船に打ちよせる大波。そして天を引き裂くような稲妻。
実はこの映像、今年公開予定の映画です。形式は3本立てのオムニバス。しかし人間が作ったのは脚本だけ。
この映像に音声、さらに音楽も、全て「生成AI」が創作したものです。
山口ヒロキ監督、進化を続ける『AI』の利用は、商業映画の製作も劇的に変えていくといいます。
(山口ヒロキ監督)「技術面や予算面で諦めていた表現が、可能になったのが一番のメリット。今までできなかった表現がたくさんできるようになった」


例えばこの球体が街中を破壊するシーン。これまではCGを使っても数百枚も画像が必要で、膨大な手間と費用がかかりましたが…


(山口ヒロキ監督)「(予算の)5分の1とか10分の1に収まっている」
AIを使う場合、必要なのはプロンプトという命令内容を細かく入れるだけ。あとは勝手にAIが作ってくれるため、時間と人件費の削減につながるといいます。
最初と最後2枚の画で動き出すキャラクター
そして、AIを使ったアニメや動画づくりで注目を集める会社が、名古屋市昭和区にあるデザイン会社「K&Kデザイン」。従業員6人、AIを活用した作品作りが売りです。

(K&Kデザイン 川上博 取締役)「今まで一人でできなかった作業をAIをアシストツールとして使うことで、少人数でアニメーションが作れる点が最大のメリット」
最初に手掛けるのはキャラクターの制作。ここはAIに頼らず人が描きます。
(川上博取締役)「(画面の)右側から左側の方に、近づきながら移動する動きを作ります。最初と位置と最後の位置2枚の画を作って、AIが歩いているシーンを自動的に作成する」



これまでは5秒で手書き原画60枚が必要でしたが、たった2枚で完成です。
(川上博取締役)「(キャラクターの)口が開いた状態になるところも、AIが考えて動きをつけてくれる」
背景づくりも“入力するだけ” わずか9秒で!
背景づくりも手書きではなく、イメージを言語で入力するだけ。

AIに「光沢のある木製のバーカウンター」、「ビール缶が一本」など作品のイメージを入力するだけで…
わずか9秒で!
(川上博取締役)「これで完成です」

4枚の背景が作られ、モニターに表示されます。さらに今のAIは…
(川上博取締役)「テーブルの上にあるビール缶を、日本酒の瓶に変えます。まずはビール瓶を消して、ここでボタンを押すと…」
使用したのは、画像生成が得意な『ミッドジャーニー』というAI。


(ディレクター)「あ、一升瓶に変わってますね!!えぇ!」
AIを導入して作業効率が劇的に変化したといいますが…
(川上博取締役)「デザイン・キャラクターなど重要なところは、人間が手を加えた方が良いものが素早く作れる」
それでも「手書き」の技術を学ぶ若者たち
AIが制作現場にどんどん入ってくる中、日本アニメのクオリティを支えてきた手書きの技術はやはり欠かせないと学んでいる若者もいます。
名古屋市中区にある専門学校、名古屋デザイナー・アカデミー。アニメーション制作の学科があります。

(名古屋デザイナー・アカデミー アニメーション学科 増田由希 講師)
「手書きの良さは書き手が思ったように画を演技させたり、緻密に描いたりするところだと思います」

一枚一枚背景やキャラクターを手書きする昔ながらのアニメや、パソコンを使った色付けなど、プロと同じ環境で実践的に学んでいます。
たとえば拳を繰り出すこのシーン。0.75秒の短い動きですが、アニメーションにした場合、7枚の原画で作ります。
(増田由希講師)「腕を伸ばしたら反動で少し戻る部分を書かないと、動きが収まらないので、一枚一枚の画に意味がある事を教えています」


今後の日本アニメを支えていく技術
こうして作った学生の共同作品がこちら。


いまはアニメの制作会社への就職率97%を誇り、中には企業から依頼を受け、在学中から作品制作に携わる人もいます。
Q:手書きの魅力は?
(学生)
「全て自分の手書きで描くので、伝えたい事とか感情が100%表現できる」
「鉛筆で描いて消しゴムで消す事が、自分で描いていると実感できる点です」

日本アニメへの評価がさらに上がり、海外配信も含めて作品数が格段に増えているいま、AIの助けは人手不足を補うものですが、さらに進化すればどうなるのか。
絵画も音楽も映像作品も脚本ですら作れるようになってきたAIの予想を超える進化は、クリエイティブという人だけのものと思われてきた分野に入り込んでいます。



















