NPO法人日本アトピー協会や全国保険医団体連合会(保団連)など6団体は4月10日、政府が検討しているOTC類似薬への「特別料金」導入の白紙撤回を求める要望書を、厚生労働省に提出した。約8100人を対象としたオンラインアンケートでは94.7%が反対と回答。
「特別料金を避けるために受診を控える」などの声が多数寄せられている。
要望書の提出後、6団体が都内で会見。負担増への批判や懸念が相次いで訴えられたほか、法案の射程がOTC類似薬にとどまらず、保険医療全体の給付を制限しうる構造になっているとの指摘も飛び出した。

政府、新制度導入で年間約400円の社会保険料引き下げ見込む

「OTC類似薬」とは、市販薬と同じ、あるいは類似した成分を含む処方薬のことだ。花粉症の抗アレルギー薬アレグラや、アトピー性皮膚炎の保湿剤やステロイド外用薬、解熱鎮痛剤のロキソニン、帯状疱疹治療薬のアシクロビル、インフルエンザ治療薬のタミフルなど、77成分が対象候補とされている。
会見に出席した中村洋一医師は「ロキソニンも最初は医師しか処方できなかったが、市販されるようになった結果、あたかも薬局に先にあって、医師がそれを使っているかのような名前が付けられている」と、「類似薬」という呼称自体への疑問を呈した。
政府の改正案は、これらの薬剤について費用の一部を保険給付の対象外とし、患者に「特別料金」として追加負担を求める「一部保険外療養」を新たに創設するもの。政府の試算では、導入により社会保険料が年間約400円(月約33円)引き下げられるとしている。

回答者の78%がOTC類似薬の処方経験あり

6団体が3月9日から31日まで実施したオンラインアンケート(有効回答数8098人)では、回答者の43.8%が「現在OTC類似薬を処方されている」、34.2%が「過去に処方されたことがある」と答えた。
罹患疾患の上位は花粉症(436件)、アトピー性皮膚炎(269件)、アレルギー性鼻炎(120件)、高血圧(111件)で、回答者の7割が20代から50代の現役世代だった。
保険料の月33円減額に対し、慢性疾患で日常的に薬を必要とする患者にとっては月数千円~数万円規模の負担増となりうる。アンケートに寄せられたコメントは切実だ。
40代のアトピー患者は「私の薬代を捻出するために、家族の食費を削るしかなくなります」とコメント。
30代のアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎患者は「重度の花粉症の上、ダニやハウスダストなど季節を問わず反応するアレルゲンがあります。
また、慢性的なアトピー性皮膚炎持ちです。薬でなんとか人並みの生活が送れているので、ほんのわずかな負担が減る代わりに薬代が高くなると死活問題です」と窮状を綴っている。
保団連の本並省吾事務局次長は記者からの取材に対し、次のように述べた。
「政府与党は現役世代の負担軽減になると説明していますが、実際にはシーズンが限られる花粉症だけをみても、年間たった数百円の軽減で薬代が高くなるとなれば“コスパの悪いあべこべな政策”と言わざるをえません。
保険料を納めていて、何か落ち度があって病気になるわけでもないのに、薬代が高くなるという制度ですから、反対の声が多く集まるのは当然の流れではないでしょうか」

法案の射程は「薬剤」にとどまらない可能性も

記者会見の終盤、議論は法案そのものの構造的な問題へと移った。
保団連の松山洋氏は、厚労省との非公開の懇談で得た回答を踏まえ、「さまざまな給付除外の対象になり得る」との認識を示した。
健康保険法63条1項は、療養の給付として「診察」「薬剤又は治療材料の支給」「処置、手術その他の治療」「居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護」「病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護」を列挙している。
一方、改正案では、厚生労働大臣が定める療養について費用の「一部」を保険給付外とする規定が新設されるが、条文上、対象を薬剤のみに限定する文言はない。
松山氏は会見で、厚労省側からはあくまでも法律の建付け上そのような条文になっているだけで、実際に検討しているわけではないとの説明があったとしつつ、「これまで議論されてきたものと違うのではないか」と語気を強めた。
「仮に、OTC類似薬の追加負担にとどまらず、薬剤以外のものも含めて、保険除外の範囲に含める話になると、まったくの寝耳に水です」
OTC類似薬の追加負担制度導入を含む、健康保険法等の一部を改正する法律案は9日、衆院本会議で審議入りした。改正案には妊婦健診に伴う妊婦の経済的負担の軽減や、後期高齢者医療制度における金融所得の公平な反映などが盛り込まれている。


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