病院から原告へ和解金として100万円が支払われるほか、動物病院のホームページには今年4月1日より1年間謝罪文が掲載されるという。
バリカン充電の放置が火災の原因だったか
昨年5月6日朝、東京都世田谷区の動物病院で火災が発生。手術のために入院していた原告の愛犬「ミエル」は煙を吸い込み一酸化炭素中毒で死んだ。原告は「ミエルのほかもう1頭の患者犬が死んでいるのも確認した」という。動物は病院内でケージに入れられていたため、逃げられない状態だった。原告らは、同年8月4日、不適切な管理によって犬を飼い主のもとに返す義務を果たさなかったとして、債務不履行(民法415条)を理由とした損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起していた。
病院側はバリカンシェーバーの充電コードの劣化が火事の原因だったと主張していたというが、原告らは弁論準備にバリカンの取扱い説明書を証拠として提出。「病院がバリカンを充電したまま24時間放置するなど、正しい取り扱いを怠ったことが火災の原因になり得た」と主張していた。
ホームページへの「謝罪文」掲載を含む和解条項
原告代理人の渋谷寛(ひろし)弁護士は「和解ではなく判決でも勝てると思っていた」と話したうえで、本件が和解に至った理由を次のように説明した。「判決では、原告が得られる賠償額は和解の場合よりも低かったと考えられる。法律上動物が『物』として扱われるためで、大切にしていた愛犬が死んだとしても慰謝料額は20~30万円が相場だ。それに比べれば、和解によって比較的高額な解決金を得られた。
また、債務不履行に基づく損害賠償請求の場合、判決では謝罪文は得られない。ホームページへの掲載命令義務も発生しない。和解条項にはホームページへの謝罪文の掲載を求め、被告も和解条項に盛り込んだ。
原告の男性も「提訴した際は公判で判決が出ることを望んでいましたが、裁判所からの強い勧めもあり、苦渋の決断ではありますが和解で妥結しました」と話した。
和解条項には
- 被告が原告に対し解決金として100万円を支払うこと
- 今年4月1日より1年間、被告(動物病院)のホームページ上に、謝罪文を掲載すること
- 被告が上記に違反したときは、被告が原告に300万円を支払う義務を負うこと
原告らによると、これまで病院は「火災で患者犬が死んだことを公表せず、原告らに謝罪すらしなかった」という。そのため原告らは、火災によって死んだ犬がいることと、それをこれまで公表しなかったことに対する謝罪文を求めていた。
渋谷弁護士は「そもそも最初から病院側が事実を公表し、誠意ある謝罪をしていれば裁判になることもなかったと思う」と話した。
原告「区切りとして霊前に報告できる」
会見の最後に原告の男性は、亡きミエルへの思いと、和解を経た心境を改めて次のように述べた。「保護犬だったミエルは、5年間にわたって私たち家族を癒してくれました。
和解ではありますが、私個人としては穏やかな気持ちで解決したわけではありません。火災が起きるタイミングで手術入院させてしまったことが悔やまれて仕方がありません。ミエルに対しては忸怩たる思いです。
和解によってミエルが生き返るわけではありませんが、病院側が『火災で命を絶たれた犬がいたこと』を公に示すことで、ようやく一つの区切りとして霊前に報告できます。今回の和解条項の公表が、ペットを可愛がっていらっしゃる皆さんの何かのお役に立てればと思っています」

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