教職の現場は良くも悪くもルールでがんじがらめな側面がある。生徒に対しては「校則」があるが、公立学校の教員には「地方公務員法」、そして「教育職員免許法」の縛りがある。

教育職員免許法に基づく教員の失職(免許失効)は、主に禁錮(現在は懲役刑とともに廃止され、拘禁刑へと一本化。以下同)以上の刑、懲戒免職処分、法令違反による免許取り上げが該当。免許が失効すると、教員資格を失い、自動的に失職することになる。
わいせつ行為や指導不適切による処分は、代表的な取り上げ対象だ。交通事故も要注意といえる。“聖職”として、品行方正であることが強く求められる、それが教師という職業だ。
だからというわけではないかもしれないが、県庁職員から異動で、県立高校の校長となった川田公長氏は、新任女性教諭への講話を求められ「絶対に不倫はしないでください」とまさかのメッセージを送った。その真意とは…。
※この記事は川田公長氏の書籍『素人校長ばたばた日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋・構成しています。記事内の登場人物は仮名です。

新任教諭の講話を求められて

若葉の緑が鮮やかに映え出すころ、1年生の学年主任が校長室に入ってきた。「じつは新しく採用された先生がいる際は校長に講話をお願いしているのです。今年は徳田先生がいらっしゃるのでお願いできませんか?」
徳田先生は今年採用され、本校に配属された女性教諭である。

「どのような話をすればいいのでしょうか?」
「とくに決まりはありません。校長先生が必要だと思われる内容でお願いします」
なんでもいいと言われると困ってしまう。それに私は教員経験がないので、教育についてエラソーに語ることはできない。どういう話がいいのかよくわからないが、要は徳田先生のためになる話をすればいいのだろうと切り替えた。

教員免許が失効するケース

翌日、私は次のような話をした。
「1つ目は、交通事故を起こさないよう気をつけてください。私も徳田先生も地方公務員です。地方公務員法では一般に禁錮以上の刑に処せられた場合、失職します。ただ条例に定める例外規定(※)に該当すれば、失職しないケースもあります。この点は私のような一般職の職員も、先生のような教員も同じです。
ところで、 先生方は教員免許を持っています。教育職員免許法によると、教員免許を持つ人が禁錮以上の刑を受けた場合、例外規定なしに、教員免許は失効します。この場合、先生は失職することになります。
くれぐれも注意してください」
※各自治体の条例に、たとえば 「公務執行中または通勤途上での過失による交通事故」などが例外とされていれば、失職を免れることもある。
「そうなんですね。気をつけます」徳田教諭は驚いた顔で言った。

教諭が不倫をしてはいけない理由

「2つ目ですが、不倫は絶対にしないでください」
「はあ?」突然の話題に面食らっている。それも当然だろう。
「意外に思うかもしれませんが、学校では不倫が珍しくありません。外部にいた私でさえいくつか不倫の事例を知っています」
人事委員会にいたころ、私は教職員からの苦情相談窓口を担当していた。そこに女性教員から勤務先の校長によるパワハラについての苦情が入った。こうした際には「法的リスク管理」「職場秩序の維持」「再発防止」という観点から慎重な対応が求められる。
私は事実確認のため、その学校まで校長の事情聴取に赴いた。校長は困った顔で打ち明けた。
女性教諭は同僚と不倫しており、男性側を異動させたところ、彼女はメンタルに不調をきたし、たびたび校長にクレームを入れるようになったのだという。
他教員の証言などからも、校長のパワハラ自体が彼女の虚言らしいことが判明した。
「とくに同じ学校内で不倫すると、周囲もなんとなくわかります。不倫しているあいだは楽しくて周囲の視線は気にならないと思いますが、そのときだけです。不倫は最終的に家族や周囲に迷惑をかけるだけでなく、本人がメンタルに不調をきたす原因になることもあります」
半分は冗談だったが、半分は本気だった。
「私は大丈夫ですよぉ」
徳田教諭は笑いながらそう答えた。講話といえるか怪しかったが、これが新任校長として私の一番伝えたかったことだったのだ。


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