レンタカーFCチェーンの「ニコニコレンタカー」で借り受けた車を返却する際に、飛び石によると思われる小さな傷がついていたことで実費を請求されたとするSNS投稿が話題になっている。
走行中の車のタイヤが小石を跳ね上げ、後続車などに当たる事故被害のことを指す「飛び石」。
通常の事故と比べ気づきにくい飛び石の被害だが、小さな傷であっても利用者の落ち度になるのか。交通事故に多く対応する荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に話を聞いた。

「極小の傷」に8万8000円請求で物議

話題となっているのは、3月17日に一般ユーザーが行った投稿だ。
その内容は、ユーザーの友人がニコニコレンタカーで借りた車を返却した際に、車体の2か所に飛び石による極小の傷があったとして8万8000円を請求されたというもの。友人は保険には入っていたが、「無申告で返却した」ため実費での支払いを求められたという。
投稿に添えられた写真には、指摘された2か所の傷のうちの1つと思われる痕跡が映されていた。指で差し示された先にある傷は数ミリ程度に見えるが、写真だけでは実際にどの程度の大きさ・深さの傷かは判別できなかった。
この投稿に対し、「支払う必要無いでしょ」「これが通ったらレンタカー借りれません」など多くのリプライが集まっている。
一方、ニコニコレンタカーは同日、SNS上で「この度は車両の傷の請求に関する件で、多くの方にご心配をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます。現在FC本部で詳細な状況の確認および調査を進めており、店舗を含む関係各所と連携しながら適切に対応してまいります。」と声明を発表した。
ニコニコレンタカーの貸渡約款には、〈借受人は、借り受けたレンタカーの使用に関し、借受人又は運転者が当社のレンタカーに損害を与えたときは、その損害を賠償するものとします。但し、借受人及び運転者の責めに帰することができない事由による場合を除きます〉(31条 賠償及び営業補償)と示されている。
‟飛び石による極小の傷“は、運転者の責めに帰することができるものなのだろうか。

飛び石は「防ぎようのない災難」だが…

荒川弁護士は、「実務上、飛び石による傷であっても原則として『利用者の責めに帰すべき事由(落ち度)』とみなされ、修理費用等の負担を求められるケースがほとんどです」と話す。
「飛び石は防ぎようのない災難という側面が強く、利用者側に心理的な抵抗があるのは当然のことだと思います」と納得がいかないユーザーらに理解を示したうえで、荒川弁護士は、法的な考えやレンタカー契約の性質において、利用者の責任とされることが多い理由を次のように説明する。
「一般的なレンタカーの約款では、車両の毀損について利用者が『自らの責めに帰すことができない事由』を証明しない限り、責任を免れない仕組みになっています。
利用者は借りている間、車両を善良な管理者の注意をもって管理する義務(善管注意義務)を負っています。傷の原因が特定できない以上、管理下にある間に生じた損害については利用者がリスクを負うという考え方が一般的です。
また、飛び石の場合、『車間距離を十分に空けていたか』『砂利道などリスクの高い場所を走行していなかったか』といった点が問われますが、それらが完全に不可抗力であったと客観的に証明することは極めて困難です」
では、今回のケースのように極小な傷であっても、利用者の落ち度になってしまうのだろうか。
「たとえば、あまりに微細な『走行に伴う通常の使用の範囲内(経年劣化や自然消耗)』と判断される傷であれば請求の対象外となる可能性もありますが、塗装が剥げているような具体的な傷は修理対象とされるのが通例です。
このような不測の事態に備えるためには、レンタカーを借りる際に、追加オプションの保障制度(免責特約など)への加入を検討することになります」(荒川弁護士)
しかし、レンタカーの保険や保障制度を適用するためには、「事故後速やかに警察およびレンタカー会社へ届け出ること」が、絶対条件となっている。たとえ高額な免責補償に入っていたとしても、この手続きを怠ると一切の補償が受けられなくなる。
ニコニコレンタカーの約款でも〈借受人又は運転者は、使用中にレンタカーに係る事故が発生したときは、直ちに運転を中止し、事故の大小にかかわらず法令上の措置をとるとともに、次に定める措置をとるものとします。(後略)〉(28条 事故発生時の措置)と示されている。
「現場で報告せず、返却時に初めて傷が発覚した場合、保険が適用されず、全額実費請求(およびノン・オペレーション・チャージ=NOC※)となる恐れがあります」(荒川弁護士)
※ 事故・盗難・汚損などにより車両が営業できなくなった期間の損害を利用者が負担すること

飛び石に「気づかなかった」場合は?

一方で飛び石は人身事故や物損事故とは異なり、運転者も「事故が起きた」とは感じにくい現象ではないだろうか。小さな石であれば大きな音もせず運転者が気付かないケースもあるだろう。

それでも「たとえ運転中に飛び石に気づかなかったとしても、約款上の報告義務違反を問われ、不利益を被るリスクはある」と荒川弁護士は話す。
約款にある「事故の大小にかかわらず」という文言は、運転者が主観的に気づいたかどうかではなく、客観的に損傷が生じた事実を重視するためだという。
「厳しいと思われる方が多いと思いますが」と前置きしつつ、荒川弁護士は「レンタカー会社は次の利用者に安全な車両を貸し出す義務があります。損傷の把握が遅れることは安全管理上のリスクになるため、約款では厳格な報告義務を課しています」と説明する。
そのうえで、レンタカーの利用者らに対し次のようにアドバイスした。
「『飛び石に気づかなかった』という弁解は、残念ながら金銭的な負担を免れる理由にはなりにくいのが現状です。
走行中に少しでも『石が当たったかな?』と感じる音がした場合は、安全な場所に停車して確認し、傷を見つけたらその場ですぐに店舗へ連絡することが、結果として自己負担を最小限に抑える最善の策となります。
また、借りる際の現車確認では、通常、バンパーなどの『こすり傷』にばかり目が行きがちになります。ボンネット・フロントガラス等に、飛び石による傷がないかもあらかじめ確認しておきましょう。
最後に、返却時にもスタッフの方と一緒に念入りに車体を確認するようにしてください。自分が乗っているときにできた傷を確認でき、その場でいろいろな補償の話し合いもできますし、返した後になって『傷があった』といわれるトラブルを防ぐためにも重要だと思います」


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