社会保険の「扶養」の認定条件には130万円という「年収の壁」があることが多くの人を悩ませてきた。
4月1日からこの認定基準が緩和され、130万円という金額はそのままであるが、予期せぬタイミングで壁を越えて扶養認定が外れる事態を防ぎやすくなった。

「契約書に記載された金額」が基準に

従来、原則として、23歳以上の人の年収が130万円を超えると、直ちに家族の社会保険の扶養から外れ、国民健康保険などへの加入義務が発生するしくみになっていた(※)。この「年収の壁」のため、アルバイトやパートタイムで働く人は収入を調整する必要があり、いわゆる「働き控え」を引き起こす原因になっていることが問題視されてきた。
※19歳以上23歳未満の場合は150万円
さらに、これまでは被扶養者認定における収入は「過去の実績収入や将来見込み」に基づき総合的に判断されていたが、この基準には曖昧さがあることから、130万円に近い収入を得ている労働者は「いつ扶養認定から外されるかわからない」という不安を抱えてきた。
たとえば、収入が130万円を少しでも超えて扶養が外れることを避けるため、バイト・パートのシフトを入れるのを控えたり残業を断ったりするケースが起こっていたのだ。
上記のような事態を改善するため、2025年10月に厚労省が発出した通達が、4月1日から運用されている。
今後は「雇用契約書や労働条件通知書に記載された賃金・労働時間等」から算出される見込み額が基準となる。これにより、原則として、残業などで実年収が130万円を超過しても、雇用契約書や労働条件通知書に記載された賃金総額が130万円未満であれば、被扶養者の状態が維持されることになった。
厚生労働省は、今回の改正目的を「被扶養者認定の予見可能性を向上させ、安定運用を図るため」と説明している。
扶養認定の年収計算では、労働契約書記載の賃金総額(基本給・各種手当を含む)が基礎となるが、通勤手当や家族手当などは収入に含まれず、計算対象外となる。
ただし、超過勤務手当や深夜手当等は契約上あらかじめ見込まれている分として含まれるほか、ボーナス相当分や見なし残業分が明記されている場合にはその額も反映される。
一方、想定外の残業増加などで実年収が基準額を超過した場合でも、「社会通念上やむを得ない一時的超過」の範囲内であれば、扶養認定の即時取り消しには至らない。
具体的な線引きは明示されていないが、各保険者(協会けんぽ・健康保険組合)の裁量で柔軟に運用される見込みだ。



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