野の賃上げ額は5481円(1.86%)。社会福祉・介護に至っては4849円(1.89%)にとどまった。製造業の1万2799円(4.13%)や卸売・小売業の1万1362円(3.37%)と比べると、その差は歴然としている。
日本医療労働組合連合会の寺田雄書記次長は、現場の窮状をこう訴えた。
「コロナ禍を経て、ケア労働は賃金が上がらないという認識が世間一般に広がりました。
退職と離職が多く、欠員補充ができず、看護や介護を目指す人も減っていて、病棟閉鎖や事業所の統廃合に追い込まれるケースも出てきています。
そうした状況の中で、診療報酬や介護報酬の改定で、職員の賃上げのための財源も確保されましたが、こうした政府の改定意図が現場に伝わっていない状況が見て取れます」

中小企業、個別でばらつき…非正規は最賃引き上げに及ばず

中小企業をめぐる状況にも格差が広がっている。黒澤事務局長は中小企業の賃上げの必要性が社会的に意識されるようになったことについて、「評価している」としつつも、企業ごとの業績差によって回答が二極化している実態を指摘した。
好業績の企業が1万円超の回答を出す傍らで、業績の厳しい企業は低額にとどまるというばらつきが目立つといい、その要因として黒澤事務局長が挙げたのが、経営側に広がる「賃上げ疲れ」だ。
「24年、25年春闘と続いた賃上げの流れから、経営者側には『賃上げ疲れ』といった言い訳が多く聞かれます。しかし、労働者の労働力を再生産する費用を賃金として支給することは経営者の雇用責任です」
非正規労働者の状況はさらに厳しい。時給制労働者の引き上げ額は平均47.8円(5.13%)で、2025年の最低賃金引き上げ額の平均66円にも届いていない。
生協労連の岩城伸副委員長は「パート労働者が家計の補助的労働ではなくなっていることはもう明らかだ」と述べた上で、「シングルの女性や、低年金で働かざるを得ない60歳超の労働者が増えている」とコメント。
非正規の賃金底上げを重点課題に掲げた。

イラン情勢不安定化で「上積み交渉に懸念」

今春闘の交渉にもう1つの影を落としているのが、イラン情勢の不安定化だ。
原油価格の急騰は、在宅医療や訪問介護でガソリンを使う事業者や運輸業界に直接的な打撃を与えかねない。
黒澤事務局長は「ホルムズ海峡での船舶航行の停止は世界経済を危機に陥れる。今後、上積みを求めていく交渉で、経営側の抵抗が相当強くなるのではないか」と懸念を示した。


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