元大阪地検トップから性暴力を受けた現職の女性検事、ひかりさん(仮名)が3月31日午後、都内で記者会見を開き、検察組織への第三者委員会設置などを求めた要望書に対する検察の回答を報告した。ひかりさんによれば、大阪地検の次席検事は3月23日の面談で、ひかりさんが国を提訴したことを理由に「訴訟外での訴訟当事者に対する回答は差し控える」と述べ、要望事項への対応を事実上すべて拒否したという。

ひかりさんは「予想もしていなかった。あまりにひどい回答で、正直受け止めきれていない」と語り、「今日の日を1人で迎えていたら、命を落としていたのではないかと思うほどの絶望だった」と声を震わせた。

検事正から約3時間の性的暴行

事件は2018年9月にさかのぼる。当時、大阪地検のトップだった北川健太郎被告(当時は検事正)が、懇親会後に泥酔状態だったひかりさんを官舎に連れ込み、約3時間にわたって性的暴行を加えたとされる。
ひかりさんは、北川被告が「検察組織や職員に迷惑がかかる」と申し向けて口止めを図ったと主張しており、夫にすら被害を打ち明けられないまま、仕事に没頭することで心の傷を抑え込もうとした。しかし心身の不調は深刻化し、2023年末にPTSDと診断され、休職を余儀なくされた。
2024年3月に被害を申告し、同年6月に北川被告は逮捕、7月に起訴された。北川被告は10月の初公判では起訴内容を認めたが、その後は無罪を主張している。
さらにひかりさん側は、北川被告と不貞関係にあった副検事が、逮捕前の内偵捜査中に捜査情報を漏洩し証拠隠滅に及んだと訴える。
ひかりさんによれば、副検事は北川被告の逮捕直後から、被害者がひかりさんであることを示す個人情報や「ハニートラップ説」と称する事実無根の誹謗中傷を検察内部に拡散したとしている。こうした二次加害によりPTSDがさらに悪化し、約2年にわたり休職が続いている状況だ。

「職を賭して」要望も検察は“ゼロ回答”

ひかりさんは3月2日、法務大臣および検事総長宛てに、独立した第三者委員会の設置や加害者との分離措置、主治医との連携などを求める要望書を提出。同日、検事総長らに対する告訴・告発状も提出していた。要望書の回答期限は3月31日とし、要望が実行されなければ辞職もやむを得ないとする内容だった。

3月23日、大阪地検の次席検事がひかりさんと面談した。しかし、ひかりさん側はこの人選自体にも問題があったと主張する。この次席検事は、ひかりさんが3月2日に刑事告発・告訴した被疑者の一人であり、以前から「恐怖の対象」であると伝えていた人物だったためだ。面談の人選自体に配慮がなく、安全配慮義務に反するとひかりさんは訴えている。
面談でまず伝えられたのは、2026年4月以降の人事配置と、3つの対応策だった。公認心理師の週1回常駐、健康管理医の精神科医への変更、管理監督者向けのハラスメント研修の実施である。
しかしひかりさんは、これらを「復職してからのケアにすぎず、復職するために必要な勤務環境の改善ではない」と指摘。要望事項については、次席検事が冒頭で述べた「国賠を提訴されたので回答を差し控える」という一言で、すべて拒否されたとひかりさんは説明している。

「辞表を書こうと思っている」も提出は当面見送り

ひかりさんは会見で、一連の対応を振り返り、「検察が法律を守らない。法をつかさどる組織で、最もあってはならないことが起きている」と語った。
会見には元検事で弁護士の市川寛氏も同席。市川弁護士は「私が検事だった頃は、少なくとも被害者をないがしろにする検察ではなかった」と述べ、「今の検察は被疑者も被害者も職員も守らない。
守っているのは組織だけだ」と指摘。「幹部職員と退官したOBが一枚岩となり、悪しき伝統が受け継がれている」(市川弁護士)と主張した。
ひかりさんは今後について「検察に自浄作用がないことが明らかになった」として、国会議員への働きかけと人事院への勤務環境改善の申し立てを進めていく方針を示した。
進退については「辞表を書こうと思っている」としつつも、人事院への申し立てが現職職員のみを対象としていることから、辞職をすれば手続きが止まるため、提出は当面見送る考えを示した。
ひかりさんは会見の中で、自身の原点をこう語っている。
「私は検事の仕事が大好きです。検事は格好いいんですよ。被害者と一緒に泣いて、一緒に戦って。検事の仕事にとても誇りを持っていました」
その上で「被害者とともに回復につながる仕事がしたいと思って検事になった。検事としてやるのか、検事を辞めてやるのか、議員の動きも見ながら進退を決めたい」と述べた。


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