2025年、警察が認知した特殊詐欺およびSNSを利用した詐欺(投資詐欺、ロマンス詐欺等)の被害額、被害件数はともに増加、23年から3年連続での大幅な増加となった。
警察庁の発表によると、被害額は過去最悪だった24年を上回る約3241億円(暫定値での発表)、件数も同様に約4万3000件に達した。

毎回注意喚起がなされるものの、詐欺被害が一向に減らず、増えつづける背景にはAIの悪用と新しい手口の登場がある。(ITジャーナリスト・井上トシユキ)

AIが詐欺の手口の穴を補修し、被害が拡大

AIが用いられているわかりやすい例が、「スミッシング」と呼ばれるSMS(ショートメッセージサービス)を使った、偽のメッセージやメールを送って個人の情報を騙し取る手口だ。
これらは外国人の犯罪者が絡むこともあるが、その場合には少なからず仮名や漢字の選択ミス、助詞や語尾など文法上の誤用が発生する。いわば「日本語の壁」が立ちはだかる形となり、スミッシングが通用しづらかった。
ところが、AIの活用により不自然な日本語の文面が修正され、一見しただけでは偽物と見分けられなくなった。
昨秋、国勢調査に便乗したスミッシングのメールが多発していたが、ほかにも「不在連絡」「マイルやポイントの失効」「税の支払い」を名目に偽サイトへ誘導。個人情報を根こそぎ騙し取るケースが増えている。

急増するニセ警官詐欺の手口

多様化し、ますます巧妙になる特殊詐欺被害。そのなかでも認知件数1万936件、被害額985億4000万円を占め、急増した新しい手口として警戒が呼び掛けられているのが「ニセ警官詐欺」だ。
代表的なやり口は、以下のようなもの。
まず、海外の電話番号からスマートフォンの電話番号へ、自分の口座が犯罪の入金や資金洗浄に使われた疑いがあると連絡がある。そして、オンラインミーティングへと誘導される。
そこでは、警官を名乗る人物から、名刺や身分証を示しながら「口座に犯罪資金が混じっていないか確認するから全額を送金しろ」と指示される。
被害者は、自分が巨大犯罪の関係者と疑われていることにパニックとなり、これ以上疑われまいと指示に従ってしまう、という。

このニセ警官詐欺が巧みなのは、前述のスミッシングで騙し取った連絡先や口座等の情報が利用されることだ。個人情報が正確なため、「怪しい」とは思いつつも、真に受けてしまうケースも珍しくないそうだ。
また、オンラインミーティングではAIによるディープフェイクで加工された人物像が映し出され、犯人の身バレを防ぐ。同時に、素人では出せない「それらしさ」をも演出しているのだという。
そうしたこともあり、ニセ警官詐欺の網にかかってしまうのは中高年にとどまらず全年代におよび、従来の特殊詐欺と異なり、10代や20代の被害者が相当数含まれているのが特徴となっている。

AI浸透の裏をかいた巧妙な手口も

もうひとつ、若年層の詐欺被害では少し変わった手口が話題となっている。
最近、検索サイトを使わずに、なんでもAIで調べ物をする若者が増えている。
そこで、詐欺師らは口コミサイトやQ&Aサイトに手当たり次第に詐欺用の電話番号やメールアドレスを投稿しておく。「数が多い情報は真正なもの」としてAIに信用されやすい、という特性の裏をかくということらしい。
案の定、AIは情報収集のためにそうした投稿を逐一閲覧し、数の多さを判断基準に「真正なもの」として検索結果を依頼したユーザーに伝えてしまう。
詐欺師は、事情を知らぬまま問い合わせてきたAIのユーザーに対し、本物のサイトを閲覧したりしながらそれらしく回答し、まんまとサポート料などを騙し取る。頼りになる相棒として重用する人が増える中、AIの特性を悪用するのだからなんとも狡猾だ。

詐欺被害を回避する最善策とは

こうした詐欺被害に遭わないためには、なによりも詐欺犯と接触しないことが最善といえる。
つまり、詐欺で使われている電話番号やメールアドレスが事前にわかっていれば、それらをブロックし接触機会をつくらないことで、詐欺被害に遭う機会そのものを軽減できる。

各都道府県警、携帯電話会社、インターネットプロパイダ、セキュリティソフト会社などのサイトでも、「不審なメールにあるリンクやファイルをクリックしない」「知らない電話番号は留守電にメッセージを入れるかどうかを確かめてから出る」等、危うきに近寄らない自衛策を勧めている。
とはいえ、不審な電話番号やメールアドレスを逐一登録してブロックするのは手間がかかる。リスト化されたページを検索して探すのも面倒で、電話だとついうっかり出てしまうこともある。

警察庁が協力した詐欺予防アプリの実力

そうした中、最近、警察庁が無料で使えるアプリを公表した。
このアプリは、警察やセキュリティ企業のデータと紐づいており、詐欺犯が使う電話番号やメールアドレスを検知して自動的にブロックしてくれる。
筆者も実際に使用しているが、設定も難しくなく、情報更新も早くて精度はかなりいいと感じる。
新年度をきっかけに新生活をスタートさせる人や、端末を買い替える人も多いタイミングだろう。
その際に、「警察庁・SOS47 特殊詐欺対策ページ」から警察庁推奨の防犯アプリをインストールして、詐欺被害から身を守ることも併せて行っておく。増え続ける特殊詐欺に無策では、被害に遭うリスクが高いことはしっかりと意識しておく必要がある。
「警察庁・SOS47 特殊詐欺対策ページ」には詐欺の手口や防犯に関する詳しい情報が網羅されているので、一読することも勧めておきたい。
〈警察庁推奨アプリ〉
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/apps/
■ 井上 トシユキ
1964年京都市生まれ、同志社大学卒業。会社員を経て1998年より取材執筆活動を開始。
IT、ネットから時事問題まで各種メディアへの出演、寄稿および 論評多数。企業および学術トップへのインタビュー、書評も多く手がける。


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