「無料だと思ったのに…」求人広告を掲載後、突然の数十万請求 中小企業を“餌食”にする悪質商法、弁護士らが「反訴」で対抗
事業者が「無料だから」と電話勧誘を受けてインターネット求人広告の掲載を申し込んだところ、実際には契約書内に「無料期間後は自動で有料に移行する」という旨が規定されており、掲載を申し込んだ事業者(主に中小企業)が突然数十万円単位の請求を受けるという商法によるトラブル(無料求人広告詐欺)が全国で相次いでいる。
2025年、広告会社がこの商法の被害に遭った中小企業らに対して多数の広告料金請求訴訟を起こした。
これに対し、中小企業側の弁護士が、不当な訴訟提起による損害賠償を求める「反訴」を提起。無料求人広告詐欺商法について注意喚起を行うとともに、逆に、このような商法を取る広告会社の違法性を問う。

無料求人広告詐欺は2019年頃から増加

無料求人広告詐欺は2019年頃から増加しており、同年には鳥取県弁護士会や沖縄県弁護士会、愛知県弁護士会や新潟県弁護士会が会長談話や会長声明を発表。2022年には、日本弁護士連合会(日弁連)と全国の弁護士会が提供する中小企業向けの法律相談サービス「ひまわりほっとダイヤル」のサイト上でも「無料インターネット求人広告トラブルが増えています」との注意喚起が行われた。
さらに公益社団法人「全国求人情報協会」も、2019年以降、「無料掲載を謳い、後で請求を行う求人広告の契約にはご注意ください」との注意喚起を数度にわたって行っている。
2025年、無料求人営業を行っていた広告会社のA社が、全国の中小企業を相手に大量の広告料金請求訴訟(各請求額は約60万円)を起こした。
これらの訴訟の被告となった各社について受任した弁護士らは、以前から結成されていた連絡会を活用し、全国で情報を共有して、連携しながら対応を行っている。
髙良祐之(たから ゆうじ)弁護士(当山(とうやま)法律事務所・沖縄県那覇市)は、2023年に同じ手法を取る別会社の弁護士と訴訟を行い、那覇簡易裁判所で詐欺を理由とする契約取り消しを認めた判決を取った。
上記連絡会のメーリングリストには、800名を超える弁護士が参加しているという。
なお、A社の関連会社2社もほぼ同じ書式を使った同じ手法で無料求人広告の営業を行っており、これら2社に関する事案も髙良弁護士は沖縄で受任しているという。
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髙良祐之(たから ゆうじ)弁護士(本人提供)

「数打てば当たる」で被害に遭う会社が出ることを危惧

髙良弁護士によると、現在、連絡会で把握している訴訟27件のうち、22件が原告であるA社の取下げや放棄、ゼロ和解(※)で終了しており、裁判所は同社の主張をほとんど排斥している。また、和解で終了した4件も、請求額の1~2割の支払いだけで済んでいる。
※当事者間で互いに金銭の支払いを行わない(請求額ゼロ円で終わらせる)内容で、訴訟を和解により終了させること
しかしそれだけでは、A社の請求が認められなかっただけで、同社は経済的損失を被るわけではない。
また、このような訴訟について経験に乏しい中小企業が、突然の請求に驚いて、対策できる知識のある弁護士に依頼せずに請求額をA社に全額支払ってしまったケースが複数ある。
髙良弁護士は、「A社は反訴書面において、(自動有料化条項を)見落とした中小企業が騒いでも後の祭りだ、という記載までしている。今後もA社が『数打てば当たる』という形式で、とりあえず訴訟を起こして中小企業側が支払いに応じることを狙ってくる危険性が高いです」と危惧している。
そして、A社や「無料求人広告」手法を取る類似会社が今後も同様の訴訟を起こすことを防ぐため、髙良弁護士は反訴(不当訴訟の提起、請求する損害賠償は30万円)を起こした。
反訴の審理は現在も続いており、A社の銀行口座の仮差し押さえ決定を別途得ているが、預金は10万円未満しか差し押さえられなかったという。
反訴は、訴訟追行にかかる費用の一部を全国の弁護士らからのクラウドファンディングによる支援を受けて、現在も続けられている。この問題に対する弁護士らの関心は高く、開設後僅か1日で目標金額を達成し、現在も寄付が続いている。
「まじめに活動している中小企業に対して、その見落としを前提につくられた悪質商法が跋扈(ばっこ)するのを許すべきではありません。まして、そうした商法を取るところが堂々と裁判手続を利用して請求を繰り返すなんて言語道断です。
国はハローワークの掲載者がこのような商法で狙い撃ちされている実態を認識し、それを防ぐ積極的な注意喚起をするとともに、わかりにくい求人広告契約、特に自動更新条項のある契約等については消費者事案同様に法律で取消を認めるなど、規制をするべきでしょう」(髙良弁護士)


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