捜査現場にあった現金約1000万円を持ち去ったとして、大阪府警は3月4日、南堺署刑事課の警部補(52)を占有離脱物横領の疑いで逮捕した。
報道によると、警部補は同月2日、集合住宅の一室で一人暮らしの70代男性が死亡した事案を捜査した際、現場にあった現金を持ち去ったという。
なお、この死亡事案自体には、事件性はなかった。
2025年6月頃、府警監察室に「警部補が現場から現金を盗んでいる」との情報提供があり、府警が調べていたところ、その後に上記の死亡事案が発生したという経緯だ。事情聴取を受けた警部補は関与を認め、警察署内にある警部補の事務机を捜索したところ、約1000万円の現金が発見されたという。
通常、他人の財物を盗む行為は「窃盗」に問われるが、本件の容疑はなぜ窃盗ではないのだろうか。また、警察官という公的な立場にあることや、過去にも同様の行為を繰り返していたおそれがある点が、成立する罪または量刑に影響する可能性はあるのだろうか。

現金が「人の支配下」にあるか否かで罪状が変わる

刑法に詳しい杉山大介弁護士によると、他人の占有(支配)下にある物(財物)を自分の物にする行為は、窃盗罪(刑法235条)や、強盗罪(同236条)などの犯罪に該当する。
一方で、他人の支配から離れている物を自分の物にすると、本件の容疑でもある「占有離脱物横領罪」(同254条)となる。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」。一方で占有離脱物横領罪は「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料」。
窃盗罪のほうが法定刑が重い理由は、「人の支配下にある財産を奪う行為」のほうが、人の財産を脅かす度合いが高く、財産への危険が高くなるためだ。
逆に、占有離脱物横領罪の法定刑が軽い理由は、人の支配下から離れている物については、法律によって保護される必要性が下がるためである。
本件の場合、行為者である警部補が被害品の所有者の死に一切関わっていなかったことから、原則通り、窃盗罪ではなく占有離脱物横領罪が成立することになる。
なお、犯行時に被害品の所有者が死亡していた場合でも、窃盗罪や強盗罪が成立するケースがあるという。

「たとえば人を殺した後に、被害者が持っていた財物を盗む行為については、自身が死の原因を与えたにもかかわらず財物奪取の点を占有離脱物横領罪で軽く罰するのは不合理です。
このような事態を避けるため、『その人を死なせる』という行為と一連一体となって行われた『殺した後から物を取る行為』については、強盗罪なり窃盗罪なりを成立させられるようになっています。
ただし、どこまでを一連一体の行為と評価するかという部分では、グレーゾーンも出てきます」(杉山弁護士)

警察官であることは刑の重さに影響する?

次に、容疑者が警部補であるという点や、過去にも同様の行為を繰り返していた可能性は、量刑にはどのように影響してくるのだろうか。
「まず警察官という公的な立場であることから、『やってはならない』というハードルはより高く想起されると考えられます。
そのハードルを乗り越えて行為をしているという点には、強い犯罪的意識が認められることになります」(杉山弁護士)
また、死因不明の遺体が見つかったときに、事件性があるかどうかを確認するために現場に行くというのは、警察官にしかない「機会」である。その機会を利用して犯行に及んでいる点も、手段の悪質性が高く評価され、刑が重くなる一因となり得る。
「常習性がある場合にも、当然、罪が重くなります。
被害額が約1000万円と高額である点も加味すると、本件は『かなり悪質』という評価にもなってくるでしょう。
一方で、先述したように占有離脱物横領罪の法定刑は軽いため、過去の窃盗などのより重い罪が立件されるか否かが、大きく問題になってくると思います」(杉山弁護士)


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