事実関係や経緯について、現段階では不明瞭な点が多い。「あおいの給食室」は、法的手続きを取る方針を表明しており、また、相手方とされる企業も、匿名でメディアの取材に応じて「先方様の言い分に食い違いが起こっている」「法的手続きを行っている最中」としている。
本稿では、この件をきっかけに「レシピはどうすれば独占できるのか」を考えてみよう。(本文:友利昴)
「レシピに著作権はない」は正しいか?
一般的に、YouTubeやレシピ本で公開したレシピ――すなわち「特定の料理をつくるための材料のリストや分量、調理の手順」を独占することは難しい。よく、「レシピは著作権では保護できない」と言われるが、その通りである。著作権は「表現」を保護するための法律なのだ。表現とはいえない「作り方」「方法」の保護を考えるうえでは、根本的にかみ合わないと思った方がいい(動画や書籍上の表現なら著作権で保護される)。
「あおいの給食室」自身、問題を告発するウェブページにおいて、「レシピには著作権がございませんので、一切、著作権を主張をするつもりはございません(原文ママ)」と強調している。そもそも、万人受けするメニュー、味付けを目指す以上、それぞれの工夫や試行錯誤はあるにせよ、採用し得るレシピは似たり寄ったりになるのは必然だろう。
実際、料理系ユーチューバーにとって、先発・後発いずれの立場でも「似たレシピがある」という状況に対峙(たいじ)することは日常茶飯事のようで、例えば料理研究家のリュウジ氏は、自身のX(旧ツイッター)において「料理で注目されると『これパクりやん』は1日100件くらい言われます」と発信したことがあり、動画配信でも、こうした指摘をまったく意に介さない様子をたびたび見せている。
料理で注目されると「これパクりやん」は1日100件くらい言われます。対応がガチすぎるのでもう少しヒネたほうがよいです「あおいの給食室」も同様に「『〇〇さんのレシピが似ている』といったご意見もいただくのですが、似ているレシピは無数にありますし、あおいの給食室レシピが似てしまっているレシピもあると思います」(前記ウェブページ)と達観しており、それ自体は「まったく問題ない」「クリエイターとして喜ばしいこと」とまで述べている。
「あなたではなくミスドのパクりです」
の方がスマートです。料理研究家として火加減は気をつけましょう。https://t.co/X4mEp6SDxQ
リュウジ@料理のおじさんバズレシピ (@ore825) February 11, 2025
一部、こうした実情がよく分かっていないアマチュアの料理家などが、似たレシピが紹介されていることに憤慨することもあり、中には裁判沙汰にした例すらあるのだが、敗訴している(※)。
※友利昴『エセ著作権事件簿』(パブリブ)p. 235, p. 452
なぜレシピで特許を取る料理家が少ないのか?
「似たレシピ」というと著作権が取り沙汰されることが多いが、それよりは特許の方がまだ筋はよい。アイデアは著作権では独占できないが、特許権で独占できることがあるからだ。現に、食品メーカーなどの特許にはレシピそのものと言っていいものもある。例えば、ハウス食品がかつて取得していたカレーの特許(※)には「常法通りカット・調製した玉葱、じゃがいも、人参、肉などの具材に、水とスパイス抽出物を加えて加熱し、沸騰後さらに10~20分間弱火で加熱した後、小麦粉ルウとカレーパウダーを加えるか、あるいはカレールウを加え、さらに粘性が出るまで加熱することを特徴とするカレーの調理方法」というものがあり、まさしく“レシピ”である。
※特許第3065480号(現在は失効)
かつて味の素社が取得していたチャーハンの特許をお手本に、特許庁の職員が料理を披露するという特許庁の公式YouTube動画まである。
もっとも、こうした「一般的なレシピ風」の発明が有効な特許になることは今日では稀である。大半は、製法や工程、材料の分量や配合割合などの数値範囲が細かく限定されることでようやく特許になっている。
さらに、レシピが特許になったからといって、そのレシピを紹介することが特許権侵害になるとは限らない。加工食品の製造やレストランでの調理など、特許になったレシピの要素をすべて含む工程を、事業として実施すれば侵害になるが、単にレシピの紹介であれば「全工程の実施」とはいえない場合が多いだろう。
事業性のあるYouTubeチャンネルなどで、レシピの全工程を、特許の通り実演するなら理論上は危うい、というレベルである(ショート動画なら、レシピの工程は省略される可能性が高い)。
今回の「あおいの給食室」の問題では、給食の調理会社がレシピを流用したとされているので、もし特許のあるレシピを用いて調理し食事を提供していたとしたら、特許権侵害の問題になる可能性はある。
しかし現実問題として、特許事務所に依頼して特許権を取得するには、最低ラインでも50万円程度のコストがかかるし、それだけの費用を投下しても有意義な特許が成立するハードルは高い。
大量生産品をつくる食品メーカーや、そのレシピ一筋で営業するつもりの飲食店オーナーであればよいが、たくさんのレシピを次々に開発し、都度改良も加えて公表し続けるタイプの料理家やレシピコンサルタントにとっては、費用対効果が悪い。
未公開のレシピであれば「営業秘密」になる?
以上の通り、ウェブや書籍などで公開されるレシピの独占は難しいのである。もっとも、「あおいの給食室」の基幹事業は、実はレシピ動画の制作・公開ではない。保育園などに向けたレシピ開発・提供であるという。そして、今回同チャンネルが不正だと主張したのは、公開レシピの流用行為ではない。「自社が販売した有料データを何らかの方法で入手し、それを流用された(可能性が高い)」というのである(前記ウェブページ)。対象が非公開レシピであるならば、別の独占アプローチが考えられる。
公に知られていないレシピは、適切に秘匿管理されていれば「営業秘密」となり得る。営業秘密であれば、それを不正な手段により取得したり、あるいは正当経路で入手したとしても、私益のために提供者の競合事業に用いるなど信義則に反する形で流用すれば、不正競争行為として差止請求等の対象になる。
また、営業秘密にあたらないとしても、そのレシピが、限定的な顧客に提供される情報の集合体として多数蓄積されており、適切なアクセス制限がなされていれば「限定提供データ」として一定の保護を受けられる可能性があり、流用はやはり差止請求等の対象になる。
もっとも「営業秘密」や「限定提供データ」は、もともとは顧客情報や技術情報、ビッグデータなどの保護を念頭に置いた制度であり、レシピ情報がそれらにあたるかどうかは、情報の質や管理体制に依存する。
また、レシピ提供を行った取引相手による二次的流用を防ぎたいのであれば、契約によってそれを制限することはできる。この場合、契約に反した流用行為によって、レシピ提供者に損害を与えれば、損害賠償の対象となる。
現実的な落としどころとしては、著作権や特許権などには基本的に頼らず、「公開前提のレシピについては独占できない」と割り切るべきである。その代わり、秘匿すべきレシピについては、できるだけ「営業秘密」といえるレベルの管理を行い、取引先に対しては秘密保持や契約外利用の禁止を義務付ける心がけが大切といえる。
「あおいの給食室」は、200以上のレシピのデータが流用された可能性を指摘しており、穏やかならざる経緯があったことはうかがえる。今後は、あおい氏側の情報管理体制や相手方との契約関係がどのようなものだったのかが、ひとつの争点になるだろう。
■友利昴(ともり・すばる)
作家。企業で知財実務に携わる傍ら、著述・講演活動を行う。ソニーグループ、メルカリなどの多くの企業・業界団体等において知財人材の取材や講演・講師を手掛けており、企業の知財活動に詳しい。『明治・大正のロゴ図鑑』『知財部という仕事』『エセ著作権事件簿』の他、多くの著書がある。1級知的財産管理技能士。

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